2月5日の日経新聞を読んだら、原発の長期停止で自治体や企業が悩んでいるという分析記事が目に留まった。今日はこの問題について考えてみたいと思う。


記事によると、全国的に原発の再稼働が難しくなり、再稼働基準もまだ正式には決定していない中で、定期検査に入った後、宙ぶらりんになっている原発が多数あり、これまで定期検査や修理に携わってきた土木建築や電気工事の地元企業やその下請け企業などは仕事量が激減し、ある会社では3/4の人を切らざるを得なかったというのである。これは地元の自治体にとっては、雇用の大量喪失と税収の大幅減を意味しており、死活問題である。


1番困るのは政府の今後の原発政策がはっきりしないために、会社の人員計画が立たないことで、いつ頃からどれくらいの期間何人ぐらいの技術者や作業員を準備すればよいかが全く見えないというのである。


その結果どういうことが起きるかというと、熟練者が散逸して原発の安全確保が難しくなるという。あの笹子トンネルがずさんな保守点検で引き起こされたことを考えれば、これは深刻な事態であると言わなければならない。


因みに、2022年に脱原発を終了させることを決定したドイツでは、2012年に原子力産業界が全原発を停止するまでの期間は原子力技術の維持・強化に努めると報告書で宣言し、廃炉までにどのような人材がどれだけ必要になるかを提示したという。

わが国もこの点についてはドイツを大いに見習うべきである。


また、窮乏化する自治体の財政問題については、政府が長年に亘って国策で原発政策を推進してきた以上、原発を廃炉にするからといって、いきなり援助を打ち切るようなことはないだろうが、廃炉が完了するまで40~50年もずっと交付金を分け与えることもできないだろう。


従って、政府は現実的には期間を限定して自治体に原発交付金を提供し、その間に自治体に自主的な産業振興に努めてもらうしかないだろう。その場合、方向転換に首尾よく成功すればよいが、下手をすると北海道の夕張市のようになってしまう可能性もある。


しかし、問題は他にもある。大学の原発関係の学部の運営はどうなるのかとか、東芝や日立や三菱重工の原発ビジネスはどうなるのかといったことである。もしわが国の原発企業が人員削減に踏み切った場合には、業績不振のソニーやパナソニックやシャープの一部の社員がサムソンなどに流れたように、ウェスチングハウスやGE(ゼネラル・エレクトリック)やアレバや新興国の企業などに移動することになるかもしれない。


畢竟、原発は再稼働するにせよ、廃炉にするにせよ、大変である。私は、原発の基となる考え方を相対性理論で提示したアインシュタインがあの世で福島原発事故とその後の世界の原子力行政の混乱をどのように見ているのか聞いてみたい気がしている。