ある朝、私は昔の交際相手の家にいます。

彼は私が戻ってきたことをとても喜んでいます。

忙しい朝で、彼は会社に行く支度をしている最中です。

それでも、私の為に何かしようと、朝ごはんを食べるように

といってくれます。


キッチンにはなべに入ったほうれん草とベーコンのスープが

レンジにおいてあります。

彼は「今日帰宅したらいろんな話をしたいから、待っていて」

といって仕事に出て行きます。


考えてみたら私にも仕事があり、その日休むわけには行かないのです。

午前中だけとりあえず休むことにして、まずは用意してもらった

朝ごはんを食べよう、と思います。


パンを探して食品棚に行くと、デニッシュやロールパンなど、いろんな

種類のパンがつまった大きなビニール袋が何個もあります。

Costcoでかったみたいな量です。


パンを選んでいると、彼の母親がやってきます。

母親も私がもどったことをとても歓迎しています。

私がいなかった間の話などを聞かせてくれます。


話を聞きながら、キッチンの水道をひねると水がとても冷たい。

「このキッチンはお湯が出なかったんだ」と思います。


ふっと、彼のところに戻るということは昨日までの自分の暮らしを

捨てることなんだ、ということに気がつきます。

そうすると、昨日まで私の暮らしを支えてくれていたいろんな

人たちの顔が浮かんできます。


私はここにいるべきではないのでは。でも今ここを離れれば

喜んでくれた彼や彼の母親に悲しい思いをさせる。

どうやっても誰かを傷つけることになる。


夢はそこまででした。


人生のうちで、迷う選択がいくつかあります。

時が過ぎて、あの時違う選択をしていたら今はどんな人生に

なっていただろうか、と思うときがある。


でも、夢の中でさえも元にはもどらない、戻るべきでは

ない、という教訓だったのでしょうか。