【クーデター説を否定できない理由】





 先のエントリーに引き続き、検察人事を巡る内幕について書いていきますが、サブタイに用いた“クーデター“と言う決して穏やかではない表現、これは端的に言えば法務・検察側がはっきりとした意図を持って安倍政権を刺す狙いがあったと言うことです。黒川氏の定年延長と同氏の検事総長就任を官邸が渇望していたことと、それとは別の検察庁法改正、この2つは本来全く連動性はなく、仮に上程に至ったところで、施行に至るのは令和4年、黒川氏が受ける恩恵は全くないわけです。にも関わらず、この2つが連動、ないしは安倍政権がこれまでの政権攻撃にも見られたように、「身内に甘い」かのように思う、そう思い込まされているのかと言うと、それは単に本年2月20日の森法務大臣の国会答弁に端を発するのです。同日の国会答弁で、森法務大臣は黒川氏の定年延長を巡っては正式な決裁に基づいていると明快に答弁をしている。それが翌21日になると、決裁は正式な文書によるものではなく、口頭で為されたものであることが報じられる。仮に報道の通り口頭決裁が事実なら議会制民主主義の根幹を揺るがしかねない程の挙で、森法務大臣は控えめに言っても虚偽の答弁をしたことになる。私自身もこの問題を巡っては、当初、森法務大臣は辞任に値すると考えていた。


【そもそも“面従腹背”はあの人だけに限った話か?!】



だが、ここも視点を変えてみれば、黒川氏の定年延長を巡っては、それ自体が火種になりかねない以上、法制局、人事院との調整は下より、法務・検察との調整を経た上で(ここで言う、法務・検察との調整の趣旨は、稲田検事総長は自らの退任を拒否する傍ら、黒川氏の定年延長を巡っては全く異を唱えていない)閣議にかけられている(閣議にかけられたこと自体が本年が3回目になる)。そもそも決裁を口頭でなど行うはずはないのだ。これが仮に、人事を巡る反発から法務・検察が意図的に決裁を行わず、まるで官邸への逆恨みを未だに抱き続けていたとしたらどうなるか?! 構図は一変することにはなりはしないか?! 実際、2月20日の森法務大臣の答弁をまるで梯子を外すかのように覆したのは法務・検察だ。第一、クーデターであるかないかを抜きにこれほど重大な人事を口頭で行う挙に出た以上、法務・検察は同等の責めを負わなければいけない。にも関わらず、法務・検察側が何ら批判にさらされていないこと、更に5月の中旬、件の検察庁法改正案の上程を表向き官邸が崩していなかった5月12日には、決裁を巡っては議事録が残されていないことが明らかになる。これらの事実はクーデター説を補強することと、重要なことはこの動きを官邸側が事前に察知していた節があることだ。それを裏付けるのが、先のエントリーでも触れた2月17日の安倍総理大臣の答弁で、定年延長は法務省側の請願だったと強調していること。では何故、請願が口頭決裁になるのか?! 簡単です、彼らの世界にも文科省同様「面従腹背」の文化は存在するのです(笑)





【検察人脈に最も食い込んでいるのは朝日新聞】




 先のエントリーでも、法務・検察は本質において「様式美」を重んじる世界であり、それ故にこそ王道を体現する林真琴・名古屋高検検事長の将来における検事総長就任を渇望していた事実について触れたが、林氏の検事総長就任を渇望していたのは検察当局だけに限ったことではない。それは2番目の動画を見ていただければ大体の事情はお分かりになると思うが、実は朝日新聞なのである。

 そもそも、法務・検察人脈に一番食い込んでいるのが朝日新聞である事実にまず驚かれる人が殆どだと思うが、思い返して欲しいのは、竹下内閣の退陣に直結した、かつてのリクルート事件、そして金丸元副総裁の逮捕にまで至った平成4年の東京佐川急便事件、上記の動画で須田のオジキ(DHCの番組では須田にゃんと呼ばれている)






が実例として挙げたカルロス・ゴーン事件、これらを最初に報じた媒体はどの媒体だったか?! しかも須田のオジキが指摘したゴーン事件ではまるで当然のように朝日の記者がスタンバッていた。理由は言うまでもなく、朝日が最も検察情報に食い込んでいるが故に他社に先行して情報を得ることができるのである。そしてそれは、検察当局にとっても朝日に先んじて流すことで、彼らが意を代弁してくれるだけでなく「悪者はあいつらなんですよ」と言う流れを作ってくれる。その相互依存関係が、件の検察人事を巡る騒動にもやはり色濃く反映されていることと、それ以上に法務・検察が一見対極にあると見られがちな朝日と結びつくのは、検察官は検察庁法第25条においてその身分が守られている一方、独立性が保障されている機関ではなく最後は「世論」が頼みになる微妙なヴァランスの上に成り立っている。そうであるからこそ、両者の利害関係はより強固になるのである。




【林・黒川正潤論】









 朝日が最も検察情報に食い込んでいるのが朝日新聞であること、これは上記の説明や須田氏の話からもお分かりいただけたかと思う。ならば、リベラル色の強い朝日の記者が何故林氏に強いシンパシーを感じるのか、これについての疑問が残ると思うがその答えは意外なところにある。




 


 これも忘れている人は多いだろうが平成14年の名古屋刑務所における刑務官の暴力事件(初期の「相棒」で、生瀬勝久さんが演じていた浅倉元検事が刑務官に殺害されるあの一幕は、同事件が話を盛る形で模倣されたものと見られる)、この事件自体、村木事件同様、法務・検察が存亡の危機に立たされる程の一大スキャンダルだったが、これを監獄法の抜本改正に繋げる形で機器を乗り切ったのが林氏その人で、林氏はその際、リベラル派の意見を強く反映させる形で法改正に繋げているのだ。ここで言う「リベラル派の意見を反映」と言うのは、日弁連の意見も反映させたと言う意味だ。当然こうした姿勢は、リベラル色の強い朝日新聞の記者の琴線に触れないはずはなく、一部の記者が林氏に対する強い敬慕の念を抱くようになったのも、件の暴力事件がきっかけである。当時、林氏は法務省の矯正局・総務課長の地位にあった。

 同時に、日弁連、警察庁を巻き込む形での監獄法改正は、それ自体が相当な離れ業であることは言うまでもない他、法務・検察の主流が、林氏に期待を寄せる原点となったのも件の暴力事件に起因する。林氏が組織における「王道」を体現していることの趣旨もここで、それ故にこそ林氏は常に前で、ご本人も“ダークヒーロー”を自認している黒川氏は常に引き立て役になるのだ。

ちなみに、件の監獄法の改正を巡り、警察庁側のキーパーソンだった人物が栗生俊一氏で、栗生氏は平成30年に警察トップ👮‍♀️の警察庁長官にまで上り詰めた背景がある(無論、“男前の兵吉さん““僕にも言わせてよ(笑)”より階級は上です)。ならば、法務・検察の主流が林氏にも同じように花を持たせたいと渇望するのは当然の流れになる。



To be continued