第二話 ~約束の時~




この状況を、抜け出せないものかと・・・必死に考えるが、今起きていることを理解しなくちゃいけない。


「ルラ?大丈夫?・・・どうしたの?」


さっきから、なぜか私の周りには心配そうにうろうろしている人がいる。

正しくは、人形・・・だと思う。

・・・どこをどう見ても、私が作り上げた人形にそっくりだ、だいたい人がここに入れるわけは無い。


私は、冷静にその人に聞いてみる。


「あの・・・貴方、どこから来たの?」

「? 何言ってるの、僕はずっとここにいたよ。君が、人形を作らなくなってからもずっーと」

「!? なんで、そのことを」


確かに、人形観賞などはよくして友達もいる。しかし、私が人形を作っていたとは言ったことが無い。


「・・・まだ、信じてないんだ。僕は、人形だよ、君が一生懸命、作ってくれて―――・・・一番、大切にしてくれた人形」

「そ、そんなの!・・・証拠なんて何処にもないでしょ!」


つい、声を荒げてしまった・・・信じたくないから、当たってしまった。

その人は、悲しそうな顔をして私の手を自分の胸に当てた。


「・・・聞こえないでしょ?人間が持つ鼓動が」

「・・・・・・・」



今度こそ、私は信じなくいけなくなった。

聞こえないのだ・・・感じないのだ、温もりがないのだ。


手が震える、願っていたことが叶った。

そして・・・あの時、親を殺したものを・・・確信してしまった。


「そんな顔しないで・・・よ、僕は――僕は・・・ただ」

「・・・なんで、貴方がそんな顔するの? 別に、関係ないのに」


つい、悲しそうにするものだから・・・私は震える手で、ゆっくり頭を撫でてあげる。


「―――・・・君の悲しみは、ずっと僕の中に流れてきた。いつもいつも、親を殺したのは自分のせいだ。と責めていた君に、僕は何もしてあげれないまま、時が過ぎてしまった。でも、今・・・やっと君の為に動けるんだ!」


彼は、嬉しそうに私を見てくるのだが・・・私には、言っている意味がさっぱりわからない。


「君の親を、殺した人形を壊せる」


彼は、笑顔のまま何も思っていない顔で言う。

私は驚いた顔になるが・・・また私は怒りをあらわにしてしまう。



「・・・それは、貴方が友達を殺すということ?」

「え・・・」


今度は、彼が驚いた表情になる。

でも私は気にせず、続けた。


「私が、作り続けたものはすべて・・・大切な友達。その友達達が、殺すというの?」

「・・・でも、でも―――あいつは、ルラの大切な親を・・・」

「私は、信じないわ! 今までも、そうだった!私が人形を作らなくなったのは、信じたくなかったから――私が作り上げてきた、大切な人形たちがそんなことしない!・・・そう信じてきた。」


「・・・・・・・」

「もし、そうだと言うなら親を殺したというなら・・・私は聞くわ。どうして、そうしたのか。それから、私は自分自身ですべてを終らす。それに―――」


言葉を止めて、ゆっくりと私の作った彼をみる。



「そんなこと、貴方にさせたくない・・・私の願いが届いた人形さんに」

「!・・・ルラ」


私の言葉を、聞いて・・・彼は顎に手をおいて、考え事を始めた。


「やっぱり、ルラは優しいね。うーん・・・そうすると、ルラは何を望んでいるの?」

「え?・・・」

「君の望みだよ、僕は・・・君の望むことをしてあげたかった、元々僕らの動ける元でもあるんだ」

「・・・望み・・・?」


彼の言葉に、私は首を傾げてしまう。


「あるはずだよ? だって、無ければ僕は動けないから」

「・・・・・うーん」


そうは、言われても・・・思い付くことがない。

なぜか、彼は近付いてくるし。


「あ・・・」

「わかった!?」


私は、一つ思い当たる点があった。


「・・・でも、馬鹿げてる」

「いいから! 言ってみて!」


私は、小さな声で呟く。


「傍に・・・誰かいてほしい」


「馬鹿げてなんかないよ!? 君の望み叶えるよ!僕は、ずっと君の傍にいる!」


必死に言う彼に、ついつい笑みが零れてしまう。


「うん! やっぱり、ルラは笑顔が一番だね。久しぶりだなー」


私と一緒に喜んでくれる彼。

そういえば、私は彼の名前を呼んでいない。


「ラグト」

「?」

「随分、昔から人形達には考えてたけど・・・つけれなかった名前、君の名前だよ ラグト」

「・・・ラグト? ラグト!」


嬉しそうに彼・・・ラグトは、自分の名前を繰り返している。



これが、私の運命を変える・・・出会いだった。



END



第二話=一日目