ここからは、ゲーム『薄桜鬼』の斎藤さん×主人公・千鶴になります。


苦手・嫌な方は、戻りましょう。



設定→主人公が、新選組に入って一年ぐらい。




小さな思い・上


ある冬の晩・・・



千鶴は、斎藤の部屋の前で佇んでいた。

この戸を開けるべきか、開けぬべきか・・・と。


「・・・用があるなら、入れ」


行ったり来たりを、繰り返していた千鶴だが・・・斎藤の一言によって、決意を決める。


「失礼します・・・」

「ああ」


戸を開けると、書類を片付けて斎藤がいた。

そう、仕事中だったのだ。・・・なぜ、千鶴が中に入るのを遠慮していたのは、これが理由なのだ。



仕事をやっているのに、大した用事でもないのに邪魔はしたくない。


「す、すみません!お仕事の邪魔してしまって、失礼しました!」


千鶴は急いで部屋を出て行こうとする。


「待て、一段落着いたところだ・・・気にすることは無い」


今すぐに出て行こうとしている千鶴の背中に、斎藤は声をかける。



千鶴は少し、遠慮しながら部屋に戻る。

そして、斎藤は千鶴に向き合う。


「・・・で、どうしたのだ」

「あ、その・・・ですね。くだらない話なのですが・・・聞いてもらえますか?」

「・・・なんだ」


少し、考えてから斎藤は言葉を繋ぐ。

それに、すこしホッとして千鶴も言葉を繋げる。


「斎藤さんは、寒いのは苦手ですか?」

「・・・・・・」


いきなりの千鶴の質問に、少々・・・斎藤は驚いた表情になる。


「あ、あの・・・別に深い意味がある訳では!答えたくなけれ――」

「別に苦手ではない・・・が、そうでもないな」

「・・・えっと、それはどちらともいえない、ということですか?」


千鶴の言葉に、斎藤は小さく頷いた。


「そうですか!、わかりました、ありがとうございます」

「・・・・それだけか?」

「あ、はい。すみません、これだけの為だけなんです・・・」


しゅんとする千鶴に、斎藤はすぐにフォローする。


「気にするなと言ったであろう、用が済んだのであれば、もう部屋に戻れ・・・もう、遅い」

「はい!・・・えと、失礼しました」


斎藤に言われ、千鶴は素直に部屋から出て戸を閉める。

一歩、歩みを始めたとき、斎藤の部屋の戸が開く音がする。


何か、あったかと思い後ろを振り返ると・・・なぜか、羽織を持っている斎藤がいた。


「え・・・えと、斎藤さん。どうしました?」

「今夜は、冷え込むだろう・・・持っていけ」


そのまま、斎藤は千鶴に近付き・・・そっと、肩に羽織をかけた。


「あ、ありがとうございます!。明日、返しに来ますね!」

「ああ・・・おやすみ」

「はい!おやすみなさい」


千鶴は、本当に嬉しそうに斎藤に頭を下げて、そのまま部屋に戻っていった。



残された斎藤は、しばらく・・・空を眺めてから、部屋に戻る。



「(明日は・・・今日以上、冷え込むな)」



END