その頃の僕は本当に未熟だった。どうしようもないくらい、僕は本当に子供だったのだ。
あの頃の僕にはまわりを見渡せるだけの余裕がなかったし、自分がたくさんの人に支えられているということに気付くことができなかった。
でも、ある日気が付いた。ロックオンは他人をよく気に掛けている。彼はまとまらない僕達マイスターに声をかけ話を聞き、今のような信頼し合える関係を作ってくれた。あの頃僕を一番助けてくれたのは、恐らく彼だ。他人に興味がなかった僕でも彼を見て、子供ながらに‘ああいう人になりたい’と思ったものだ。
そんなロックオンと僕が、こういう行為をするようになったのはいつからだろう。
「アレルヤ……」
白く綺麗な腕に、頭を引き寄せられた。素直に唇を合わせると、中に舌が入り込んでくる。彼の腰が、ひっきりなしに動いている。
「……今日は、随分と情熱的なんだね」
彼が鼻で笑う。足を絡ませ、彼は言った。
「悪くねえだろ?」
彼のこういう顔は最強だ。強気で得意げ。それは僕に、初めて彼を抱いた日に言われた‘気持ち良いだろ’という言葉を思い起こさせた。
そろそろ、理性が薄くなってきた。
「ごめん、動く」
短く言い、彼の上に重なる。揺さぶると、彼は強く目をつぶった。きつく締め付けられ思わず達してしまいそうになる。心地いいのだろう、彼も応じるように腰を動かした。
「あっ、ロックオンもう……」
体が強ばる。彼を抱きしめ、熱いものを吐き出した。耳許で彼が囁く。
「アレルヤ……」
いつからだろう。彼がこんな声で僕を呼ぶようになったのは。甘い声で愛しげに僕の名前を呼ぶようになったのは。
「ロックオン」
名前を呼ぶと、彼は安心したように瞳を閉じた。しばらくして、深い呼吸が聞こえてくる。彼は、眠ってしまった。
(やれやれ)
彼の隣に体を倒し、僕は微笑した。しかし僕の心は、本当はそれに反して冷たかった。
僕はもう、子供じゃない。彼と対等の立場に立ってしまったし、彼に助けられなくても一人で生きていけるくらい、強くなってしまった。
それは、愛する人を守るということ。繋がって、ひとつになるということ。何事にも責任を持たなければならないということ、人に合わせなければならないということ。苦いコーヒーを好きになること。慣れないお酒を、飲み干すということ。
僕はもう、子供じゃない。一人で強く歩いていかなければならない。たとえそれが、つらく厳しいことだとしても。好きだった季節を、今通り過ぎてしまったとしても。