<前号からの続き>


朝、まだ陽の気配もない時間に目覚めた。

徐々に頬に冷たい空気の感触を感じながら、ゆっくり目を

開くと、隣には彼が眠っていた。それを見て、祖母が

亡くなった事を思い出した。


それより猫。昨日から猫が帰ってきていない。

祖母が無くなったことへの思いをかき消すように、私は

猫に会わなくちゃ、と思う。

ベッドをそっと抜けて、パジャマのまま家の外に出た。

外はようやく夜の気配が抜けた、うっすらとした水色の湿った

空気に包まれていて、何の物音もない。


私は小さな声で猫の名を呼んだ。名を呼ぶまでもなく、

きっと家のドアを空けた音が聞こえているはず、と思った。


もう一度、猫の名を呼んだ。そしてまた、待った。

猫の気配を探して、耳を済ませた。


そうすると、遠くからかすかな高い音が聞こえる。

鈴の音だ。聞き間違いではない。鈴の音がする。

私は鈴の音のする方向を見た。

すると、目に見える一番遠くの屋根の上に点のようにしか

見えない小さなその姿がわかった。