東京スカイツリーを運営している東武鉄道の決算が絶好調のようだ。2月5日に会社側が発表した2012年4月~12月期の連結決算によると、営業利益が前年同期比60・5%増の401億1200万円と過去最高を記録したという。スカイツリーの展望台や隣接する商業複合施設である「スカイツリータウン」の人気が予想をはるかに上回ったことが大きかったのだろう。


一般客にとっては、展望台から全方位が見渡せる素晴らしい眺望とか、プラネタリウムや『すみだ水族館』などがねらい目なのかもしれないが、実は東京スカイツリーには表面からは見えない施設や装備にも素晴らしいテクノロジーが埋め込まれている。そこで今日は東京スカイツリーの隠れたテクノロジーについて触れてみたいと思う。


私がまず感心したのは、究極の省エネを実現する地域冷暖房型の熱供給システムである。これは熱供給プラントを稼働し地中熱と外気の温度差を利用して温水や冷水を作り出すものである。つまり、冬は地中熱の方が外気温より高いので、地中から熱を取り出して温水を作り、夏は地中熱の方が外気温より低いので、地中に熱を放出して冷水を作るのである。


実は東京スカイツリーを中心とした東京スカイツリータウンとその周辺の建物の地下には総延長が2,800mの導管が通っており、この中に冬は温水、夏は冷水を流して各店舗などの冷暖房に役立てているのである。


また、運用上の工夫として夜間の電力を利用してプラントを動かし、巨大な水槽に温水や冷水を蓄えて保温する仕組みを導入しており、個別に冷暖房を運用する場合と比較すると、年間エネルギー消費量が44%減り、年間CO2排出量が48%減ると見込まれているという。これは究極の冷暖房システムなのである。


よく被災地などで高台移転という話を耳にすることがあるが、このような地域冷暖房型の熱供給システムを考えてみるのもよいのではないだろうか。


2つ目は東京スカイツリーで雷観測をしているという話である。実は東京スカイツリーの地上497mの所に六角形のパイプがあり、その中にロゴスキーコイルと呼ばれる世界最大の雷観測装置が設置されている。タワーに雷が落ちた時、これで電流がどのように流れたかを調査して、送電線などの電力設備の耐雷設計に役立てようというのである。


既に10回ぐらいはデータの取得ができたそうで、それによれば雷がドーンと落ちた時というのは、1000分の1ミリ秒という短い時間内に数回、大きなマイナスの電流が流れて段々に収束していくようである。もう少しデータが揃ったら、国際会議で発表したいと研究者の方は述べていた。国際的にも非常に珍しい観測だそうで、調査結果が楽しみである。


一般に世にいう定番スポットをみんなと同じように味わうというのもよいだろうが、たまには視点を変えて見てみると普段は見えなかったものが見えてくるかもしれない。