恋がしたい恋がしたい恋がしたい・最終回前半 涼介、退職願を学校に提出する。蜜柑の母の最期の願いを叶えるため、協力して春江を病院から連れ出す。

 

 

 酔った蜜柑は、離れようとする涼介を引き寄せ無理やり抱きつき、離れようとしません。

 (抱きつくと言うより、子猫が爪を立てて飼い主にしがみ付く、みたいな状態)

 

 

 手を解こうとしても、しがみついて離れようとしない蜜柑に辟易しながら、涼介はなんとか理性を保ちつつ泥酔した蜜柑を寝かせようと努力するのでした

 

 (この辺は、私が男性の生理を理解していないので想像でしかないのですが、教師を続ける事に自信をなくし、退職届を書いた直後でかつ真面目な涼介にとって、酔って正体を無くした酒癖の悪い(?)女子とそんな気分になれないかな?と推察します)

 

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 その頃、藍は雨に打たれながら、行く当てもなく1人街を歩いていました。

 

 

 一郎とも連絡を絶ち、涼介は蜜柑と部屋に戻り、自分は完全に1人になったんだと、言いようのない寂しさに打ちひしがれた藍は、ふと目の前に涼介が乗っているのと同じ車種の黄色い車が停まっているのを見つけます。

 

反射的に、藍はその車が涼介の車だと思い込み、その車が青信号で発車した直後、反射的にその車を追いかけます。

 

 

 好きな男というより、迷子の子どもが親を見つけたかの如く、必死な表情で車を追いかける藍。

 

 

 しかし、停まって窓を開けると、そこに乗っていたのは、涼介とはまったく別人の男でした。

 

 

 怪訝な表情のその男は、しかし藍の美貌を確認すると「良かったら乗ってく?」と声をかけます。

 

 

 がっかりして思考停止の藍は言われるがまま、これまで何度も繰り返してきた通り、ナンパされた男の車に乗ってしまうのでした。

 

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 ファミレスで夜を明かしている渉は、目の前で寝ている織江の姿をスケッチしていました。

 

 色々な客が出入りしている深夜のファミレスで、たどたどしい手つきで、ただ心穏やかに織江を描いていく渉。

 

 

 雨の中、街はしっとりと夜が更けていきます。

 

 

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 ラブホテル?に連れ込まれ、ベッドに押し倒される藍。

 

 

 体をまさぐられる間、藍は無意識に涼介が言っていた事を思い出していました。

 

 

 「俺たちは、自分たちの生き方に自信が無くなって、慰めてくれる人も居ないから、

 

 二人ともただ肌寄せあって眠る事で、寂しさを忘れようとしていただけだ…。

 

 

 だけど…もう…こんな事してちゃいけない! 二人ともダメになる…」

 

 涼介が二人の未来のために、この不毛な関係を清算しようと言ってくれたのを思い出し、強くなりたい!と決意した事を思い出します。

 

 

 そして、その男を突き飛ばし、部屋を飛び出します。

 

空しい関係を拒否し、寂しくても、人恋しくても、自分の真の幸せを掴むため雨の中1人で街を歩いて行く藍。

 

 

 

 自分の両親と適切な信頼・愛情関係を作れなかった、いわば愛着障害を抱える藍にとって、涼介は藍の人生で初めて出会った信頼できる親友であり、かつ家族のような心を許せる存在だったのだろう、と感じました。

 

 心寂しい時に近くにいた異性との友情を、愛情だと勘違いして恋人になってしまう事は、良くある、と思います。

 (私も似たような経験あり)

 

 

 恋がしたい、と思っている時は、その勘違いが特に起きやすいのかもしれません。

 

 

 藍にとって不運だったのは、家族との愛情関係に恵まれず、愛情飢餓感を強く抱えていた事でしょう。

 

 だから、涼介との関係が友情だと思っていても、1人で立っていられなくて執着してしまったのだと思います。

 

 

 執着と、愛着は似て非なるもの。

 

 執着関係には見捨てられ不安が伴いがちですが、愛着の関係には不安はありません。

 

 

 藍はその不安を抱えつつも、今度こそ自分自身を裏切らないように、今は1人で耐える事を選んだ、私は思いました。

 そしてそれは、同じく全てを失ったように見える一郎もまた、似たような気持なのかな、と思いました。

 

 

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 翌朝、蜜柑が目を覚ますと、涼介は蜜柑に引っ張られ蜜柑のお腹に頭をのせた状態で寝ていました。

 

 

