「スティーブン・R・コヴィー」という人が、アメリカ合衆国建国以降に出版された「成功」に関する文献を分析して、「成功の原則」をまとめたのが「7つの習慣」です。訳された本は難しくてなかなか頭に入らないのですが、「まんがでわかる 7つの習慣」という本が出ていて、これはとても読みやすくてイメージしやすいものでした。
内容を見ると、「教育相談」とリンクする部分もあったので、自分の勉強のために、「7つの習慣」をコラムで取り上げてみようと思いました。
ちなみに、「7つの習慣」を育成するための「子ども用プログラム」ができていて自校の指導に役立てている学校もあります(知っているのは私立の学校ですが)。
□「〈前提〉問題の見方を「インサイド・アウト」に変える」 (2015・1・23)
正直に言いましょう。「私は自分の考えが一番正しい」と思っています。
ですから、意見が異なるときには、「相手の物の見方や考え方は間違っている」と思いながら話をしています。
「他人や組織、環境など自分の外側(アウトサイド)がわるいからうまくいかないのだ」といつも思っています。
私は、「腹黒い」人間なのです。
でも、コヴィーはそれではだめだと言います。「インサイド・アウト」が大切だと。
「インサイド・アウト」
自分の内面(インサイド)、つまり考え、見方・人格・動機が原則に合っているかに気を付け、行動を変えることで、結果を引き寄せようとする意識
つまり、「人格を高める行動」を習慣として身に付けることが大切であり、「7つの習慣」を実践することで人生を変えていくことができる、というのです。
私のような「腹黒い」人間の人生が変わる?、などというおいしい話があるのでしょうか。
主体的に行動したとしても「結果」が思い通りになるとは限りません。そこで、私など、思い通りにいかないと、何かのせいにしてしまいます。
コヴィーは、「影響の輪」を意識し、「影響の輪」を広げることに意識を集中するべきだと言います。そして、自分が影響できる物事に対して主体的に行動し、率先力のエネルギーを発揮すれば、周囲に変化が起こり、「影響の輪」を広げることができると言います。
「影響の輪」
自分の行動で改善できること。自分が変えられること。
ですから、七夕集会でダイエットを宣言しながら何もしていない私は、主体的ではない、ということになります。
□「〈第2の習慣〉終わりを思い描くことから始める」 (2015・2・6)
ゴールを意識していなければ、間違った方向に進んでしまいます。
「何のために行動するか」を自覚し、ブレない生き方をするために、自分が大切にする「原則」を見つけることが大切だと、コヴィーは言います。
そのためには、自分の「ミッション・ステートメント」を書くといいようです。
「ミッション・ステートメント」
ミッションとは使命、ステートメントとは宣言。つまり、自分の人生では何が大切で、自分はどうなりたいのかを宣言すること。
と言われても、すぐにミッション・ステートメントを、言葉にできるものではありませんね。
私もうまく文章にはできません。ただ、自分の子どもが殺されたときにでも相手を許せる、そんな究極の「許し」が体現できるか、が自分のテーマだと、なぜかいつのころからか思っています。
□「〈第3の習慣〉最優先事項を優先する」 (2015・2・130)
第Ⅰ領域 緊急で重要なこと (例 宿題 お手伝い)
第Ⅱ領域 緊急ではないが重要なこと(例 自主学習 運動)
第Ⅲ領域 緊急だが重要ではないこと(例 急な用事)
第Ⅳ領域 緊急でも重要でもないこと(例 ゲーム テレビ)
コヴィーは、人生を充実させるには、第Ⅱ領域に集中することが大切だと言います。
そのためには、第Ⅲ領域や第Ⅳ領域を減らすしかありません。
その意味でも、子ども自身にどんな人生を歩ませたいかを考えさせ、優先事項を優先した生活の意識をもたせることが大切になります。
そうでないと、第Ⅳ領域のゲームやテレビでスケジュールが埋まってしまうことになります。
□「〈第4の習慣〉Win-Winを考える」 (2015・2・20)
実は、私が、この「7つの習慣」を取り上げたのも、この「第4の習慣」をお伝えしたかったからです。
「Win-Win」
自分も勝ち、相手も勝つこと。つまり、問題を解決する際に、双方にプラスとなる関係のこと。
ところが、これが難しい。私など、自分に少しでも有利にしたいと「Win-Lose(自分が勝ち、相手が負ける)」の関係にしようとしてしまいます。
