誰もが生まれながらにして持つ、自分を癒す力 | 人生を主役として楽しむために! ドラマセラピー

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ドラマセラピスト 中野左知子 オフィシャルブログ

先週土日に神戸でドラマセラピーのワークショップをしてきました。

ほとんどの方がドラマセラピー初体験。

最初はドラマセラピーがどんなものか、という説明をします。

私がよくお話しするのは、
実際のドラマセラピーのお話ではなく、
ある男の子の「ごっこ遊び」=ドラマ的遊びのお話です。

私たちは、ドラマによって、こんな風に癒しを得ている、
しかも、それを本能で知っている、ということを教えてくれる、
素晴らしいお話なんです。


チューリップ紫ここからそのお話ですチューリップオレンジ

4歳のある男の子がトラックにひかれてしまいました。
奇跡的にも少しけがをしただけで、男の子は助かりました。
しばらく入院しましたが、彼はすぐにおうちに戻ることができました。

おうちに戻ってからしばらくして、彼は「病院ごっこ」を始めました。
男の子のお母さんは、夕食のしたくどきで、とても忙しかったのですが、せがまれて、一緒に「病院ごっこ」をすることになりました。お母さんは、今までごっこ遊びなんてしたことなかったのにとびっくりしたようです。


内容は大抵、
男の子がお医者さんやお父さん役で、お母さんが男の子の役でした。

お医者さんが、お母さんが演じる男の子に診察や治療をする場面。
お父さんが、「ごめんね、お父さんは仕事に行ってくるからね」と、寂しがる男の子とバイバイして、病院を出て行く場面。
入院中お父さんが仕事で帰ってしまったのは二回しかなかったのに、お父さんが寂しそうに出て行くそのシーンは、特に何度も繰り返したそうです。


男の子はその遊びを毎日しました。
そしてある時に、
お医者さんの役になって、男の子を演じているお母さんに言いました。
「事故にあったとき、怖かった?」
お母さんは、「怖い」という言葉を、入院中から使わないようにしてきました。
男の子に事故の瞬間を思い出させてしまうのではないかと心配していたのです。
だからなかなか「怖い」という言葉が言えませんでした。
けれども、男の子が演じるお医者さんは、何度も尋ね続けました。
そしてついに、お母さんが演じる男の子は「うん、怖かった」と言いました。

すると男の子は、プイと横を向いて、病院ごっこをやめてしまいました。
「ママ、僕に嘘ついたでしょ」
男の子は言いました。
「どうして?ママは嘘なんてついてないよ」
お母さんは答えました。
男の子はまた言いました。
「ママは、嘘をついてた。だって、怖いって一度も言わなかったもん」

そう。男の子のお母さんは、事故のあとから一度も「怖かったね」と男の子に言いませんでした。
お母さん自身もきっと、とても怖かったはずですが、それを見せてしまったら、男の子がもっと怖がると思っていたからです。
だから一度もその言葉を使いませんでした。

お母さんが「怖かった」と言うセリフを言ってから、男の子は、病院ごっこをパタリとやめてしまいました。
そして少しずつ、事故の恐怖を乗り越えていったそうです。


このお話を聞いた時、
これはまさにドラマセラピーだと思いました。

このごっこ遊びの中で、一体何が起きていたのでしょう?

男の子は、自分の気持ちをお母さんに分かってほしかったはずです。
怖かったね」という言葉を、お母さんが言ってくれることで、言葉でうまく表現できなかった、事故のときの気持ちを、ちゃんと認めてほしかったのです。
そしてお母さん自身が「怖い」と言うことにより、「お母さんだって怖いんだ」と知ることは、男の子に安心感を与えてくれたはずです。
お母さんに、「恐怖を受け入れるお手本」そして「恐怖に押しつぶされないお手本」になってほしかったのです。

お母さんも怖かったのなら、僕が怖くても当然だ。
僕は怖がってもいいんだ。
恐怖があっても、ちゃんとその感情に押しつぶされたりしないんだ。

男の子は「病院ごっこ」の中でこの気持ちを手に入れたかったのです。
お母さんが恐怖を一緒に感じてくれることが、男の子には一番必要でした。
だから、お母さんが男の子役を演じなくてはならなかったのです。

また
男の子は、自分に起きてしまったこの事故を、
監督、脚本家の立場でコントロールしながら、
「何が起きるか分からない人生の不安」や「意味が分からない恐怖」があっても、「それでも僕は十分にやっていけるんだ」と感じられるだけの体験
をしていたのです。
そして、医者や父親の役をを演じながら、「恐怖に打ち勝つだけの強さ」や「守ってくれる人」を自分に取り入れました
役割を演じるということは、自分の幅を広げることにつながります。


このドラマを、男の子が一人で作ったのです。
心理療法の知識もない、小さな男の子が、
どうやったらこの大きなトラウマから立ち直ることができるのか、直感的に知っていたのです。
これが、私たち皆が持つ、「自分を癒す力」です。
ドラマは、私たちが生まれながら自然に持つ、何よりもパワフルな癒しの方法なのです。
子供は無意識にごっこ遊びの中で、こうやって自分を癒すことができます。

でも、大人になるとごっこ遊びなんてしませんよね?
ドラマセラピーは、演劇という設定の中で、子供の遊びと同じような癒しを見つけることができる心理療法なのです。