 昨夜の記憶もなく、何事が起ったか分からず、驚いた蜜柑は、涼介を突き飛ばして自分がどこにいるか確認します。

 

 

 自分が服を着ている事を確認し、自分の身体に触れていた涼介を不信の目つきで睨む蜜柑。

 (よもや、自分が涼介を離さなかったとは、夢にも思っていない蜜柑💦)

 

 

 涼介、必死に昨夜の状況を説明し、蜜柑に何も変な事はしていないと弁明します。

 (蜜柑に昨夜の事を聞かれても、蜜柑のプライドを傷つけないよう、酔いつぶれた蜜柑に告白された事は言わない優しい涼介)

 

 

 蜜柑、意識がはっきりするにつれ、自分が酔った勢いで涼介の家に来たことを認識すると、ひたすら涼介に謝って、大雨が降っているにも関わらず、涼介が差しだす傘も借りずに部屋を飛び出します。

 

 

 そしてマンションの玄関脇に、雨の中、藍が震えながら膝を抱えて座り込んでいるのを見つけるのです。

 

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 その後、謹慎明けで学校に出勤した涼介は、教頭から、担任を外れるよう校長から指示があった事を告げられます。

 

 それを聞いた涼介、準備していた退職届を出します。

 

 

 

 驚いた教頭は、どうして?別に辞めることはない、と理由を尋ねますが、涼介は

 

 「なんか今回の事で…教師を続ける自信を失くしてしまって…いい機会だし、今後のこと、一度ゆっくり考えたいんです。」

 

といって、職員室を後にします。

 

 

 教室に戻った涼介は、生徒達を前に、退職することを告白した挨拶の中で、自分が彼女たちにとって決していい教師じゃなかった事を謝ります。

 

 加えて、今なお世界のどこかで起こっている紛争などを取り上げ、以前生徒達から”受験科目でもないのに、どうして歴史の授業を受けなきゃならないの?”と聞かれた問いに答える為、歴史を学ぶ意義について話をします。

 

 涼介は、戦争や文化的・思想的対立など、諍いや争いがおこる事で得をする人間達によって、人類は争いの歴史を繰り返した、と言います。

 過去に起こった歴史的事実を知り人間がこれまで行ってきた過ちを理解する事で、二度と同じ事を繰り返さない様に歴史を学ぶ必要があるんじゃないか、と生徒達に訴えます。

 

 

 「俺たちは、俺たちの素敵な未来の為に、歴史を学ぶ必要があるんだ。きっと」

 

 そう言って涼介は、静まり返った教室を後にするのでした。

 

 

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 家に帰った涼介が寛いでいると、文平が不意に訪ねてきます。

 

 

 どうしたんですか?…と驚いた涼介ですが、「ちょっと用があって…」といって硬い表情の文平は玄関に立ったままです。

 

 

 涼介は?となりながらも、文平を部屋の中に招き入れます。

 

 

 すると、「一発殴らせろ!」と言って、突然涼介に殴り掛かってくる文平。

 

 

 「何するんですか?!」と文平を睨む涼介に、

 

 

 「これくらいしないと、気が収まらないんだ! 蜜柑ちゃんは…彼女はアンタの事が好きなんだ!」と吐き捨てますが、

 

 

 「知ってます」と涼介が冷静に答えると、えっ!と文平は絶句します。

 

 

 「この前、本人に告白されました…といっても、彼女ベロンベロンに酔っぱらってて、何も覚えてないですけど…」

 

 

 と言われた文平は、涼介に蜜柑が告白できた事にほっとして

 

 

 「まあ私も、酔った勢いで彼女に好きだって告白したんですけど……。それで、なんか、諦められたんですけどね」

 

 

 と白状し、台所にあった缶ビールを貰って飲み始めたのでした。

 

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 涼介の駐車場でうずくまり震えていた藍を自分の自宅に連れ帰った蜜柑は、暖かい寝床を用意し、藍を介抱していました。

 

 蜜柑は、一晩中激しい雨に打たれ熱を出して寝込んでいる藍に食事を作り、藍が目覚めるのをまちます。

 

 (結局、藍は頼れる人が涼介しか思いつかず、涼介の所に舞い戻って来た?)

