私が高校生(だったかな?)のとき、"飛んでイスタンブール”というが流行りました。


それ以来、イスタンブールってどんなところなのかとても興味持っていた。大学を出る頃、ちょうどミッドナイトエクスプレスという映画が大ヒットして、ミーハーの私は、ますます興味を持ったのである。主人公のちょっとアウトローっぽい(Brad Davis - James Dean の再来と謳われていたこともある美形俳優)アメリカ人の彼は、トルコに行くとドラッグが簡単に手に入る、というので、興味本位でトルコを訪れ、ドラッグをアメリカに密輸しようとして、空港のカスタムでつかまり、刑務所に送られるが、犯罪者の人権を尊重をめないトルコで不公平な裁判を受け、刑務所での長期役務を宣告される。そのうち、だんだん頭がおかしくなって、最後には重病精神病患者収容所に強制収容されてしまう。そこでおぞましい地獄のような経験をしたあと、7年くらい経って、やっと収容所の脱出に成功するという、恐ろしく、かつ感動的な映画なのでした。クラシックですが見ていない方には、絶対お薦め。


それですっかり興味を持った私は、トルコをちょっと怖いけどいつか訪ねて見たい国リストに入れました。


5年前の夏、離婚が確定して、何とか再就職先が決まり、2年半暮らしたヨーロッパを去って、アメリカで第三度目(涙)の人生を歩むことが決まったのだが、アメリカに戻る前にぜひ訪ねてみたいみなければ、ということで週末を使って、トルコのイスタンブールを訪ねることにしました。いったんアメリカに戻って就職したら、しばらくはバケーションなんてありえないもんね。


さて、場所は憧れのイスタンブール。 飛行機のタラップを降りて、まず気がついたのは空気の汚れ。私もそれまで勤めていた会社も、自国の環境規定が厳しくて、工場のひとつをトルコに移したくらい。トルコは当時(5年前、今は変わっているかもしれない)、環境保全規定が甘く、人件費も安いため、割安で製品の製造ができるということが理由だった。おまけに、トルコ人は殆どが英語を話す。これも、ビジネスには非常に有利な条件でした。


とはいえ、イスタンブールは歴史建造物が並ぶ、本当に美しい街で、わたしは一通りブルーモスクをはじめ観光ルートを一巡、すっかりエキゾチックな街並みを満喫しました。帰国前日、海岸の近くの、魚市場によって見ることにしました。。私が見たこともない色とりどりの魚が並べられている。


超食いしん坊の私の目に留まったのは、とげとげのカレイに似た魚。なぜかよくわからないが、その魚に異常な食欲をそそられた。きっと、カレイとふぐの合いの子のような、繊細でいて歯ごたえのある魚に違いない、と勝手に思い込んだに違いない。


その夜は、イスタンブールでの最後の夜ということもあって、夕食はちょっと奮発して海岸に面したおしゃれなレストランに決定。そのレストランの入り口には大きなおすし屋さんみたいな冷蔵ガラスーケースが置かれており、卑しい私、顔をガラスにぺったりとつけて物色。 そしたらあなた、例の魚が並べられているじゃないの!やったね! これを食わずしてイスタンブールを去ることはできない。


やー、おいしかったです。思ったとおりの味。


すっかりハッピーになった私は白ワインをがぶ飲みしたあと、千鳥足でホテルへの帰路についたのでした。さあ、シャワーを浴びて荷造りでもすっか、と思ったところ、


背中が痒い。うっ、足も痒い。げっ、腕も痒い。 


しまった、蚊に刺されたか?と思ってバスルームにいき服を脱ぐと、バスルームのかがみにうつったのは体中赤い斑点だらけのカラダ。 


は、は、斑点!


私の頭の中は一瞬にした、あの"ミッドナイトエクスプレス”のおぞましいトルコの精神患者収容所のシーンが浮かんだ。こんな斑点だらけのカラダで、無事空港の検疫をクリアできるわけがない。ひょっとして、緊急病院に強制収用されて、あの映画みたいに領事館にも連絡をつけられず、パニックして叫んだりして、精神病患者の収容所に送られちゃうかもしれない。こんな斑点だらのカラダで飛行機に乗せてもらえるわけがない。


思いっきりぞっとしました。


その夜、一睡もできず、どうやってこの国を脱出しようかとあらゆる思索。


冷水シャワーを浴びてみましたが、斑点は消えない。 ローションを塗りたくってみました。 げ、ますます斑点が増えちゃった。 どうしよう~!


七転八倒しながら、ない知恵を絞って思いついたのが、レブロンのカラーステイというファンデーションをべとべとに顔とクビに縫った句って斑点を隠すこと。その上に、せっかく大金をはたいて買ったスカーフを巻いみた。お、斑点が何とか隠れている。これでいけるかもしれない。


翌朝、空港に行ってカスタムを通るときの緊張といったら。心臓バクバクものでした。飛行機に無事搭乗できてやっと一息ついていたら、隣のおじさんが"アンタ、そんなにスカーフ巻いて熱くないのかね?” "東洋人に見えるけど何人なの?”と質問攻め。 頼むからほっといてくれー。 私は「Me No Speak English」といって寝たふりをすることにしました。


それから、二三日で斑点はすべて消えましたが、いまだにあの時私を救ってくれた、レブロンのカラーステイファンデーションには足を向けて寝られません。 ありがたや、ありがたや。