「あの話の続き書かないんですか~?」

と言われたので、久々に書きたいと思います!



第一話はこれね↓


http://ameblo.jp/dreaming-black-cat/entry-11253911492.html

*このお話は全てフィクションと妄想であり似た様な人や出来事があっても、それは気のせいであり、実際の人物・出来事とは一切関係ありません


エイミー妄想劇場~初恋編~

第二話「スイカ男」


ダニエルと旅で出たのはいいが、行くところも無く、知り合いの家を転々として4日がたった。

冬にしては暖かな小春日和な昼下がり。


ダニエルを知り合いの家に預け、私は仕事場へ向かっていた。


ピコポーン

電車に乗ろうとSuicaをタッチすると改札機が閉まった。


「やだっ!なんで、乗れないの!!?」


動揺し、何度も何度もSuicaを押し当てる私。


だが、ピコポーン、ピコポーンと言うだけで、改札機は決して通そうとしない。


「おぃ」

男の低音ボイス。

振り返ると、背がスラっと高く、真っ黒な革ジャンと真っ黒な細見のズボンにジャラジャラと鳴るチェーン。そして、ゴールドの鼻ピをした金髪のバンドマン風な男が立っていた。

黒いグラサンからうっすらと見える鋭い眼がこちらを真っ直ぐとらえる。

怖い男にからまれた・・・・

そう思い私は男から目を逸らした。


「お前さぁ…チャージしてねぇんじゃねぇの?」

予想外の言葉だった。

「・・・・・・ひゃぇ?」

男に言われ、改札の表示をよく見ると、確かにチャージ残高には”0円”と書かれている。

「あ!!?」


自分でも驚くようなすっとんきょうな声がでた。

「本当だ!!私ったら…ぼーっとしてて…チャージ切れだったのね!!」


初歩的なミスを犯し、恥ずかしさに頬が熱くなるのを感じた。

今すぐここから消えてしまいたい気持ちから、すぐさま引きかえそうとした。

が、その時。


「来いよ!」


男は私の手首をつかんで、切符売り場まで行くと強引に私のSuicaを取り、チャージし始めたのだった。


「ほら、1000円チャージしといたぜ。これでもう通れるだろ」

あまりの予想外の出来事にあぜんとするだけの私。


そんな私と違い、、彼は、Suicaを私に渡すとナチュラルにその場を立ち去ろうとした。

「待って!」


思わず、叫んでしまった私。


男は立ち止まった。

「えっと…あなたの名前は!?」


すると男はこちらを振り返り言った。


「KEN」


「KEN…って言うのね…えっと、KEN、ありがとう!」


彼はもう振り返らなかった。


その代わりに親指を立て、それを上にあげると、男はすっと人混みに消えたのであった。


これが、私とKENのファーストコンタクトであり、私のファーストラブの始まりだった。




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KENと出会って、一週間がたった。


相変わらず、私は、ダニエルに家を任せ、仕事に出かける。

いつも通り、電車に乗るため改札を通ろうとしていると


ピコポーン


と言う音と共に改札のドアが閉じた。


チャージ切れだ。


あわてて列からどこうとすると…


ジャラ…


「またお前かよ」


ずっと探してた低音ボイスが私の鼓膜を揺らした。

涙ぐみそうになるほど、胸が歓喜で震える。

もう会えないと思っていた……KENだ。


「KEN・・・?」


そっと後ろを向く。

真っ黒なレザージャケットとパンツ。


ジャラジャラと音をたててゆれるチェーン。


金の鼻ピアスと金色の髪。

駅の電灯で黒光りするイカつい黒いサングラス。

KEN・・・・・

偶然の再会に私の胸はドキっと揺れた。


「また、チャージねぇのか?」


彼は、グラサンをとると、その格好からは予想もできないような優しい笑顔を見せた。

その笑顔に、叫び声に近い大きな声が私の声帯から放たれる。


「KEN・・・ッ!!!!」

駆け出しそうになる足を必死におさえて、彼の方に向かった。

彼は、親指で切符売場をさす

「来い、チャージしてやんよ」

そして、初めて会った時のように1000円をチャージしてくれたのだった。

「ほらよ。チャージできたぜ、チャー子」

「チャー子?」


「いつもチャージがないからチャー子。それがお前の名前だ」

「何それ?ダサっ!もっとカワイイ名前がいいです。」

私はニックネームをつけられ仲良くなれた気がして嬉しかった。が、そんな気持ちを抑えて、わざと唇と尖がらせた。


「そうか?お前にピッタリなかわいい名前だと思うがな。」

彼からカワイイと言われ、顔が赤くなる。それを誤魔化すように、私は言った。

「私がチャー子なら、あなたはスイカ男ですね」


冗談のつもりだった。

だが、彼は、怪しげで大人な瞳を細め、

「スイカ男か……、悪くねぇ名だ」

と満足げに微笑んだ。


「スイカ男」 前編終わり