『鶏が先か、卵が先か』…教育と経済の関係を問う場合、この言葉に辿り着く気がする。換言すれば、教育によって経済が成立しているのか、経済によって教育が成立しているのか、と言う事である。以下では、冒頭の言葉に至った理由を説明する。
まず、定義を明示すると、「教育とは、ある人間を望ましい状態にさせる為に、心と体の両面に、意図的に働きかける事」とある。では、「望ましい状態」とは何か。「現在、人間が保有する知識の範囲で、教育を受ける者の適正に合った方向性を模索し、能力が発揮できる可能性を引き出し、その者が自立できる状態」等を指すと考えられる。教育は、その時代毎の客観に左右されるものだが、道徳観と言った人間性を重視する行為である事は、疑い様のない事実である。被教育者の適性を計りながら、その人間性を前提にした社会活動、経済活動を期待しているのが教育と思われる。
一方、「経済とは、人間社会における生産・分配・流通・消費等の活動をめぐる関係性の総体」とある。特に現代では、企業が高度にシステム化された資本主義経済を営み、国情として自由主義経済の形態を採っている。従って、その状態を維持する為には、個人が専門的知識を身に付ける必要がある。更に、近年のグローバル経済環境下では、カジノ資本主義に象徴される様に、金融市場が重視される状況にあり、より一層、経済動向を注視する必要性が生じてきた。つまり、社会からの要請により、個人として成長、保身をしたければ、実学的知識を習得しなければならないと言う義務感にも似た印象を与えているのが経済であり、教育にもその影響が及んでいる様に思われる。
以上の考察から、教育から経済、経済から教育、どちらの経緯を辿ろうが、そもそも人間は、時々の気分や状況によって理屈を変える性質、理想と現実の狭間で揺れ動く感情などを持つ存在であり、結局、両者の関係性については、結論の出ない話になると予想できる。ただ、私的な願望を言えば、結果として拝金主義者が溢れる、道徳観を無視した感情的に無秩序な経済は見たくない。皆さんは、両者の関係性について、どの様な前提に立ち、どの様にそれを実践されているだろうか。
