二刀流で宮本武蔵以外で真っ先に浮かぶのは、ボー・ジャクソン。
自分のアメフト熱が高かった頃に、NFLで活躍したランニング・バックで、同時にMLBの外野手でもある「二刀流」だった。しかし、4年目にNFLの激しいタックルで大怪我し、プロフットボーラーとしては4年、メジャーリーガーとしては8年で引退した。両リーグでオールスターに選出された選手としては、短命なのは否めない。二足のわらじを履くと怪我のリスクも倍増するので、やはり長く続けるのは難しい印象がある。
これらの事例を知る米国人が、大谷翔平の二刀流の寿命を危惧するのは当然。NFLのようなタックルは無くとも、投手と打者を同時に行う疲労は計り知れない。ただ、大谷選手の強い希望で行われている体制なので、成績が伴っている内は他人が口出しすべきではない。再度肘を故障して、打者に専念せざるなくなるかもしれない。それでも、HR王に絡める打棒が維持できれば、彼はスターで居続けるだろう。
などと議論をする前に、大谷選手の実働年数の評価法を考えてみた。何故なら、日ハム時代は疲労を考慮して、打者としてはかなり抑制的な起用で、規定打席に達していない。MLBでも規定打席を越えたのは2021年以降。投手としては、日ハム時代はかなり登板していたが、故障もありMLBで規定投球回数に達したのは2022年が初めて。そこで、規定打席や投球回数を考慮して「実働年数」を計算してみた。
規定打席や投球回数を考慮した「実働年数」
年 | チーム | 打席 | 規定打席 | 打者実働値 | 投球回数 | 規定投球回数 | 投手実働値 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 日 ハ ム |
204 | 446 | 0.46 | 61.2 | 144 | 0.43 | |
2014 | 234 | 446 | 0.52 | 155.1 | 144 | 1* | ||
2015 | 119 | 443 | 0.27 | 160.2 | 143 | 1* | 投手三冠 | |
2016 | 382 | 443 | 0.86 | 140.0 | 143 | 0.98 | ||
2017 | 231 | 443 | 0.52 | 25.1 | 143 | 0.18 | 左足肉離れ | |
2018 | LAA | 367 | 502 | 0.73 | 51.2 | 160 | 0.32 | 右肘靱帯損傷 |
2019 | 425 | 502 | 0.85 | 0.0 | 160 | 0.00 | 右肘リハビリ | |
2020 | 175 | 186 | 0.94 | 1.2 | 60 | 0.02 | 右屈曲回内筋損傷 | |
2021 | 639 | 502 | 1* | 130.1 | 160 | 0.81 | MVP 9勝46HR | |
2022 | 666 | 502 | 1* | 166.0 | 160 | 1* | 15勝 34HR | |
計 | 7.15年 | 計 | 5.73年 | 計 12.88年? | ||||
上の表では、規定打席を超えた年を打者としての実働100%(*)、規定投球回数を越えた年を先発投手としての実働100%(*)とした。それ以外の年は、打席数や投球回数を規定数で割った値を「実働値」とした。結果、この基準では2022年迄に日米通算で、打者として7.2年、投手として5.7年実動している事になる。仮にDH打者と先発投手としての業績を独立したものと捉えるなら、計12.9年実働しているとも考えられる。なので、既に短命じゃないと思う方もいるかも。ただ、全米でスターになったのは2021年なので、これから何年二刀流を続けられるかが、米国民の評価につながりそう。