「ハァ、ハァ・・・ここなら、きっと美咲も納得だろ?」

僕は山の奥中まで来ていた。

「美咲が悪いんだよ、僕を見てくれないから・・・でも、これでもう僕だけ・・・2人の秘密の場所、やっと僕を見てくれるよね、美咲」

深く、深く。

簡単に人に見つからないように。

犬なんかに掘り起こせそうにないくらいに。

深く、深く、僕と美咲の愛みたいに深く。

ふか・・・く。

カツン

何かの音がした。

「?・・・なんだ?」

暗くてよく見えないが、月に雲がかからないとき、見た。

「うっうわぁぁあああああああああああああっ!!!!!!

それは、まだ腐りきっていない、死体。

不思議に異臭がしない。

鼻がおかしくなっているのか・・・それとも僕の見間違い?んなわけない。

あれは、確かに・・・。

「!?」

「いたぞっ!こっちだっ!」

「なっなんですか、あんたたち!」

「ありがとう、富山君、おかげで死体も見つかってめでたいというわけだ」

今日は谷川といい、このよくわかんないやつといい、まったく理解できない。

「誰の死体か、わかるかね」

「・・・誰なんですか?」

「朝倉、朝倉美咲と土田隆治だよ」

視界が真っ暗で、見えない。

なんだ、これ?

「じゃっ・・・じゃあこの中にいるのは誰なんだよっ!!!」

「開けてみればいいだろう?」

僕は素直に開けた。

混乱する。

なんで?この中にいるのは・・・美咲のはず。

さっき、首を絞めて、バラバラに・・・。

人間の肉ってどんな味だろうって。

美咲の肉を・・・食べた。

なのに、袋に入ってたのは


マネキン


「は・・・ははっ・・・なんで・・なんでマネキンなんか」

「富山君、君は狂ってたんだよ、よく思い出してごらん、記憶をね」

記憶・・・。

はっきりしてるようでしてない。

そうだ、僕は前に美咲と隆治を殺してなかったっけ。

覚えてないんじゃない。

思い出したくないんだ。
そうだ、あの日。

僕は殺した・・・・。


―・・・


「?いてて、頭が痛い」

夜中なのだろうか、外が真っ暗で月明かりもろくに入ってこない。

そのせいで部屋の様子がわからない。

「なんでここで寝てるんだ?」

確か、美咲が・・・と徐々に思い出していく。

確か、僕は、美咲に、何を、向け・・・・た・・?

「みっみさっ・・・・き」

目に映ったのは、視点が両方合っていない、いわゆる白目をむいて

血だらけになって横たわっている美咲の姿。

「みさ・・き・・?おっおい」

ガクガク

力のない動き。

肌は酷く冷たく、この状態から長い時間が経っていた。

そうだ、あの時。

謝っている美咲を無視してずっと、ずっと殴っていた。

痛いと言っている美咲の言葉も耳に入らなくて

ずっと・・・泣いている美咲を殴ってたんだ。

痣ができても、顔が腫れ上がっても、血が滲んでも。

そして、最終的に、そばに落ちてた包丁で・・・。

「美咲・・・」

僕は何故か涙を流していない。

そうか、僕は悪くない。

「だってぇ・・・僕を裏切った美咲が悪いんだヨ」

ははっ、と僕は笑った。

そして、隆治と美咲の遺体をバラバラにした。

「人間の肉って食べれるのかなぁ・・・猫だかなんだかの肉って泡が出てくるんだよね」

なんてくだらない独り言。

でもなんか気になった。

僕は2人の肉を少し取って食べることにした。

なんとも馬鹿らしい・・・。

我ながらとんだネタだった。

ただ、さっと油で焼くだけ、塩コショウも少し振ったけれど

いくら洗っても血の味は微妙にする。

なんか、複雑の味だった。

おいしいというよりおいしくない、おいしくないというよりおいしい、未完成のおかずのようだった。

何かが足りない、そんな感じ。

バラバラにしたはいいけど、捨てたらきっとバレるだろう。

そうだ、山の奥深くなら大丈夫じゃないだろうか。

指紋だって付いたって発見されなきゃいいんだ。

そうだよ、埋めに行こう。

夜中に車を出して山に向かった。

「美咲が悪いんだよ・・・美咲が裏切ったから」

深く、深く掘る。


さっきみたいに・・・・。


「ぁ・・・あぁあそうだ・・・僕は・・・」

「捕らえろ」

その一言で僕は逃げる間もなく捕まった。

「あ・・・あああああああっ!」

僕は泣いた。

やっと涙を流せた。

でも、なんて悲しい話なんだろう。

美咲はもうとっくに死んでて、でも美咲はいて。

本当は美咲なんていなくて、なのに美咲と暮らして。

付き合って、幸せで、これから結婚して、子供生んでもらって

この先も幸せになるはずだったのに・・・。

いつから狂ったんだろう。

この世界は、いつも狂ってる・・・。


僕は捕まったんだ。

それはわかってる。

ここが何処なのかもわかる、刑務所。

死刑、なんだろうな、きっと。

せめて、自分の死ぬときは自分の手で。

まだ、美咲に触れたときの感触を覚えてるこの手で。

「終わらせてくれ」

僕は自分の手を首に当てた。