北朝鮮のミサイル発射が頻度を増している。8日朝にも、短距離の地対艦巡航ミサイル数発を日本海に着水させたという。

 

アメリカも空母を2隻も日本海に派遣して、必死に牽制しようとしているが、全く効いていないように見える。一体、北朝鮮問題の落としどころはどうなるのだろうか。

 

この問題の核心は、中国やロシアにとっては、北朝鮮がアメリカに刃向えば刃向うほど、北朝鮮の利用価値は高まるので、彼らが本気で北朝鮮を「良い子」になるように仕向けることは絶対にあり得ないということである。

 

さて、結論を急ぐ前に、今から55年前の1962年、東西冷戦まっただ中に、ソ連がアメリカのお膝元であるキューバに核ミサイルを配備しようとしたことがきっかけとなって、アメリカとソ連が核戦争の一歩手前までいってしまった「キューバ危機」を振り返ってみたい。

 

キューバは親米国であったが、1959年にカストロが親米のバティスタ政権を倒して、アメリカと反目するようになり、社会主義国家を標榜し、ソ連陣営に加わった。ソ連はこれを生かして、アメリカに対抗しようとし、キューバにミサイル基地を建設して、アメリカを牽制しようと考えた。

 

1962年10月14日、アメリカ空軍の偵察機がキューバ上空で撮影した写真により、ソ連がミサイル基地を建設中であることが判明して、アメリカは激昂し、22日にケネディ大統領は、キューバにソ連のミサイルが搬入されるのを防ぐため、キューバの周囲を海と空から海上封鎖することを宣言し、空軍に核兵器の搭載を命じた。

 

対するソ連は、既に機材と武器を積んだ艦船をキューバに向かわせていた。封鎖ラインを間に挟んで、アメリカの核ミサイル、空軍機1200機、艦船200隻と、ソ連の(核)ミサイル244基、空軍機82機、艦船12隻が睨み合ったのである。

 

26日、ソ連のフルシチョフは、アメリカがキューバに侵攻しないと約束するならミサイルを引き上げると伝え、アメリカが27日にこれを受け入れ、28日にソ連がキューバからミサイルを撤去するとラジオ発表を行い、危機は回避されたのである。

 

ここで、北朝鮮問題に話を戻すと、この問題の落としどころは、私見では下記の4つである。

 

■ 北朝鮮問題の落としどころ

 

(1).北朝鮮が、中国が議長を務め、北朝鮮の核問題について解決策を話し合う六か国協議に復帰する。

 

問題は、アメリカと北朝鮮が双方ともに受け入れ可能な妥協点は存在するのかということである。アメリカが主導した経済制裁で深手を負ったイランは欧米とイランがイランの核問題を話し合う六か国協議で核開発の一部凍結を受け入れたが、同じことが北朝鮮で成り立つのだろうか。

 

(2).アメリカが武力で、金正恩体制を転覆させる。

 

2011年5月2日に、アメリカ海軍の特殊部隊SEALs(シールズ)の隊員が、アフガンの前線基地からステルスヘリでパキスタンの領空に侵入し、ビンラディンの隠れ家を急襲して、銃撃戦の末に、彼を殺害したように、である。

 

この作戦の問題点は、北朝鮮で、このようなことが実行可能なのかということと、もし成功したとして、その後、北朝鮮の政治はどうなるのかという青写真がないことと、もし失敗したりしたら、北朝鮮とアメリカの全面戦争につながりかねないことである。

 

(3).このままの状態が今後も続く。

 

このままの状態とはどういう状態なのかというと、当面は北朝鮮はミサイルの発射は続けるが、アメリカ本土に届くような大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射と核実験は見合わせるという状態だが、今後の展開によっては北朝鮮がこの2つを今後再開する可能性もあり得ると考える。その際は、双方に極限の緊張が走ることは間違いない。

 

(4).アメリカと北朝鮮が戦争を始める。

 

マティス国防長官の発言から考えると、アメリカが意図的に戦端を開いて先制攻撃を仕掛けるとは考えにくいし、戦力的に勝ち目のない北朝鮮がそうするとも思えないが、トランプ大統領が間違って「核のボタン」を押してしまうというような想定外の行動がきっかけとなって、全面戦争に突入する可能性はゼロではないだろう。

 

◆ 実現可能性について

 

私見では、(1)は4%、(2)は0%、(3)は95%、(4)は1%なのだが、皆様はどのように考えられるだろうか。