 

 

 まる一日寝込んだあと熱が冷め、やっと起きられるようになった藍は、蜜柑に世話になったお礼を言い、涼介の事が好きなんでしょ?と、蜜柑が今まで決して認めなかった問いかけをします。

 

 「はい…」と今度こそ素直に、蜜柑は自分の気持ちを認めたのでした。

 

 

 「やっと、認めたあ。」と、藍は素直になった蜜柑に微笑みながら言うのでした。 蜜柑も


 

 「藍さんだって、涼介さんがいないと困るくせに…」

 

 といい、藍が寝ている間に藍が涼介に書いて未投函だった、ずぶ濡れの手紙を呼んだ事を謝ります。

 

 そして、藍にどうして涼介に会いに来なかったのか尋ねます。

 

 

 藍は仕方なく、マンションの前で涼介が蜜柑を部屋に連れて行くのを見てしまった、と白状します。そして、涼介の家で一晩明かした蜜柑に、想いが届いて良かったねと言います。

 

 

 ところが、昨夜の記憶がすっかり飛んで何も覚えていない蜜柑は、先日藍に見つかった時のように、酔って涼介の家に押しかけ、泥酔のあげく勝手に眠り込んでしまっただけだと告白します。

 

 

今度こそ本当に軽蔑されてしまったに違いない…と落ち込む蜜柑。

 

 

 「彼(涼介)は、そんなこと気にしないと思うよ」

 

 と、涼介の懐の深さと、蜜柑の告白を見ていた藍は、蜜柑の心配が杞憂であることを告げるのでした。

 

 

 

 その後藍が蜜柑の用意した食事を食べ、体調が回復してきたのを確認すると、蜜柑は藍がマンションに滞在している事を涼介に連絡します。

 

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 夜が明けて、ファミレスで眠り込んでいた渉の携帯電話が鳴り、渉の書いた自分の絵と渉の寝顔を眺めていた織江は、驚いて起きた渉に電話に出るよう促します。

 

 

 そして、通話を終えた渉に、もう帰りましょう、と告げます。

 

 店の出口で帰り際、「この絵、貰っていい?」と渉に問いかけ、握手をしながら

 

「頑張ってね。私も頑張る。」と渉に語り掛ける織江。

 

 

 雨の中一晩、見知らぬ人々が交差する人間模様を見ながらファミレスで悩める夜を共有した渉と織江は、店の前で別れ、それぞれ、別の方向へ帰って行くのでした。

 

 

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 退職願を出し時間ができた涼介は、自分の今後について考える為、図書館に行って、職業選択関係の本を借りる事にします。

 

 書庫から本を何冊か借り、館内で読もうと席を探していると、一郎が本を読んでいるのに出くわします。

 

 二人は図書館を出、いつもの牛丼屋に行って近況について話をすることにします。

 

 涼介は学校を退職して、一郎と同じプー太郎(無職)になったことを報告し、一郎も又、特にする事もないから、こうして図書館で読書に耽ったり、映画を観たり、サウナで夜を明かしたりして、気の向くまま人生の休暇を過ごしている事を話します。

(以前より穏やかに世の中を観れるようになった一郎に涼介は気づきます)

 

 

 涼介は、その後藍に会えたか聞きますが、一郎は

 

 

 「もう、僕なんかに会ってくれませんよ…。

 

 以前、彼女が僕に、”一生僕の側にいて、ずっと愛し続ける。決して嫌いになったりしない”

 

 って、言ってくれたことがあったんですけど、僕は彼女の言葉を信じる事が出来なくて…。

 

 それどころか、酷い事を言って彼女を傷つけてしまって……。

 

 だから…これは(彼女を傷つけた)罰なんですよ…」

 

 

 と言って、一郎は寂しそうな笑顔を浮かべながら、牛丼屋を後にするのでした。

 

 

 その表情から、涼介は一郎が未だ藍を掛け替えのない存在だと思っている事を確信します。

 

 

 一郎と別れてからすぐ、蜜柑から電話がかかってきます。

 

 行方不明だと思われていた藍が、実は蜜柑の家にいると聞いて、涼介は蜜柑のマンションに向かいます。


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 藍がようやく起きられるようになって、蜜柑とダイニングで話していると、玄関のチャイムが鳴ります。

 

 藍の熱が下がったので、涼介に電話でここにいる事を話した、と蜜柑は白状します。


 

 涼介は蜜柑の部屋に入って来て、藍の姿を確認すると、

 

 

 「どこにいるんだろうと思っていたら、まさか蜜柑ちゃん家にいたなんて、意外で驚いたよ…」

 

 

 と、藍と蜜柑に話しかけます。

 

 

 「蜜柑ちゃん、何か誤解してるっていうか……今あなたに会っても、私何もできないし…」と、藍が話し始めた時、

 

