うちの部下が、この超忙しいときに、
私の年末の地獄のヨーロッパ出張の間に、
こそこそと私の裏で社内転職活動をし、
新年明けそうそうに、
人に散々お世話になった恩も忘れて、
”社内転職しま~す。これから、一番忙しいときに、前置きもなく抜けてしまって悪いけど、まあ、人生ってそういうものだから。気を落とさないでがんばってね。”
と、しゃあしゃあと言ってのけたことから始まって、
社内で大騒ぎになったお話はしましたが、
結局、彼女が何で私の部を抜けて、他の部に行きたいと決めたかという、
動機を説明するのを忘れていました。
私が、何でこの後の及んで、あんな雑用の多い部署に移りたいわけ?ときくと
もっと面白い仕事ができるから、とか、7年間も同じことをしていてそろそろ転機だと思ったから。だとか、言い訳にもならない言い訳をしていたので、どうも腑に落ちなかったのだが、
実はやっとわかりました。
本当の動機はですね、
金ですよ、金。
うちの部は、同じ会社なのに営業部と比べてあまり給与が高くないのだ。
とはいえ、管理部門としては、人事やら総務なんかと比べると高給だと思うのだが。 社外の相場と比べても、2割程度割高の給与を払っているので、文句をぶーぶー行っている割に本当に止めていく人はすくない。
というのは、他の会社にいったって、うちより給与がもらえる可能性は少ないからなのだ。
人間というのは、給与に関してはめったに自分より低い人と比べて、
ああ、私ってラッキー。
と思わないものらしい。
どちらかというと、自分より給与の高い人間と比べて、何であいつがこんなにもらっていて、私はこれしかもらえないの?と言う発想に繋がってしまう。 そこまでは、わかるのだが、ここで、普通の人間は、
ああ、あの人は学歴が違うから、とか
責任の範囲が違うから、とか、
仕事の難しさがちがうから、とか
なんとなく自分を納得させるものなのだが。
まあ、とにかく彼女は仕事柄、全社員の給与が手に取るようにわかるので、
その部署にいって、その役職につけばそれだけ給与が上がるものだ、
と思い込んでいたらしい。
要するに、いまもらっている、給与が26%アップになる、と思い込んでいたということが、ひょんなことから発覚したのだ。
思い込んでいた、というのは、彼女は社内転属ルールというものがあり、転属の際は5%以上の昇給は社長の許可なしでは認められない、ということが定められているということを、まったく知らなかったのである。 おまけに、彼女はその役職での経験がゼロなため、当然経験豊かな他の連中と同じだけの給与が最初から取れるはずなどなかったのだ。
それで、給与が大幅にあがり、仕事が一番大変になる前に、うちの部から抜けられると思い込んでいた本人は、すっかり有頂天になって、そこらじゅうに触れ回っていたのだ。
彼女のこの行動がいかに会社で大問題になったか、と言うことを一部始終傍観していた、彼女の上長は、先日、
「彼女の転属については、もう一度考え直してみたいのだが。」
と私に電話をいれてきた。 私としては、3月で仕事のピークが終わったら、この女の顔など二度と見たくもないので、
「それは困ります。これだけ大騒ぎになったので、いまさら白紙ということには。 本人もすっかりその気になってますから。 でも、業務取締役からもお話があったと思いますが、3月までは異動させるわけにはいきません。会社全体のリスクで、迷惑があちこちに及びますから。 3月になってから、正式に彼女の異動の日を決めましょう。」
と、はっきりお断りした。
一度これだけ信頼関係がこじれてしまっては、私の部下として大切な情報を流すことはできない。 よく考えてみれば、こんなお荷物をよそ様が引き取ってくれるというのだから、こんなにありがたいことはない。 はっきり言って
ババを引いた
のは向こう。
3月になったら、大幅に浮いた人件費で、やる気のある若い人材を外から仕入れようと思っている。
彼女も、世の中にそんなに自分にとって都合のいい話ばかりがころがっているものではない、ということが、今回のことでよくわかっただろうと思う。