学校に、着いたらいつも・・・私はまっすぐにあるところに向かう。


朝は、結構早く出て・・・授業が始まるまで屋上で、景色を見るのが日課になっている。

静かだし、だれにも邪魔されない。


サボる人がいても、授業が始まってからしか、来ないからだ。


何だかんだで、私はこの学校で友達と呼べる人がいなかった。

まぁ、私は記憶がはっきり言うとない、この村にどうやって来たかもよく覚えてない、でも学校に通っているというのだけは、なぜか覚えていた。

それに、村の人たちは私のことがわかる・・・だから、私は記憶がなくなってしまったのだろうと、すぐに結論ずいた。


・・・友達が出来ない理由なんか、ではないけど。

もちろん、普通にクラスの皆とは話す・・・でも、一緒に行動なんかはしたことない。


「はぁ・・・」


小さく、溜息が出てしまう。

自分がよくわからない・・・でも、私は特に細かいことはきにしない性格のおかげか。

・・・あまり、苦しいと思ったことは無い。



しかし・・・だ。

一つだけ、細かいことで収まりきれないものがある。

それは・・・・


『クモツ、』


この白い、丸い・・・なんか絵で書いたような生き物が見えることだ。

私は、弁当と一緒に持ってきた。

さくらんぼを、そのこにわたす。


『アリガタイ』


ぺコっと、頭を下げると・・・その生き物は、一瞬にして消える。


「・・・あれ、いつもなんなんだろ?」


この頃、見るのが頻繁になってきた気がする。

この前は、狐みたいのが・・・お腹を空いてそうだったから、餌を上げてみた。


すると・・・懐かれた。

そろそろ――


『・・・二』


可愛げのない、紺色の狐がひょっこり・・・現れた。


「・・・きみには、これね」


ちょっと、朝に頑張って作ってみた・・・稲りを狐にあげる。

一度、顔を近付け・・・ゆっくりと食べている。


「今回は、自信作だよ?」

『・・・・二ー・・・二!』


滅多に、見せない表情・・・多分、これは美味しかったのだと思う。


そして、また来たときと同じようにすっと・・・消えた。


「・・・あれも、幽霊か。何かなんだろうか?」


キンコーン カンコーン


「げっ!・・・チャイム鳴っちゃった」


急いで、行こうと思ったが・・・何だか、やる気が起きなくて・・・そのまま、座り込む。


「(もう、いいや・・・さぼっちゃお)」


何だが、眠気が襲ってくる。

いい天気だから、仕方ないのかもしれない・・・私は、ゆっくり目を閉じた。




―――――     ―――――



「な・・・で、い」

「ん・・・もん・・・」


何かの声が、遠くから感じる。


私は、すっと目を開けた・・・。


「うおう!?」


なぜか、凄い・・・驚いた表情の人がいた。

もう一人は、赤髪の彼で、あーあという顔をしている。


「・・・・・・・あれ、鬼崎くん――かな?」


あーあ・・・という表情の人を、何処かで見たことがあると思い、私は教室のある一人と結びつき、呟いた。


「なんだ? 知り合いなのか?」


小さい彼は・・・見たことは無いが。

うん、小学生と思わせた。


「いや、知らないっすよ あー、と会ったことあったか?」


私は、鬼崎くんの対応につい苦笑を漏らした。

同じクラスでも、まったく・・・主張しない私には、当たり前のことかとなぜだか、納得してしまった。

私は、鞄から時計を取り出す。

今時に、懐中時計なんか持ってるのは私ぐらいだと思う。


時計は、昼頃を指していた。

どうやら、午前の授業は全部、サボったみたいだ。


「おい! 聞いてるのか?」

「ん・・・あ、うん。一応、貴方と同じクラスなんだけど、はは」


最後の方は小さく、言ったが・・・聞こえていたのか、鬼崎くんはバツの悪そうな顔をする。

私も、どうしていいか・・・苦笑しか、出来なかった。


「・・・あー、あれだ 名前は?」

「え・・・」


鬼崎くんは、急いで私に名前を聞いてくる。

つい、言葉が漏れる。


「だから、名前は?」

「・・・えっと、高夜 悠です。」


すぐに、鬼崎くんは何かを考え出す。


「あ・・・廊下側の奴か!?」


なんだろう、とても心に刺さる。


ともかく、思い出してもらえただけでも、いい方かな?

そんなことを、考えていると小さい彼が、近付いてくる・・・なぜか、不機嫌そうに。


「なんで、二人で話し込んでんだよ!」


多分、話に入れてもらえなくて、怒っているのだと思う。

すぐに、私はその人に謝りを入れた。


「す、すみません 先輩」


私の言葉に、その小さい彼はぽかんと口を開けた。

鬼崎くんも、驚いた表情になっている。


「・・・えーと、もしかして 先輩じゃ、ありませ――」

「よく分かってる後輩じゃねぇか!? 拓磨、おまえも見習いやがれ!」


言葉を被せてくる、先輩?はとても、目を輝かせながら嬉しそうに笑った。

鬼崎くんは、私に近付き・・・耳打ちしてくる。


「よく、先輩ってわかったな?」

「あ・・・ははは、なんとなく。ほら、鬼崎くんも・・・敬語使ってたから?」


なるほど・・・といったように、鬼崎くんは離れ、小さい先輩が変わりに近付いてくる。


「っと、悠だったか?」

「は、はい」

「俺は、鴉鳥 真弘様だ。 なかなか、見込みのある奴じゃねぇか!よろしくな」

「は、はぁ・・・鴉鳥先輩、よろしくお願いします。」

「おう!」


やっぱり、機嫌が良さそうに話している。

どうしてかは、いまだにわからないが・・・何も、言わないほうが、身のためというのは勘付けた。


「あ、あの・・・ここで、昼を食べてもよろしいでしょうか?」


ちょっと、遠慮ぎみに声をかけてから・・・様子を伺う。


「別に、そんなの気にせずに食べろよ」

「可愛い後輩だ いいに決まってんだろ!」


二人の了承を得て、私は鞄からお弁当を開く。


そこで、ふと・・・屋上の扉が開く音がした。




end