森喜朗元首相が2月20日からロシアを訪問し、プーチン大統領と会談するのに合わせ、安倍首相は森氏にプーチン大統領への親書を託すという。いよいよ近い将来に日ロ首脳会談が行われそうである。ここで、私たちが北方領土の返還交渉に期待するのにはわけがある。ロシアが経済的なピンチに襲われている今こそ北方領土を取り戻すには絶好のタイミングだからである。


具体的には次のようなことが言えると思う。


(1).アメリカでシェールガス革命が起き、天然ガスの供給量が増えたため価格が下がり買い手市場となった。そのため、アメリカは、カタールやナイジェリアやトリニダード・トバゴや赤道ギニアなどのガス生産国からLNG(液化天然ガス)を長期契約で購入しなくなった。そのため、上記のガス生産国はヨーロッパに販路を求めた。一方ロシアは、ガスをそれまでヨーロッパと高値で長期契約してきたが供給先をアジアに変更せざるを得なくなった。つまり、ロシアは現在、資源国家の屋台骨が揺らいでいるのである。


(2).ロシアは2012年にサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になったが、旧ソ連時代に枯渇した油田の先細りが著しく、2020年まで日量1千万バレル以上という生産目標をクリアして現在の地位を維持するためには、東シベリア油田や北極圏の海底油田など開発困難な埋蔵地域からの生産を大幅に拡大しなければならない。例えば、極東シベリアの開発には100兆円以上かかると言われているが、ロシアには資金がないため外国資本を呼び込む必要がある。


(3).プーチン大統領は小さい頃から柔道の愛好家であり、次女のカテリーナはサンクトペテルブルク大学で日本史を専攻したと言われている。つまりプーチン家は日本通なのである。


(4).ロシア通の鈴木宗男氏が新党大地代表として国政に帰ってきた。尤も、現在は公民権停止中で復活するのは2017年4月ではあるが、・・・・


(5).アメリカやカナダがLNGの輸出を解禁すれば、日本は安価な北米産とロシア産、中東・アジア産を天秤に掛けることができるようになる。つまり、ロシアの足元を見ることができるのである。


(6).地球温暖化の進行により、ユーラシア大陸の北を走る北海航路が開かれてきており、海上輸送コストが2割以上削減できるので、北方領土に早期に拠点を作っておくことが望ましい。


これだけの条件が揃うことはもう2度とないと思われるので、強気の交渉で下記のシナリオを試してみるべきだろう。


(1).最善のシナリオ

先日、日本維新の会の西村眞悟氏がテレビで、全千島と樺太の南部(勿論、北方領土の4島は含む)を返せと言われていたが、確かにそれが最善のシナリオだろう。


(2).次善のシナリオ

北方領土の4島返還を勝ち取る。返還のタイミングは一括でなくても段階的であってもよい。


(3).最低限のシナリオ

北方領土の3島返還を勝ち取る。3島とは、歯舞郡島、色丹島、国後島である。この場合、択捉島をどう扱うかが問題となるだろう。