東京都の猪瀬直樹知事が12月19日にとうとう辞任した。今日はこの問題について考えてみたい。


猪瀬氏は前日の12月18日に午後の公務を急遽キャンセルし、石原慎太郎前東京都知事の自宅を訪問して、相談を持ちかけていた。この席で辞任を促されたことは間違いない。都政の停滞によって、せっかく勝ち取った2020年東京オリンピックの準備作業に支障が出ているということで、最終プレゼン仲間の安倍首相からも見限られつつあった。もう彼には辞任以外の選択肢は残されていなかったのである。


猪瀬氏は19日の辞任会見で、「2020年に向かってスタートダッシュすべきときに私の問題で都政を停滞させるわけにはいかない。国の運命がかかった五輪の準備を滞らせるわけにはいかない」と述べたが、オリンピック招致の最大の貢献者から最大の妨害者になるのだけは避けたいという思いがあったことだろう。


しかし、ここに至る都議会での追及に対して、猪瀬氏の答弁はとても作家とは思えないお粗末なものだった。徳田毅衆院議員から例の5,000万円を無利息無担保で借りた時に書いたと言われるしわひとつない真新しい借用書の信憑性、5,000万円はこれに入れて持ち帰りましたといって提出したカバンに5,000万円を押し込もうとすると、チャックが閉まらないという見苦しさ、5,000万円の用途を問われて証言が二転三転するいかがわしさ、厳しい追及を受けて耳の後ろから汗がスーツにポタポタ垂れるという真実味などである。これらを見せつけられたら、何が真実かは誰にだってわかるはずである。


石原都政時代には副知事として厳しく不正を追求し、 「ファクト(事実)と、エビデンス(証拠)を示せ」と勢いよく迫っていた猪瀬氏だったが、皮肉にもその言葉が自分に返って来ることになったのである。


しかし、ある意味で本当の問題は、徳洲会グループの政治献金の華々しさにあり、その頂点は石原都政時代にあるとも考えられる。検察の意気込み次第では、リクルート事件級のスキャンダルに発展する可能性さえ残されているのである。みんなが寄ってたかって猪瀬氏を辞任に追い込んだのは、最悪の場合でも彼をトカゲのしっぽにして事を丸く収めようとする力が働いているかもしれないのである。この点は検察の力に期待することにしよう。


さて、猪瀬氏の後任には次のような条件が求められるという。まず人気があって勝てる人で、かつ政治資金問題にクリーンな人で、行政経験が豊富であり、できれば女性がよいと。


そして既にマスコミでは候補者の名前が挙がっており、人気があり、知名度が高いという線では、東国原英夫前衆院議員蓮舫元行政刷新相が、行政経験が豊富であるという線では、下村博文文科相舛添前参院議員や小池百合子元防衛相が、特にオリンピックに関係が深いという線では、橋本聖子参院議員が、その他で女性という線では、丸川珠代参院議員などの名前が取り沙汰されている。


大阪や北海道などでは既に女性知事が誕生しているが、2014年の2月には東京でも初めて女性知事が誕生することになるのだろうか。