好きな人ができた。相手は年上の、とても綺麗な人だ。物腰が柔らかく、誰にでも変わらず優しい。
彼と過ごす日々は、僕にとってかけがえのないものだ。目に映るのは、真新しいものばかり。知らない世界や、新しいもの。色々なことを、彼は教えてくれた。
彼と付き合うことができて、本当によかったと思う。毎週の退屈な休日が、今はとても短く感じるようになった。
今週は、地上のケーキが美味しい店に来ていた。僕がケーキを食べたことがない、とこぼしたのがきっかけだった。それなら、今度の休みに食べに行こう。そう言われた時は、飛び跳ねたいくらい嬉しかった。
「アレルヤ、おまえさん何にするんだ?」
ロックオンはそう言い、僅かに首を傾けた。彼は僕の正面の席に座り、穏やかに微笑んでいる。日差しが当たり、彼の明るい茶色の髪が、きらきらと光った。
「苺が乗ってるやつだよ。すごく綺麗なんだ」
「苺って……」
笑いながら、彼が僕の頭を撫でる。その言葉の先は口を出なかったけれど、僕には充分に通じていた。
「可愛いのは、ロックオンの方だよ」
こんな、気の利かない台詞にも頬を赤らめる。僕は近くにあったメニュー表で顔を隠し、誰にも見えない角度で彼にくちづけた。
それはまだ幼く、初々しい。くすぐったいだけの、子供みたいなくちづけだ。
それでも、僕にとっては。
とても甘い、最初のキスだった。




