きょうは、金正男が暗殺された理由について考えてみたいと思う。

 

■ 金正男はどうして暗殺されたのか

 

(1).金正男については、2011年末に金正日から権力を継承した異母弟の金正恩より翌2012年の早い時期に、暗殺すべしというスタンディングオーダー(継続的な指示)が発令されていたという報道があり、実際、金正男はこれまでに何度か暗殺されそうになったことがあり、最近もクアラルンプールの韓国レストランで食事を摂る時などにも、ボディガードを付けていたという。

 

(2).しかし、金正男は今回、亡くなった時点で、自分とは違う名前の外交官用旅券を所持していたと言われており、北朝鮮政府と抜き差しならない関係になっていたとは私には思えない。

 

(3).金正恩は金正男に潜在的な脅威を感じ、何かあったらいつでも最終的な執行命令が下せるように、実行部隊を編成してリハーサルを重ねると共に、部下に金正男の行動を日常的に監視させていたが、少なくとも彼にパスポートを発券した2016年11月までは、泳がせていたのではないかと私は考える。

 

(4).その後、金正男の取った行動が金正恩の逆鱗に触れて、「隙があったら、いつでも執行しろ!」という命令が下されたのではないだろうか。

 

(5).金正恩を激怒させた金正男の行動とは、ズバリ、「もっと上納金を納めろ!」という金正恩の命令に金正男が従わなかったことではないかと私は思う。

 

(6).その根拠としては次のようなことが考えられる。

 

①.金正恩の経済政策はうまくいっていない。北朝鮮から韓国への亡命者が目に見えて増加していることから、国民への配給の頻度や内容が低下していることは疑う余地がない。

 

②.北朝鮮には国民に物資を配給するための財布と、政府がミサイルや核実験をするための財布という2つの財布があると言われるが、後者の資金源の1つは武器や麻薬の販売・偽札の流通であり、金正男はその一部に深く関わっていた。彼は、マカオなどのカジノで豪遊していたのであり、とてもリッチだったのである。

 

③.一方、金正恩は金正日の時代よりもはるかに頻繁に、核実験やミサイルの発射を繰り返しており、その資金集めは簡単ではないと推定される。

 

④.金正恩が金正男に対して、「もっと上納金を納めさせたい」と考える理由は十分過ぎるほどあったのである。

 

■ ■ ■

 

それにしても、ベトナム人とインドネシア人の2人の20代女性の下手人(げしゅにん)だけが裁かれて、計画を練った北朝鮮の工作員などが罪に問われないとしたら、こんな不公平が許されるのだろうか。