人気刑事ドラマ「相棒」Season3・第11話「ありふれた殺人・時効成立後に真犯人が自首」(脚本:櫻井武晴、監督:和泉聖治)について再度書く。


 

「3日以内に身の証を立てろ!」




 監察官の大河内(神保悟志)からこう通告された警視庁・特命係の亀山巡査部長(寺脇康文)と相棒の杉下警部(水谷豊)は、小見山勇司(信太昌之)殺害事件の独自捜査に着手する。2人は早速、小見山が暮らしていたアパートで聞き込みを開始する。現場には制服姿の男性警察官が常駐していた。現場保存のためと見られる。 杉下と亀山は、管理人の女性に、殺害前の小見山に何か変わった様子がなかったか尋ねた。管理人の女性によると、ここ1ヶ月ほどは苦情が相次いでいたと言う。小見山はノイローゼの為だろうか、深夜まで大音量で音楽を聞いていたと言うのだ。安眠を妨害された住民からすればたまったものではなく、他の住民との間で諍いが絶えなかったその矢先に殺されてしまったわけだ。

 亀山が聞き込みを続けていると、伊丹巡査部長(川原和久)ら捜査一課の捜査員らが姿を現し正規の捜査を再開した。殺人は捜査一課の管轄のため、彼らが受け持つことになる。 一方、杉下は殺害された小見山の部屋を訪れ、現場に控えていた鑑識の米沢(六角精児)から殺害状況について説明を受けていた。米沢の話によると、現場から採取された指紋は被害者を含め三名。また、玄関のドアのノブと部屋のスイッチの二箇所に拭き取られた形跡があると言う。真犯人は小見山以外の二人のうちの何れかだと考えられるが、指紋を消し忘れた様子を見ると真犯人は相当狼狽していた様子が窺える。まあ、殺しが行われていること自体がそもそも尋常ならざる自体なのだが・・・・。 杉下が米沢とやり取りを続けていると、一課の三浦巡査部長(大谷亮介)が飛び込んでくる。三浦は、先に聴取した坪井夫妻には犯行当時アリバイがなかったことを杉下に告げる。杉下は、重苦しい現実を改めて突きつけられるが、不幸中の幸いと言うべきか、坪井夫妻犯人説はすぐさま否定されることになる。隣人の一人が、犯人説を否定したからだ。

 坪井夫妻犯人説を否定したのは、鈴木と言う三橋貴明に良く似たオタク系の隣人(正名僕蔵)で、鈴木の証言によると昨晩の11時頃で、小見山と見慣れぬ中年男性が激しく言い争っていたため思わず盗み聞きしてしまったのだと話す。鈴木の言うその中年男性が坪井聡子の父親(上田耕一)ではないかと直感した芹沢巡査(山中崇史)は、聴取の際撮影した写真を差し出すが、鈴木は即座にその男性ではないと否定。鈴木の証言から坪井夫妻の関与が否定されたことに、杉下と亀山はホッと胸を撫で下ろした。 被害者遺族の「復讐殺人」と言う、いわば最悪のシナリオはとにもかくにも否定されたからだ。仮に復讐殺人が事実であったとしたら、亀山は懲戒免職どころではない、職を追われてもその苦しみを一生抱えて生きていかなければならないのだ。


 一方、坪井夫妻の関与が否定されたことで捜査は振り出しに戻ってしまった。現場から採取された指紋に前科はなく、それが事件の構図をわかりにくくしてしまっていた。そうした中、杉下と亀山は手がかりを得るべく、小見山のアパートを再度訪れる。二人は鈴木と言う三橋系の隣人にもう一度話を聞いてみることにした。一度目の聞き込みには快く応じていた鈴木だったが、二度目に聞き込みとなると心なしか煩わしい様子だ。それもそのはずで、聞けば鈴木と言う隣人は弁護士志望だと言う。先日、一次試験に合格し今は二次試験を控えた大事な時期だと話す。その為、近所迷惑を顧みず大音量でレコードを流し続ける小見山には内心迷惑していたと続ける。 亀山は、殺された小見山には親しい友人や近所付き合いがなかったか尋ねたが、鈴木はそんな形跡は全くなかったと答えた。一方杉下は、交流がなかったと言うのは貴方も含めてか、と尋ねる。鈴木は心なしか一瞬戸惑った様子だったが、小見山と言う名前自体事件後初めて知ったと続けた。 隣人との交流も満足になかったとすると、例の謎の指紋は真犯人の指紋だと断定して差し支えない。もう一つの謎の指紋の主は現時点では不明だが、亀山がこのことについて問うと、杉下は心当たりでもあるのか、不敵な笑みで答える。

 二人が警視庁に引き上げると、今日も坪井聡子の両親が手がかりを得るべく、一階のロビーに姿を見せていた。この日も杉下は、守秘義務を理由に申し出を硬く拒否したが、一方の亀山は終始俯き加減で遺族を正視することができない。聡子の母はこの20年の間、後悔の念に苛まれている事があると話す。それは、あの日・あの時間、家を留守にしたこと。自分が家を空けさえしなければあのような悲劇は防げたとする後悔の念だ。無論、遺族には何の責任もないことだが、その言葉が亀山に重くのしかかる。

 一方、20年前の坪井聡子殺人事件を独自取材(社としての取材は大久保キャップに退けられている為)していた新聞記者の奥寺美和子(鈴木砂羽)は、事件後聡子の母親(吉村実子)が自殺未遂を起こした際、とっさの機転で救出した警察官のことが気になっていた。美和子の取材の結果、その警察官は捜査二係の港刑事だとわかる。そう言えば、港刑事は同事件について「刑事としての原点」だと杉下に話していた。小見山に対する怒りは遺族と同等、いやそれ以上とも言えよう・・・

 同時に、港刑事が長年抱いていた「義憤」は、捜査を思わぬ方向へと急展開させた。その港刑事に小見山殺害の疑惑が急浮上したのだ。例の三橋系の隣人が、小見山と激しく言い争っていた中年男性を目撃したと証言していたことを思い出したからだ。 杉下らの三度目の訪問に、鈴木と言う隣人は不快感を隠さなかったが、杉下が、懐からそっと港刑事の写真を差し出すと、鈴木はこの男性に間違いないと断言する。鈴木のこの証言により、同事件は警察機構全体を揺るがしかねない一大スキャンダルへと発展し始める。 つまり、現職警察官による




「義憤殺人」





の浮上だ。


 誰もが望んでいない、遺族の復讐殺人は初動捜査の段階で早々と退けられた。だが、復讐殺人の消滅は、より深刻な「義憤殺人」を浮上させることになった。指紋照合の結果、室内に残されていた謎の指紋の一つが、照合の結果港刑事のものと一致したのだ。港刑事はこれにより重要参考人の立場となり、一課に身柄が移されることになった。一方、義憤殺人の浮上はすぐさま内村刑事部長(片桐竜次)の耳にも入った。刑事部長は仮に義憤殺人が事実であれば自分も含め、上層部一同の首が飛ぶとつぶやく。


To be continued

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