今さらだけど、私みたいな奴がこんな豪邸に、きていいのだろうか?


つい、家のまえで固まっていると、先に進んでいた・・・真弘先輩が、不思議そうに見て来る。


「どうしたんだよ?」

「え、はい・・・その私みたいな奴がこんなところに入っても、よろしいのでしょうか?」

「何言ってんだよ? そんなの当り前だろ、ほら早くこいよ」


腕を引っ張られ、中に入る。


「おーい! 美鶴、いるか!?」


真弘先輩が、誰かを呼ぶ・・・すぐに、パタパタと足音が近付いてくる。


「はい、ここにいますよ」


綺麗な和装をした女の子が出てくる、真弘先輩に笑顔を向けてこちらをじっと見て来る。

私は、小さくお辞儀をする。


「おう、ババ様に会えるか?」

「・・・申し訳ありませんが、ババ様はあまりご調子がすぐれなく、寝に入っております。」

「そうか・・・さて、どうすっか」


どうやら、そのババさまと呼ばれる人とは、会えないみたいだ。

真弘先輩は、困った表情でこちらを見て来る。


「いや、あえないのなら・・・私が、また今度、お伺いします。」

「貴方様は、どうしてここに?」


外に出ようと思うが、女の子に止められる。


「えーと、拓磨さんと真弘先輩に呼ばれたんですよ・・・はい」

「そうですか、では・・・鬼崎さんが戻られるまで、どうぞお上がりください」

「え、いや・・・」

「そうだな! 一人で、帰らせるわけにもいかねぇしな!」


引っ張られ、無理矢理・・・中に入れられる。


「いや、ちょっと・・・先輩!?」

「美鶴、今日の飯はなんだ?」

「お鍋でございます、皆さん・・・来られるそうですから」


人の言葉を無視して、二人は歩く。

諦めて、私は一つの部屋に通された。


「おや、貴方が・・・?」

「いえ、このお方は鬼崎さんと鴉鳥さんのお客様だそうです」

「ああ、そうでしたか。」


居間らしき場所に、入ると髪の長い、優しそうな人がいた。


「初めまして、私は大蛇 卓といいます。よろしく、お願いします」

「は、はい! 私は、高夜 悠といいます、よろしくお願いします」


その人は、すぐに近付いてきて握手を交わしてくる。


「(温かい・・・)」


つい、あまり人と触れないからか、その温かさを実感してしまう。


「・・・いつまで、握手してんだよ?」


真弘先輩が、急に間に入ってきてその手を放した。

流石に、私も長く握手しすぎだと思い、少々焦る。


「す、すみません!」

「いえいえ、私こそ長く握手しすぎてしまったかも、しれませんね」


やっぱり、見た目通り・・・とても優しいひとなのだと思う。

そんな風に思っていると。


「悠・・・?」


・・・急に名前を呼ばれる。

真弘先輩のものでもなく、大蛇さんのものでも、無い。


でも、聞いたことがあると思い・・・声がしたほうをみて見る。


「あれ! 弧邑先輩!?」


戸を開けたまま、こちらをみて少し、弧邑先輩が目を見開いている。


「どうして、ここに?」

「え・・・と、それは真弘先輩と・・・―――」

「こいつ、霊力が強いんだよ・・・カミが見えるってらしいから―――」

「ババ様に、カミに害がないか、聞きに来たということですか?」


最終的に、大蛇さんがまとめるが、多分・・・間違ってはいないと思う。


「そうなんだけどよ・・・ババ様が、調子良くないって話しだし、」

「・・・ですが、あまりカミに害があるほどの霊力とも、思いませんが・・・?」

「そこなんだよな 俺らも、害は大して無いと思ったんだ」

「ですが、カミが見えるとなれば・・・はっきりとなんですか、それとも―――」


真弘先輩と、大蛇さんが話し合いを始めてしまう。

はっきり、いうと・・・話についていけない、もうボーっとその様子をみているしかなかった。

だが、腕を引っ張られる。


えっと、思ってその相手を見ると・・・弧邑先輩が私の手を引っ張っていた。

どこに、連れて行かれるのかと・・・一瞬、思ったが戸を開けてすぐの、庭に出るだけだった。


「え・・・えと、弧邑先輩。どうかしたんですか?」

「あの場だと、騒がしいと思ってな 一つ、聞いてもいいか?」

「え、はい。」


どんなことを、聞かれるんだろうと思い、身を固くする。

少し、考えてから・・・弧邑先輩が口を開く。


「・・・会ったことはないか?」

「え・・・?」


私はすぐに、弧邑先輩のことを記憶の中から探した。

だが、見当たりそうにない。


「いえ・・・会ったことは、ないと ッ!」


答えたと同時に、頭に痛みが走る。

しかし、それは一瞬ですぐになくなる・・・心配そうに、弧邑先輩がこちらをみてくる。


「あ、すみません・・・会ったことはないと思いますよ?」

「・・・そうか」


弧邑先輩が、何だか悲しそうに目を伏せた。


「で、でも! 私、あの・・・記憶が曖昧ですから!? もしかしたら、会ったことがあるかもしれません!だから―――」


そんな様子の先輩をみていられなくて、急いで何か良い言葉を捜して言う。


「ありがとう」


小さく、先ほどとは違い小さく笑ってくれた。

焦る私に、笑ったのかもしれないが・・・機嫌がよくなってくれたので、あまり気にしないことにした。

しかし、それから沈黙が続き・・・何か、喋らなきゃと思い・・・言葉も見つからないまま、声を掛ける。


「あの、弧邑先輩! えと・・・―――」

「祐一」

「え?」


急に名前を言われて、わからず聞き返してしまう。


「真弘も、名前だから 俺も名前で構わない」

「あ、はい・・・えと、祐一先輩?」

「なんだ?」

「あ、いや・・・その呼んでみただけと、いうか。そのこれで あの」


祐一先輩の前になると、なんでこんなに、言葉を上手く言えなくなるのか、泣きたくなる。

元々、喋るのが上手くないが・・・祐一先輩の前だと、かなり喋れてない気がする。


そんな自分に、気がついたのか・・・ゆっくり、近付いて祐一先輩は頭をゆっくり撫でてくれる。


「え!?・・・///」

祐一先輩は、何も言わずにただ・・・私の頭を撫でる。

どうして、いいか。わからない私は、そこにじっとしてしまう。

でも、なんでか嫌とは思わない・・・むしろ、とても気持ちがいい。


「・・・何やってんだ、お前ら?」


急に戸が、開いたと思うと・・・一瞬で真弘先輩が、隣にきて私の身体を引っ張る。

必然的に、もちろん祐一先輩の撫でるのも、終ってしまう。

少し、名残惜しいと思った自分に、何を考えているんだと首を、小さく振る。


「拓磨のヤローが、戻ってきたんだよ! ほら、顔を赤らめてないで、いくぞ!」

「な! あ、赤らめてなんて・・・」

「思いっっきり! 赤らめてるぞ?」
「へ!?」


すぐに、自分の頬に手をやる。

ちょっと、温かい。


「いや! これは、そう! 外が寒いからであって・・・!」


言い訳も、聞かず中に入れられる・・・祐一先輩は、とくに何も言わず、私たちのあとについてくる。


中に入ると、拓磨くんと春日ちゃんがまっていた




END