切れちゃったのがいますよー。会社に。


彼は、Derekといって、マネージャーから最長短の2年間でディレクターにまで昇進したくらい、相当優秀で、周囲からも部下からも信望が厚く、インテリ系なんだけどユーモアにあふれ、私もよく退社後にグループでのみにいったりしてます。 いえいえ、下心があるわけではありません。彼ちゃんと結婚して子供もいるし。私は彼の奥さんのJenとも結構仲がいい。


昨年の秋くらいから、ロンドンに支店を出すというので、会社のなかで立上げ作業をおこなう人材の選択が行われた。やはりロンドン駐在というのは、みんなの憧れらしく、われもわれもとて希望者は山のようにいた。そんな中で、優秀な彼に白羽の矢があたったのであった。日頃から優秀だと評判の高い彼の抜擢は、周りからは、順当な人事とみられていた。 正式発表はなかったのだが、関係者に非公式の連絡が入った。奥さんとJenも大喜び。"今年の夏はヨーロッパよー”、と親戚や友人に自慢げに話していたらしい。Derekは、もともと働き者だったのだけど、本当に寝る間を惜しんで,事業計画の作成と会社設立の準備に駆け回ったのだった。 


最後の段階になって, そのDerekくんに悪夢のような出来事がおこったのである。彼がサンザン苦労して通した事業案が、たまたま会議に出ていた彼の一ランク上のマネージメントディレクターの、


”ふーん。面白そうジャン。なんでDerekがいくの。それ、俺が行くわ。”


の一言で、いいとこ取りされ、彼の夢は無残にも崩れ去ったのであった。 奥さんはそのニュースをきいて失意のあまり、寝込んでしまった。


さて、いよいよこのマネジメントディレクターがロンドンに向かって出発するという3月になり、ある日、彼から赴任挨拶のメイルが社員全員あてにはいってきた。 いかにして自分が抜擢されたか、無理だといわれていた、事業案を通したかを延々とつづったそのメイルにはDerekの努力については一言も触れていないじゃないか。事情を知っている私は、本当にDerekがかわいそうになった。私も結構突貫作業をしてサポートをしてあげたのに、一言のお礼もない。 ちょっと、むっとしたが、こんなヤツにハラを立てるだけ無駄、とこれ以上気にしないことにした。


と思っていると、新しいメイルの到着。


あ、Derekからの返信メイルだ。 きっと、祝辞でも送ったに違いない。 Cleverな彼だから、祝辞と一緒に、ちょっとひねった皮肉でも書いたかな?、と思ってメイルを開けてみると、


「FUCK YOU」


あわわわわ。 あて先を見ると、Employee All (社員全体)になってるじゃないのー。あー切れちゃった。プッツン。人間て、こういう風に切れちゃうのね。


それ以来、"社員全員”というあて先は、Public Relation(広報部)のクリアランスが通ったごく一部の人間でない限り使えないようになった。


え、それからDerekくんはどうなったかって?まだいますよ、会社に。でもエリートコースから正式にはずされたようです。