「―――・・・?」


弁当のお稲りを食べようとした時・・・屋上の扉が開いた。

白い短髪で・・・身長は高い。


こちらを見て来る・・・顔立ちも整っている、でもなぜか初めて会った気がしなかった。

どこで、あったかな?と考えていると鴉鳥先輩が、やきそばパンを食べながら、その人に話し掛ける。


「お、祐一 遅かったじゃねぇか」


白い髪の人は・・・祐一、というらしい。

記憶を巡るが、そんな名前の人は見当たらない。

気のせいかな?と思いながら、今度こそお稲りにありつこうと思い、口を開ける。


のだが―――


「えっと・・・何か?」


白い髪の彼は、じっとなぜかこちらを見続ける。

気になって、声をかけてみる。


「多分、今・・・食べようとしているのが、原因だな」


応えたのは、白い髪の人ではなく・・・さっきから、クロスワードをやっていた鬼崎くんだった。

私は、今持っている、お稲りを食べるのを止めて、少し考えてから弁当箱をその人に差し出す。


「あんまり、美味しいとはいえないかも・・・しれませんが、食べたいのならどうぞ」


初対面の人に、何を言っているんだと薄々、思いながらその人の様子を見る。

一度、私から目を離し、弁当箱を見てから、もう一度私を、見る。


「・・・頂こう」


一度、考えてから弁当のお稲りに手を差し伸べる。

少し、お弁当箱が軽くなった気がする。


「・・・・・・」


その人は、何も言わずにお稲りを食べる。

顔の変化が無い為、一瞬・・・まずいのだろうか?と少し、戸惑いが生まれる。


「・・・作ったのか?」

「え、はい その不味いなら、不味いとはっきりいってくれる方が嬉しいです。」

「いや・・・美味しい」


ふわりと、微笑むその人・・・なぜか、見惚れてしまう。


「あ・・・いや、あの・・・///そう言って頂けると嬉しいです


人に誉められるなんて、滅多にないから照れてしまう。

すぐに、私は恥ずかしさを隠すために、卵焼きを食べようとするが・・・横から、手が伸びてそれをつかむ。


「ああ!」

「・・・確かに、うめぇ」


私の声も、虚しく・・・卵焼きは鴉鳥先輩のお腹の中に、消えていった。


「・・・あ、あ。自信作が・・・」


今日は、味付けもうまくいったと思い、かなり楽しみにしていたのに。

と、いうより・・・さっき会ったばかりなのに、なんでこんなに馴れ馴れしいのだと、ふと思う。


「真弘先輩・・・、かなりショック受けてるみたいっすよ」

「うおっ・・・あー、あれだ。あー、悪い」


鬼崎くんが、クロスワードを止めてこちらに近付き、私が言いたかったことを言ってくれて、鴉鳥先輩も小さくだが、謝ってくれる。


「い、いえ・・・美味しいと言っていただけただけでも、嬉しかったので・・・―――」


そこまで、言って・・・ふと鬼崎くんの視線が、私のお弁当をみてるのに、気付く。

私は、気付かれないように溜息を吐いてから・・・お弁当を鬼崎くんに、差し出す。


「美味しいものとは、いえないかもしれませんが・・・どうぞ」

「! ・・・いいのか?」

「うん、どうぞ」


あまり、戸惑いもせず言うところを見れば・・・多分、さっきから気になってはいたけど、雰囲気的に多分、いえなかったのだと思う。


「美味い・・・」

「そう言ってくれると、嬉しいです・・・///」


鬼崎くんも、驚きながら・・・お弁当のおかずを食べる。

ふと、私は白い髪の人の名前を聞いていないことに、気付く。


「あ、えと私は高夜 悠といいます。このお二人にも先ほど・・・あったばかりです。えと、お名前は?」

「狐邑 祐一」


基本、多分あまり喋らない人なのだと、思う。

なんだか、愛想がない・・・クールな方だと、確信する。


「俺達の一個年上だ」

「あ、そうなんだ・・・ありがとう」


鬼崎くんが、こっそり私に教えてくれる。


「えと、三人に言いたいことが・・・あるんですが」


三人共、なんだ?という表情で見て来る。


「・・・その、なんでこう仲良く・・・あー、いや なんでもありません。すみません!私、もう行きます!」


一瞬、自分は何をいっているのか・・・わからなくなり、急いで弁当を包み鞄を持って、屋上を後にする。

急な行動だったせいか、三人共固まったままだった。




END