その日彼は、朝から僕の部屋に訪ねて来た。
「どうしたの、こんな時間に」
 手に持っていたトーストを置き、彼に近付く。
「別に用はないけど……。駄目だったか?」
「う、ううん!」
 駄目な訳ない。
「嬉しいよ」
 そう言うと彼は、赤くなった。
「ロックオンも食べる?」
 差し出したトーストを、彼は受け取った。棚にあった蜂蜜も渡す。それを彼は、丁寧に塗った。
「好きなんだ、これ」
 微笑み、嬉しそうに言う。その笑顔はトロリと甘い、蜂蜜に似ていた。