 

 「さっき、一郎さんに会ったよ。」と涼介は、一郎との会話を思い出しながら藍に告げます。

 

 

 藍は驚き、一瞬嬉しさで顔が輝きますが、自分はまだ自身の目標も、夢もない、恋する以外何もできない女だし…と一郎に会いに行く資格がないと躊躇します。 すると、涼介は

 

 

 「恋だけに生きちゃ、いけないのかな?!」

 

 

 と、率直な言葉を藍にぶつけます。

 

 

 自分の目標を見つたり、夢に向かって頑張るのも尊いけど、愛する人を見つけて、その人と共に幸せに生きていく事に心を砕くのも、生き方としてありなんじゃないか。

 

 愛し合う二人で助け合いながら、それからゆっくり自分の道を探しても良いと思う

 

 と主張するのです。

 

 

 そして、一郎もまた藍を想っているのに、藍にあう資格がない…と苦しんでいた、と伝えるのです。

 

 

 「(今なら)まだ図書館にいるかも」と、涼介は藍を急き立て、蜜柑も

 

 「そうですよ。自分の気持ちに正直になった方が…」と背中を押して、二人は藍を送り出すのでした。

 

 

 去り際、藍は涼介に

 

 「涼介に出会えて本当に良かった…(途中略)

 

 涼介って、全然偉そうにしてなくて、先生っぽくないから色々話しやすかった…。

 

 涼介の生徒達は幸せだね。これからも、いい先生でいてね!」

 

 

 と笑顔で部屋を飛び出して行きます。

 

 

 退職届を出したことを言い出せないまま、「うん…。」とかろうじて微笑む涼介。

 

 

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 藍は急いで涼介たちがいたという図書館に向かい、一郎を探しますが、一郎はそこにはおらず、藍は一郎に会う事ができませんでした。

 

 

 しかし、藍の表情は、涼介の言った ”恋だけに生きてもいいんじゃないか?” と言葉のお陰で、もはや暗いものではなくなっていました。

 

 

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 二人きりで、テーブルを挟んでお茶を飲んでいる涼介と蜜柑は、先日の事もあって少しだけギクシャクしていました。

 

 

 すると蜜柑の電話が鳴り、母・春江が入院している病院から、春江の体調が急変したので、急いできて欲しいとの連絡を受けます。

 

 

 「どうしよう、お母さん死んじゃうかも…」ショックで泣きそうになる蜜柑を気遣い、涼介は一緒に病院まで付き添う事にします。

 

 

 病院に着いて暫くすると、春江は意識を取り戻します。

 

 

 涼介が、急いで医者を呼びに行こうとすると、春江は

 

 

 「待って!」と言い、涼介を止めるのでした。

 

 

 代わりに、蜜柑と涼介に向かって

 

 「管に繋がれて、こんな所にいるのはもうイヤ。」

 

 と懇願するのでした。

 

 

 春江のために、何ができるか考えていた蜜柑は困惑しますが、春江は

 

 

 「蜜柑…。あなたの勤め先が見たい。連れて行って」

 

 

 と言うと、涼介は意を決したように「手伝うよ」と言い、蜜柑と共に春江の願いをかなえる為、病院に無断で外出させよう、と促します。

 

 

 ナースステーションで、夜勤の看護師に何か必要な物があったら買い物のついでに買ってきます、と話をしながら、出口への視線を逸らしつつ、

 

 

 涼介は春江が乗る車いすを隠れながらゆっくり押して、病院から無断外出する事に成功し、蜜柑が働く新宿のホテルに向かうのでした。

 

 

 最終回・後半に続く

 

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 一郎から以前「僕に恋する以外、何ができるの?」と言われて傷つき、自身の夢や目標が無い事を恥ずかしいと思ってしまった藍に、涼介が放った「恋だけに生きちゃいけないのかな?」の一言が大きかったと思います。

 

 

 自分だけが相手に執着し、恋愛依存になってしまうのは、思考停止して自分の人生を放棄し相手に振り回される惨めな人生になりがちですが、

 

 

 お互いに相手を真剣に想いあって、その相手と共に人生を真摯に生きていくことはとても尊いことだと思います。

 

 

 時には孤独にも耐え、自分の人生を大事にしながら誰かを真摯に想う事は、自身の人生から逃げているわけではない、という事なのでしょう。

 

 

 一人でも生きていける覚悟ができた人だけが、二人でも相手を尊重して生きていける、という事なのだと思います。

 

 

 人生を変えるドラマ59に続く