どうして、夜になる前に帰らなかったのだろう・・・。



「・・・うぅ」



あっちでこっちで、銃声の音が鳴り響く。

咄嗟に、物陰に隠れたものの・・・巻き込まれる可能性も十分あるせいで、出るに出られない。



「はぁ・・・」



溜息しかでない、先ほど物陰から顔を出せば・・・流れ弾が飛んでくる始末。

護身用に、一応・・・銃は持ってきているが、撃ち方がわからないんじゃ、意味が無い。


仕方が無い、体勢を低くしながら・・・進もう。


ゆっくり、ゆっくり・・・人が目の前に飛んできても、焦ら・・・ず?



「!!」

「ちっ・・・くそ!」



血だらけだ・・・目の前に、血だらけで・・・ウサギ耳を生やした男がいる。

ブツブツと、文句を言いながら立ち上がる。



そのまま、気付かないで・・・行ってください。



「・・・・・・」

「・・・・・・」



そう、上手くはいかなかった・・・男は、すっとこちらを向いてきたのだ。

何とも、冷たい目で。


そして、エフェルを見るなり銃を、向けてくる。



「・・・・・・」



ああ、死んだかな・・・?

理解はできているが・・・どうにも、実感が湧かない。

目を瞑り、その時を待つのもいいかもしれない・・・。


――――・・・ポトッ。


沈黙の中に、液体が落ちる音。

さほどしない内に、今度は金属の音が響いた。


身体に痛みは無い・・・。


じゃあ、何の音?



「っ・・・」

「え!? ちょ、」



目を開ければ男が座り込んでいた・・・全身が血だらけで気付かなかったが、

どうやら肩を怪我しているようだ。

金属の音は、男が銃を床に落とした音だったのだ。


ある意味では、助かった・・・のかな?


・・・このまま見捨てるべきなのだろうか? 確かに、殺されかけそうになったが、目の前の彼は、本当に苦しそうだ。


「・・・よし」



決心したように、エフェルは自分が着ていた服を、破いた。
何本か布が出来た所でゆっくりと、彼に近付く。



「動くん、じゃ・・・ねぇ!」



殺されるとでも、思っているのか・・・男は、精一杯にエフェルを睨みつける。

それでも、エフェルは歩みをやめなかった。



「それは、こっちの台詞・・・動かないで」



隣に座り、動けないことをいい事に、エフェルは傷の具合を見てから・・・一言、断りを入れ、一気に布で縛り上げた。

男の顔が歪む、エフェルはその間に、男の怪我していないほうの腕を、自分の肩に回す。



「ともかく、此処から離れよう・・・」

「は、離しやがれ!」

「もう少し、安全なとこに行ってから、文句言って」



体格差は、随分あるのにエフェルは動じることなく、歩き出す。


―――・・・私、こんなに力あったんだ。


新たな発見だなー、と思いながらも・・・背の差もあるせいか、引っ張る形になりながらも少し、進んだ物陰に、男を座らした。

「・・・ふぅ。 」



何度か、辺りを見回してからエフェルも一息、つく。

なんとも、隣から視線が痛いくらい来る。

ちらりと、彼の方を見る。


絶対、睨んでいる・・・と思ったが、珍しそうなものを見たような顔をしている。



「変な人・・・」

「・・・それは、あんただろ」



今度は、呆れたように男はエフェルを見て、溜息をついた。



「? 何で」

「普通、殺されそうになった人間が、する行動じゃねぇよ・・・」



すっと、男は視線を動かした・・・エフェルも、その視線の先を追う。

視線の先は先ほど、手当てしたところだった。



「痛そうだったから・・・かな」

「それだけ、か?」

「うん、そうだ・・・よ。 ―――・・・?」



エフェルは、言葉の途中でピクッと・・・後ろを振り向いた。

男も、異変に気付いたのか、また顔を険しくさせた。



「・・・六、かな」

「ああ」



すぐに、男は立ち上がろうとするが・・・エフェルの腕が、それを静止させた。



「お願いがある」

「・・・んだよ」

「銃の使い方を教えて欲しい」



あまりに、今言うことではない・・・しかし、そんなことをいってる場合でもないのだ。

男は、じっと真っ直ぐに此方を見てくる。


さほどしない内に、男は口を開いた。



「・・・一度しか言わねぇからな、」

「ありがとう」



男はすぐさま、説明を始めた。

簡単な説明だが、わかりやすくて助かる。





敵が来るまで、後少し。





END