『白』


スリジエ3期生 DJ 花田菜穂





私は手を伸ばした。



瞳を薄めて、指で焦点を合わせる。


夏の暑さで陽炎が揺れる。



広いグランドに立っている豆粒のような君も、私はたった3秒あればとらえられる。



ただ、その指先が震えている。



私の中のときめきが陽炎と鼓動を奏でているからだろうか。





それとも、






その〝白〟が、わたしには眩しすぎるからか。








〝 白 〟


無罪や無実、潔白を意味する。 色が付いていない、空白、白紙に戻す、頭の中が真っ白といったように何もない状態を表す。 透明のイメージにも繋がる。





私は恐らく辞書特有であるだろう、紙の香りが好みだという理由だけで選んだ新しい辞書で、普段は現代文の授業の時くらいしか開きもしないのに熱心にその言葉を調べていた。



大切な壊してはいけないものを扱うかの様に。丁寧に。



「ふーん。」



調べても私が何を知りたかったのかは自分でも分からなかったし、第一言葉の並びが気難しくてがっかりした。


辞書にも載っていない何かを見つけたかったのかもしれない。自分にそんな想像力があれば、いくらでも世界は広がるのに。





〜続く〜

花田菜穂