「麻雀最強戦」という、近代麻雀(竹書房)が主催する日本最大規模の麻雀タイトル戦があります。
昨日はその予選の一つの「全日本選手権」を観戦していましたが、優勝された井上絵美子プロの強さに思わず感動してしまいました。当サイトのMリーグ観戦記などでプロ雀士をこき下ろしている俺ですが、さすがプロだなと思った時には正直にそう書きます。
昨日の闘牌の中で井上プロはすごいなと思った局面は幾つかありましたが、その中でもわかりやすかった局面が清一色を和了された場面でした。まず、井上プロが以下の手牌で清一色を聴牌されます。
待ちが何か分かりますか?答えはの双頭待ちです。
ここまでは普通に分かりますという方も多いかもしれません。しかし数巡後、井上プロはこの手牌にを引いてきます。
ツモ
さあ何を切るか。
ビギナーの方だと、待ちが分からなくなるからこのままを切って
待ちを継続、または
を切って
待ちとされる方も多いと思います。
少し慣れた方だとを切って
待ちを選択されるかと思います。実際手牌だけを見るとそれが最善手で、高目をツモればダマでも面前清一色一気通貫平和一盃口の三倍満が見えます。
ただこの手牌、実はを切ると
待ちになるという隠れ選択肢が残されています。この隠れ選択肢をすぐに見抜ける人が、慣れている方でも多くないんじゃないかと思います。形的に少し見つけにくい手です。またこの隠れ選択肢を見抜けたところで
を切れば一気通貫が消失し得点期待値も下がるので、選びにくいです。
更に言うならばを切ると一盃口まで消失するし形も分かりにくさが強まるので、
は
よりも更に選びにくいというか、打牌候補に入らなくてもおかしくない牌です。
しかしここで井上プロが選択した打牌は、まさかの打でした。実はこの時場況的に、
待ちよりも
待ちのほうが少し良さそうだったのです。といっても
が明らかに場に枯れているというほどではなく、得点期待値を加味すればそちらの待ちを選択しても全然おかしくはありませんでした。井上プロは的確に場況を読み、自身の手牌を把握して、得点期待値は下がるものの目立たずに安全度が高く、かつ和了しやすい打牌として
切りを選択したのでした。
結果、井上プロの清一色聴牌を察知出来なかったであろう他家からがこぼれ、ハネ満貫の和了となりました。
順目や得点状況など細かい点を記していませんが、それを抜きにしても井上プロの強さが際立った局面だったと思います。を切れる雀力と胆力、どちらも凄いなと思います。ましてや全日本選手権決勝という大舞台ですからね。感服します。
Mリーグでは昨年度の対局でプロ選手がさして難しくない清一色倍満の和了を和了牌が分からずに見逃すという事件があって、私的にはどんな理由があったにしろ完全にプロ失格だなとひどくガッカリしてMリーグへの興味も薄らぐほどでしたが、今回の井上プロの闘牌でまた麻雀プロへの興味が回復する思いがしました。プロなんだから清一色くらい分かって当然。その当然を平然とやってのけるプロ選手が俺は好きです。麻雀プロって凄いな、強いなと思って見れる選手が一人でも多く見つかると嬉しいなと思います。