主人公受けが、嫌いな人は。。。回れー戻れ!


設定→道場の見学を許された千鶴は・・・すぐに道場に向かう、そして自分も稽古を出来ればいいと考えていたのが・・・それが思わぬ方向へ。




稽古には、気をつけて【一】





「じゃあ、勝った方が・・・千鶴ちゃんに稽古をつけてあげるでいいよね?」

「ああ、異論はない」



どうして、こうなってしまったのだろうと・・・私は、小さく溜息を吐いてしまう。

そもそも・・・私が滅多に来れない道場に来た理由は、少しの興味心から始まった。


時は、今日の朝の出来事に遡る。



――――   ――――



「・・・んー(いい天気・・・だなー)」


今は、春の真っ最中でもあって・・・とても、温かくなってきている。

気を抜いてしまったら、きっとすぐに眠りについてしまうだろう。


新選組の少しでも、役に立ちたいと考えた私は、隊士さん達から羽織を頂いて縫っているところだ。

手元に集中していたから、近付いてくる人に気付かず・・・目の前に立たれて影が出来て、やっと私は顔を上げた。


「!・・・近藤さん!?」

「やぁ、雪村くん・・・精が出るなー」


にっこりと笑顔の近藤さんが、隣に座る。


「えっと、どうかしたんですか?」

「いや、用という用ではないのだが・・・どうだろう、道場を見学してみる気はあるかね?」

「え!」


近藤さんの言葉には、とてもびっくりしてしまったが・・・すぐに私はいい機会だと考える。

もしかすると、見学だけじゃなく、稽古をやらせてもらえるかもしれない。


「無理にとはいわんが―――」

「ぜひ!見学させてください」


行かせてもらえなさそうな空気になり始めて、私は、すぐに・・・頭を下げてお願いする。

その返事を聞くと近藤さんは、嬉しそうに何度も頷いて私に着いてくるように言う。


私は、近藤さんの後について行く。



「では、好きなだけ見学するといい」

「はい!ありがとうございます」


私はもう一度、近藤さんに頭を下げてから・・・道場を見渡す。

中には、幹部の人たちもいて少し安心する。


見渡していたせいか、私は斎藤さんと目が合ってしまった・・・逸らすのは失礼かなと思い、そのまま見ていると斎藤さんが此方に歩いてくる。

近藤さんは、近付いてくる斎藤さんに気付き声をかけた。


「おお、斎藤くん丁度いいところに来てくれた!」

「・・・どうしたのですか」

「ふむ、少々・・・雪村くんに息抜きをしてもらいたくてな。連れて来たのだが・・・俺はこれから用があってな」

「――・・・わかりました、俺が見ています。」


斎藤さんは、近藤さんの言いたいことが分かったのか・・・一度、目を伏せて私を見ながら近藤さんに伝える。


「そうか!それは良かった・・・では、よろしく頼むよ」


近藤さんは、そう伝えるとそのまま道場を出てしまった。

取り残された私は、斎藤さんと向き合い、深く頭を下げる。


「あの、よろしくお願いします」

「ああ・・・お前は、本当に見学だけが目的か?」


斎藤さんは、本当に鋭い人だな・・・とつい感じてしまう。

私は、ちょっと遠慮がちに首を横に振った。

それに、やはりかという感じで斎藤さんは・・・私を見てくる。



少々、目を伏せて斎藤さんは考えている・・・多分、どうするか。考えているのだろう。

そして、決まったのかゆっくり斎藤さんは目を開いた。


「俺で良いならば・・・朝の稽古が終わり次第、みてやれるが」


斎藤さんの言葉に、つい驚いて言葉が出なくなってしまった。

たぶん、駄目だの一言がくるのだろうとばかり、考えていた・・・・。


「・・・嫌なら、佐之にでも頼――」

「いえ!ぜひ、お願いします!」

「・・・大声を出すな」


私の声は予想以上に大きかったのか・・・隊士の人たちが、こちらを見てくる。

急に私は、恥ずかしくなり・・・すみませんと、小さく謝る。



だが、この声が・・・後からこの問題に発展していくことに―――。



【一】 END