また、相手に気に入られたいばかりに、「Lose-Win(自分が負け、相手が勝つ)」の関係になってしまうこともあります。
「Win-Win」の関係を志向するためには、コヴィーは、「すべての人が満足することは可能だ」という「豊かさマインド」が大切だと言います。
子どもたちの「豊かさマインド」を育て、相手の利益を考える「思いやり」と、自分の利益を主張する「勇気」を、場面を通して考えさせていきたいなあと思います。
□「〈第5の習慣〉まず理解に徹し、そして理解される」 (2015・2・27)
第4の習慣は、「Win-Winを考える」でしたが、そのためにはコミュニケーションの「読む・書く・話す・聞く」の中で、「聞く」ことが最も重要なスキルだと、コヴィーは言います。
その話の聞き方のうち、最高レベルのスキルが「共感による傾聴」です。
「共感による傾聴」
相手の目線で話を聞き、心の底から誠意をもって相手を理解しようとすること。相手が「何を言ったか」ではなく、「どう感じたか」に耳を傾ける。
私は、「教育相談」をライフワークとしていますが、教育相談の世界でも、「共感」することが強調されます。でも、難しいですね。
ただ、心の声を聴くために使った時間は、「信頼」という大きなメリットをもたらし、それが「第6の習慣」につながります。「相手を理解したい」という誠意があってこそ意味があるとコヴィーは言います。
□「〈第6の習慣〉シナジーを創り出す」 (2015・3・6)
「シナジー」
個別のものを合わせて個々の和より大きな成果を得ること。
これは、コヴィーが言っていることですが…
相手との違いを尊重すると、「妥協」ではない「第3の案」が出てくる。「妥協」では、個々の力の和よりも小さな結果しか得られない。「第3の案」では、個々が能力をそれぞれ発揮し合うことで、大きな成果が生まれ、妥協よりもはるかに大きな成果をもたらす。
どんな相手に対しても違いを尊重してシナジーを創り出せる。そう信じて、「Win-Win」
になるよう、根気強くコミュニケーションをとることが大切なのだと思いました。
つい自分を抑えて「Lose-Win」になってしまうのですよね。
□「〈第7の習慣〉刃を研ぐ」 (2015・3・13)
最後の「第7の習慣」は刃を研ぐ。「日々自分を鍛え切れ味を高めていく」ということ。
コヴィーは、4つの側面から自分の器を育てることが大切だと言う。
〈自分自身を磨く「刃を研ぐ」4つの側面〉
肉体を磨く … 食事・休養・運動によって身体をメンテナンスする[←第1の習慣]
(運動、ウォーキング、ストレッチ、食事、睡眠)
精神を磨く … 心を静め、自らの価値観を深く見つめる [←第2の習慣]
(瞑想、ヨガ、読書、音楽鑑賞、自然に触れる)
知性を磨く … 知識を増やし、情報選択・収集力を身に付ける[←第3の習慣]
(価値観に合った番組、優れた本、日記、手紙)
社会性・情緒を磨く…他人との関係を強化し、心の平安を保つ[←第4・5・6の習慣]
(仕事や社会貢献で、話し合う、話を聞く、第3の案を考える)
学校教育で行っている、「知」は肉体を磨く、「徳」は精神を磨く、社会・情緒を磨く、「体」は肉体を磨く、かもしれません。
結局は、学校で子どもたちに行っている教育活動そのものが、コヴィーのいう「7つの習慣」に結び付いていると言えるのですね。
□「7つの習慣 まとめ」(2015・3・20)
このコラムでは、「カウンセリング的な考え方」「レジリエンス(折れない心)」「7つの習慣」について触れてきました。
私が今校長という役職にあるのは、「教育相談」という世界に出合ったからです。
ですから、それは、私の「よさ、強み、売り」でもあります。
ということで、この連載も20回になりましたが、内容はいかがだったでしょうか。
さて、イギリスのことわざに、
「馬を水辺に連れて行くことはできても、水は飲ませることはできない」
というものがあります。馬が水を飲むかどうかは馬次第ということです。
言い換えると、人は他人に対して機会を与えることはできるが、それを実行するかどうかは本人次第。例えば、子どもに無理矢理「勉強をしなさい」と参考書を買い与えても、やるかどうかは子どものやる気次第、無理強いするのではなく本人のモチベーションを上げて「やる気」を出させることが大切だということです。
この「やる気」を出させるときに、「教育相談」の考え方や方法は有効ではないかなと考えています。子育てを通して、これからも一緒に勉強していきませんか。このコラムにお付き合いいただいて、ありがとうございました。
*次回へつづく