今日は米中関係について考えてみたいと思う。


オバマ大統領はシリアの化学兵器の使用問題で有言不実行という醜態を演じ、同盟国であるイスラエルやサウジアラビアなどの信頼を損ね、中国や北朝鮮やイランに攻め入る隙を与えてしまった。


国内でシェールオイルを産出し中東原油への依存度を下げたアメリカは、アフガニスタンやイラクでの戦闘に疲弊したこともあり、中東への関与を減らそうとしている。アメリカは国内で政治対立が激しくなり、もはや世界を積極的に統治しようという意欲を失ってしまったのである。


その中でアメリカは、国力を維持・発展させるのに1番効率が良いアジアをTPPなどを使って支配しようとしているが、露骨に国益の追求に走っているため、新興国と必ずしもうまくいっていない。


一方、中国の習近平主席の目標は世界経済の3割を占めた1840年のアヘン戦争の前までの超大国への復帰である。彼らはその道筋をどのように思い描いているのだろうか。


さて、中国はアメリカ国債をどこの国よりも大量に保有しているため、アメリカ政府の最大のスポンサーである。従って、アメリカ経済が不調に陥ったり、低迷している時には、アメリカ政府に注文がつけられる。そして、2008年のリーマン・ショックの時、アメリカが中国に助けてもらったツケがその後の米中関係を方向付けた。中国は国際金融における基軸通貨やアメリカの軍事予算にまで口出しするようになったのである。


2009年7月にワシントンで開催した米中戦略・経済対話で、オバマ大統領は「我々は共に重い責任を負っている」と演説し、米中による共同覇権というG2論について中国の自覚を促したが、中国の温家宝前首相は明確に否定した。そんな責任は負いたくないということなのだろう。


ところで、中国は外貨準備の1/3をアメリカ国債で運用し、中国のGDPは現在はアメリカの半分ほどだが、2018年になると2/3ぐらいまで伸びるとみられている。アメリカと経済力が伯仲してくるのである。しかし、オバマ大統領は中国に対して強い不信感を抱いている。


この点についての中国の作戦は議員外交である。リーマン・ショックの時、王岐山中国副首相とポールソン米財務長官は10年来の友人だと言われたが、現在は習近平主席とバイデン米副大統領が親密な関係だと言われている。翻って、わが国の政治家については、アメリカの政界の重鎮と10年来の友好関係を築いているといった話は最近聞いたことがない。中国や韓国についても同様である。議員外交が細っているのは、わが国の政治力が低下した証拠といってよいだろう。


結局、アメリカと中国は、人権についての考え方や経済の基本理念では折り合えないが、投資と貿易をかすがいにして、少なくとも当分は不即不離の関係を保ちながら、世界をリードしていくことになるのだろう。