再生医療の研究で、またまた日本人が画期的な大発見をした。理化学研究所の30歳の女性研究者が、マウスの体細胞を酸性の溶液に浸して刺激を与えることで、あらゆる細胞に変化できる万能細胞を世界で初めて作製することに成功したと発表したのである。


具体的には、生まれたばかりのマウスのリンパ球を弱酸性の溶液に30分間入れた後で、別の培養液に移したら、リンパ球の性質を失って、残った細胞の3~5割が万能細胞の性質を示したというのである。


本人の言によれば、この変化、つまり初期化は、「成長した細胞が赤ちゃん細胞になるようなもの」であり、iPS細胞のように遺伝子操作や核の移植によらずに極めて簡単な操作で、これまで不可能とされてきた動物細胞を外的刺激だけで初期化することに成功したものであり、画期的な発見と言えるだろう。


早速、この万能細胞はSTAP細胞と名付けられたが、iPS細胞では疑われる移植後のがん化や染色体への影響もないと考えられ、iPS細胞では作れなかった胎盤も形成できるため、もしヒトの細胞でも作れて安全性が確認されれば、再生医療や創薬に役立つのではないかと期待されている。


というわけで、STAP細胞は表面的に判断すると、機能と性能の両面でiPS細胞を超えているようにも見え、今後の展開次第では山中教授のiPS細胞の功績をかすませるようになる可能性もあるが、私は事はそう簡単には運ばないのではないかと考えている。


なぜなら、STAP細胞は試験管内ではほとんど自己増殖できないなど、ES細胞やiPS細胞とは機能が微妙に異なる上、これまでの実験では生まれたてのマウスではうまくいったが、それ以外のマウスではうまくいっておらず、、STAP細胞のカバリッジ(カバーする範囲)は意外に狭いのではないかという気もするからである。


実は、このように世間で再生医療の研究が盛んになる中で私が1番心配しているのは、私が生きている間には答えは出ないかもしれないが、私たちは長期的にはもしかして年をとっても老いることができない、老いることが許されないような時代を迎えようとしているのではないかということである。すなわち、万能細胞は不老不死の万能薬なのかということである。


つまり、女性はいくつになっても年を取らず、平均寿命が120歳を超え、100歳でも子どもが産めるようになり、今どこかの国では国民がまるで鼻でもかむように美容整形をしているが、私たちも年齢の衰えを感じたらいつでも万能細胞で局所的に体の部品を入れ替えて、永遠の若さを保つようになるのではないかということである。


果たして、再生医療に関して、数十年後、あるいは100年後に、今回の主役であるムーミン好きの小保方さんが思い描くような時代がやってくるのだろうか。