中国海軍の艦船が1月30日に東シナ海の公海上で海上自衛隊の護衛艦に対して火器管制レーダーを照射し、1月19日には海上自衛隊のヘリコプターにも照射した疑いがあるということで、マスコミの報道が沸騰している。


私の考えでは、中国の尖閣奪取作戦はまず日本を挑発して日本政府から日中間には領土問題があるということを認めさせること、そのために手を変え品を変えして日本を挑発し続け、先に日本に手を出させて、中国もやむを得ず応戦せざるを得なくなったと世界にアピールすることだったと思われる。


従って、中国の方から先に手を出した今回の事案は、中国にとって極めてまずい展開のはずである。なぜなら、習近平総書記は、1月25日に北京で公明党の山口代表と会談して、日中間でハイレベルな交渉ができるように日本側に環境整備を求めたわずか数日後の1月30日に中国海軍の艦船が海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射して、自分たちの方でその環境をぶち壊してしまったことになるからである。


中国外務省の報道官の2月6日の記者会見では中国外務省の知らないことで軍が勝手にやったことだというニュアンスだったが、これは本当なのではないかと私は思う。つまり、習近平総書記は、制服組の人民解放軍を掌握できていないことを物語っていると思う。


皆様にちょっと思い出していただきたいのだが、中国が旧ソ連から買い取って何とか動かせるように修理した中国最初の航空母艦ヴァリャーグ(中国名:遼寧)を中国人民解放軍海軍に引き渡す式典が2012年9月25日に遼寧省の大連港で行われた時、政府代表として出席したのは胡錦濤前総書記と温家宝前首相だった。


こんなに晴れがましい儀式にどうして習近平総書記が出席しなかったのかといえば、彼が軍のトップである党中央軍事委員会主席に就いたのは2012年11月15日のことで、まだお呼びでなかったのと、自身が9月上旬に密かに腎臓の摘出手術を受けたばかりでまだ長時間臨席しなければならないイベントはきつかったのと、胡錦濤前総書記と温家宝前首相が引退後も軍に影響力を及ぼそうと張り切っていたからである。


従って、この事案は習近平総書記が安倍総理との「にらめっこ」に負けたことを意味していると私は考える。部下に足を取られて苦笑した習近平総書記の負けなのである。日中間に領土問題はなく、それ以外の分野で戦略的互恵関係を築きましょうとぶれずに訴え続けた安倍総理の勝利なのである。


ところで、日中間の外交交渉のボールはまだ中国側にあると考えてよいだろう。今回お手付きをした中国は次はどんな手を打ってくるのだろうか。これまでと同じように尖閣の周辺でわが国の領海や領空の侵犯を仕掛けてくるのだろうか、それとももっと強硬に挑発してくるのだろうか、あるいは1歩退くのだろうか。


安倍首相は今までのスタンスでよいと思う。アメリカの支持を確認しながら警備の強化に努めればよい。それが大人の風格である。


全くの余談だが、今中国の国民が南方週末で政治局員の頭を叩いてみれば、きっとpm2.5の匂いがすることだろう。曇っているのは中国の空だけではない、中国の政治家の目も曇っているのである!