大谷選手のケガに落胆する気持ちは分かる。FA時の評価も、当初の予想よりは落ちるだろう。ただ、思い出してほしい。彼が金銭面に拘る選手なら、そもそも2017年にMLBに渡っていない。プロ経歴5年で23歳だった彼は、マイナー契約しかできず、契約金も極めて低額に限定されていた。それでも、彼はFA取得を待たずにMLB挑戦を選んだ。
 渡米後すぐに靭帯を痛め(2018年6月)、2020年までは投手はお休みだったが、日ハム時以上に多くの打席にたった。2021年からは、ルール変更も手伝い本格的な二刀流が始まり、好投ばかりでなく、日本出身選手としては記録的なHR数を叩き出した。この活躍に、日米のファンは歓喜していたはず。靭帯損傷発覚で、使い過ぎ批判へ豹変するのは非合理的である。2桁勝利2桁本塁打は称賛されていた筈だが、10勝しようと思ったらそれなり登板しなければ無理。2023年に10勝以上している投手30人のイニング数や球数と比較しても、大谷選手の数値は極めて平均的。

多くの打席数も疲労を蓄積させ、右肘損傷の遠因となり得るが、多くの打席に立たずしてHR王を狙える筈もない。そもそも、投打へのフル活動は大谷選手自身の強い希望であり、ファンもその姿に大いに沸いていた筈。怪我せずにすむのが1番だけど、ここまで本格的な二刀流選手の例は極めて少なく、データの蓄積もなく、最適な登板間隔や完全休養すべき試合数などを算出できる筈もない。何なら、大谷選手地自身が極めて稀な実験例だろう。靭帯損傷の再発に、二刀流否定派はそれ見たことかと嗤うかもしれないが、これからも長距離打者として活躍し、2,3年後には二刀流にカムバックする大谷選手の姿が脳裏に浮かんで仕方ない。