珍しく、外を歩いていた。
特に目的なんてものは、なくて・・・長い散歩みたいな感じだ。
この頃、引きこもりがちになってきた・・・と、いうのは薄々、気付いていたので、ユリウスに許可を貰ってから、外に出た。
もちろん、ユリウスは塔の中にいる、誘ったのだが・・・重要な仕事が入っているとのこと。
「・・・嘘っぽかったけどね」
その時、目をそらしていたから、なんとなくわかる・・・そういえば、立て続けで外での仕事が入っていたから、うんざりしていたのかもしれない。
なら、強制なんてしても可哀相なだけだ。
それで、一人でのんびりと行き先も、決めずに歩いていたのだが・・・
「迷子・・・だ」
空を見上げたり、下を向きながらと・・・道を確認してなかったせいで、森の中を歩くことになってしまった。
今はまだ、昼だからいい・・・しかし、夜になる前には帰りたい。
特に、ユリウスと帰る時間帯の約束はしていないが・・・心配は出来るだけ、かけたくはない。
「・・・あー、もう。 家でも、何でも・・・なんか、無いかな」
一度、立ち止まり・・・周りを見回す。
「ん・・・赤い」
ピタッと、体を止め・・・赤いものの正体を、考える。
「屋根だ・・・行ってみよ・・・」
家がある、急いでエフェルはその家に近付いた。
「・・・・・・わぁ」
何とも、可愛らしい家だ・・・いや、OPENという文字を見れば、何かの店なのかもしれない。
しかし・・・どうして、こんな森に? という疑問もあったが、考えていたら時間帯が変わってしまうと思い、その店に入ることにした。
「いらっしゃい、」
一応、恐る恐る入ってみるが・・・何とも、笑顔が素敵なおばあさんがいた。
急に声をかけられ、びくっとするが、その人柄の良さそうなおばあさんで、安心する。
「あの・・・道を―――・・・わぁ!?」
つい、大きな声が出てしまう・・・本当に無意識にだ。
目の前に見えるのは、店のイメージを一緒で可愛らしい小物ばかりだ、それにも反応するが・・・それよりも、コーヒー豆の種類の多さにもびっくりした。
「お嬢ちゃん、コーヒーが好きなのかい?」
「うん、好きだけど・・・それ以上に好きな人がいるの! 凄い、こんな多くの種類、始めて見た!」
つい、うきうきしてしまう・・・たまに、街に出てコーヒー豆とかなど、買いにいくがこんなに、多い種類は始めてみた。
「そうかい、私は趣味でやっていてねー・・・珍しい種類のものも、あるんだよ」
「うんうん! 初めて見たものがいっぱい! 紅茶の種類もいっぱいだぁ!」
きょろきょろと、色んなものを発見しながら、周りを見渡せば・・・おばあさんは、ニコニコと笑っていた。
エースと違って、なんだか安心できる。
「あの! コーヒー豆、買っていってもいいですか!」
「・・・今日は紅茶を買っていったほうが、いいと思うわ」
おばあさんは、急に何かを考えるように紅茶を差し出した。
「? なんで?」
「ともかく紅茶を持っていきなさい・・・久しぶりのお客様だからね、タダでいいわ」
そういうと、おばあさんは紅茶を包みだした。
私は、コーヒー豆が・・・欲しいだけどなー。
それを察したのか、おばあさんは二コリと微笑んだ。
「また、来たいと思ったら森に迷いなさい・・・きっと、見つけられるから」
「・・・でも、ここに来られるかなんて、わからないよ。 たまたま、道を聞こうとして・・・あ、そうだ。道!」
つい、珍しいものに気を取られ、本来の目的を忘れていた。
「道に、迷ったのね・・・大丈夫、この店からまっすぐに歩けば、森を出れるわ。」
おばあさんは、紅茶をエフェルに渡しながら、指で方向を指した。
「ありがとう! でも、お金・・・」
「いいの、そのかわり・・・また来て頂戴ね、年老いた女のお願いよ」
ほほっと、おばあさんは笑う・・・つられて、エフェルも笑顔になる。
なぜかは、わからないけど・・・きっとまた、来れる気がした。
一度、お辞儀をしてから、言われたとおりの方向を、歩いた。
END