羅夢の華-老人と海

こんな人と結婚したい!

と、思わせるぐらい勇敢な老人の話。




村の漁師である老人は、少年といっしょに漁に出掛けていた。


しかし、老人は運に見放され、魚が一向に釣れない。


少年の両親はそれに見かねて、彼を別の船に乗せることにする。


少年は両親に逆らえず、別の船で漁師を続けてはいるものの、

老人のことが大好きなため、再び一緒に漁に出掛けることを熱望していた。


そんな事情のため、いつものように一人で漁に出掛けた老人は、

今までの長い漁師生活の中で見たこともないほどの巨大な獲物にあたる。


その獲物は非常に頭が良く、なかなか老人の手におちない。


長い心理戦の航海の末、

老人は魚に敬意を抱き、心の友のように感じ始めるのだが、

いよいよ魚を射止めることが出来た。


しかし、その血に誘われてサメが襲ってきては

やっとの思いで釣り上げたその獲物を食いちぎっていく・・・



♪ ♪ ♪


絶対に折れることのない老人の勇敢な心に感動した。


それはもう、言葉にならないほどに。


友達のように感じ始めた魚を射止めることが出来たものの、

魚の勇敢な姿を目の当たりにした老人は

「彼を食べることができる資格のある人間は一体何人居るだろう?」と考え始める。

そして、「この偉大な魚を食べる資格のある人間など一人もいない、しかし、生活の為に殺さなければならなかった自分に罪があるのだろうか」と深く考始める。

老人が命がけで手に入れたその美しい命が、

なんの関係もないサメたちに食べられてしまうという残酷な運命。


そんな過酷な現実を突きつけられても

勇敢に立ちはだかる老人があまりにも美しかった。

カッコよかった。

こんな人と結婚したい!


切ないストーリーなんだけれども、

とっても感動できた。


何度でも読みたいと思えるような良質な本だった。


羅夢の華-砂の女



蟻地獄。その言葉しか出てこない。




趣味の昆虫採集のために旅に出掛けた男が

砂で埋もれる不思議な町にたどり着く。


そこに住む人々は、

あてどもなく降り積もる砂のために

家を押し潰されないよう毎日毎日砂掻きをしている。


そこには、夫と子供を亡くした一人の女が住んで居た。


女手一つで家を守っていくことは難しく、

町の人々は男を女の家に閉じ込めてしまう。


怒り狂う男。

罪を認めながらも男を引きとどめる女と町の人々。


男は逃げる術を考え実行に移そうとするのだが・・・



♪ ♪ ♪


過酷な環境の中に閉じ込められてしまった男の苦悩や怒りを

事細かに記した阿部氏は凄いと思われた。


しかし、

この蟻地獄のような暮らしぶりがリアルすぎて

読んでいて苦しかった。


苦しいと思わせるということは、

やはり阿部氏の文章表現がそれだけ素晴らしいのだろうと思うが、

とにかく私にはキツかった・・・


次に読む本は

爽やかなものにしたいと思った。


羅夢の華-車輪の下


『車輪の下』ってなんだろう?

好奇心からよみはじめた本



以前から気になっていました。


車輪の下って?何?


ずっと疑問に思っていました。


車輪の下だったら轢かれるしかない。


でも、本当にそうだろうか?


この意味を知りたい!


そう思ってこの本を手にしました。




☆ ☆ ☆


自然豊かな田舎育ちの少年ハンスは、天才的な頭脳を持っていた。


それ故に父親や村人達、先生に多大に期待されることとなる。


偉大な牧師になることが非常に名誉だったその時代に、彼はその出世コースに乗るための第一関門である難関校神学校に成績2位で合格する。


周囲の期待を背負い込みながら、学校に入学してからというもの、彼は文字通りの模範生となり、成績優秀な生徒となる。


しかし、こよなく詩と本を愛する学友と親友になってからは、功名心を失い、勉学に手が付かなくなり、やがて周囲の生徒や教師から厄介者扱いをされる。


叱責と虐め三昧の毎日に神経衰弱にかかり、やがて学校を退学となり、生まれ故郷に帰されることとなるが、自分自身に期待をした周囲への恐怖心と、自分自身に対する歯痒さと、失われた少年時代を偲んでは自殺を考えるようになる。


そんなある日、彼は見習い工として働くこととなるのだが・・・



☆ ☆ ☆


この本は、はじめの内、とっても楽しい気持ちで読み進んでいました。


主人公が愛する故郷の自然はとてもイキイキとしていて美しく、そこで大好きな釣りをしている様子がとても可愛らしく感じられました。


しかし、後半は彼が非常に生きることに疲れてしまったこと、そして過ぎ去ったことへの後悔、苦しみ、悲しみを抱えていることを痛いまでに感じてこられ、私の胸は引き裂かれるように痛くなりました。


私が疑問に思っていた「車輪の下」という題名であるこのフレーズは、どうやら比喩的なものであったように思えます。


たまに車輪という言葉が出てきてドキリとさせられましたが、あまりこの物語の重要性とはリンクしていないように感じました。


例えば、模範生だった主人公があまり勉強をしなくなったことを見かねて、校長先生が「そんなことばっかりしていると、車輪の下敷きになるよ」と発言します。


その残酷な言葉に対して背筋が凍るほどゾクリとさせられましたし、子供に向かってなんてことを言うのだろう?という憤慨の気持ちで一杯になりました。


人によって、この「車輪の下」という比喩的なフレーズに対する感じ方は異なってくると思いますが、私は、車輪は主人公ハンスを取り巻く周囲の期待であって、それによって、彼は押し潰されてしまったような気がしてならないのです。


だから、校長先生の言ったこの「車輪の下敷き」という言葉が滑稽に感じてしまうのでした。