
卵料理の腕は、半熟に焼くことができるか、できないかで決まると言っても過言ではない。
私は、卵料理を半熟にするのが得意だ。今までにたくさんの卵を半熟にしてきた。失敗したことは一度もない。卵料理を振る舞えば、みな一瞬で私にメロメロである。
さて、半熟卵というのは、つまり大人になる前の少女のようなものである。とろとろととろけ、しかし決して水っぽくない、曖昧な存在。誰もが彼女の美に見とれる。
卵が料理される上で一番輝いている時期、それが半熟である。そこから先は白身が固まり、焦げていくだけ。そうなってしまうと、もうただの干涸びた老婆である。
人間も、未熟な時期が、一番輝いていると思う。一生懸命に学び、努力している時代。
卵も人間も、その時間と熱を忘れてはならない。