きっかけさえあれば、言えるのに。何かいい感じになれる場所やできごとがあれば、きっと言えるのに。自分に、虚しくそんな言いわけをする。
(アレルヤが、好きだ)
 胸の内で何度も練習した言葉。しかし口に出すことが、どうしてもできなかった。
 少し離れた席からアレルヤの横顔を眺める。彼はミス・スメラギや、クリスと楽しそうに話をしている。隣に座っている刹那は、ただひたすらに冷めたスープを掬っていた。

 ◆ ◆ ◆

 「あの、ロックオン」
 食後、すっかり元気をなくした俺に誰かが言った。いや、見なくても分かる。この声は間違いなく、アレルヤ・ハプティズムだ。
「おう、どうしたアレルヤ」
 顔を上げると、彼は少しはにかみ言った。
「あ、あのね、今日の夜……」
「夜……?」
 思えば彼の方から誘われるは、初めてだった。期待してもいいのだろうか。
「……一緒にお酒、どう?」
「……酒?」
「この間ロックオンと飲んだお酒が、すごく美味しかったから。あ、忙しかったらいいんだけど……」
「いや、行くよ」
「ほんと?」
 彼は、ぱっと嬉しそうな顔をした。抱きしめたい衝動を抑え、短く返事をする。
「ああ」
「じゃあ、待ってるから」 

 ◇ ◇ ◇

 アレルヤの部屋の前、ロックオンは一人立ちすくんでいた。機会があればとか言ってたくせに、いざとなるとやっぱり勇気が出て来なかった。
(いや、こんなんじゃ駄目だ)
 ぱん、と頬を叩き、弱気な自分に渇を入れる。
「今日こそ言わないとな……」
 自分にそう言い聞かせて、俺はドアをノックした。
「はい」
 中から声がして、続けてドアが開く。
「こんばんは」
 アレルヤは屈託のない笑顔を見せた。