恋がしたい恋がしたい恋がしたい 第10話・後半 蜜柑、酔った勢いで涼介に会い、不覚のまま告白してしまう。 教師として生きていく事に自信を無くした涼介、退職願を書く

 

 藍は、就活を本格的に始めました。

 

 しかし、特に資格や専門的知識もなく、大学卒業後に親のコネで就職した大きい会社をすぐ辞めてしまったこと、その後の職歴に一貫性が無く(エステティシャンやキャバクラ等)長続きしていない事もあって、苦戦を強いられます。

 

 面接でも、通り一辺倒の返答しかできなくて、面接官から

 

 「こんなにお綺麗なんだから、結婚して永久就職なさったらいいのに」

 

 

 と、正に今ならセクハラ発言で炎上しそうな対応をされてしまうのでした。

 

 

 落ち込んだ藍は、カフェで休憩しながら、最初涼介に電話しようとしますが、直ぐにやめ、代わりに自分自身を励ますため、涼介に感謝の手紙を書き始めます。

 

 

 その手紙の中で藍は、離れてみて涼介が如何に大きな存在だったか思い知らされた、と綴ります。

 

 そして涼介に、職探しをする中で、自分が如何に何の取柄もない人間だったかを思い知らされた、と続けます。

 

 そして、寂しさからの逃避だったにせよ、涼介があれほど自分に親身に優しくしてくれた理由を尋ねるのです。

 

 

 「ねえ、あなたは、私のどこを好きになったの?  こんな何もできない女のどこを好きになってくれたの?

 

 ……気づいてる? あなたはきっと他の人より、何倍も優しい人なんだよ…。

 

 沢山の人を幸せにする事ができる人なんだよ。」

 

 と書き記し、藍はその手紙を涼介のポストに投函する事にします。

 

 

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  文平、パン屋の夢が実現しそうもない事に鬱々としながら、部屋に帰ってきます。

 

 すると、ちょうど渉から電話が鳴り、文平は急いで出ます。

 

 渉は、先日一郎のホテルの部屋で文平が打ち明けた秘密を聞いて、自分の気持ちを話そうと思っていました。

 

 

 「あの…父さん…この間話してたこと、俺もう気にしてないから。小さかったから良く覚えてないし…。」

 

 と、罪悪感をずっと抱えて生きて来た文平に対し、自分への虐待を忘れていいよと話すのです。

 

 

 (この二人のエピソードを見るにつけ、脚本家・遊川氏の感覚も私に似て、人というものは、親→子への想いより、子→親への愛の方が、より無償の愛に近いのではないか、と思ってしまいます)

 

 

 感動して言葉に詰まる文平ですが、牛丼屋を辞めた後の話を渉に聞かれると、思わず部屋の隅に紐で束ねている(廃棄のため?)パン屋開店関連の書籍類に目が行き、うん大丈夫…、と曖昧に答えるしかないのでした。

 

 

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 黄田家では、織江が家出から戻って来た後、何事も無かったように以前のような生活に戻っていました。

 

 織江はベッドに横になりマネの絵を眺めつつ、渉から教えて貰った、世界一長い単語”愛らしく”の単語を書いた紙を見つめながら、渉との穏やかな心地よい会話を思い出していました。

 

 

 ところが、織江の夫・雪夫は、何を勘違いしたのか、最近まで指一本触れようともしなかった織江に、夜の営みをしかけようとしてきます。

(愚かにも、織江が何に悩んでいるのか真剣に向き合う事もでず、ベッドで構ってあげなかったから、妻が拗ねたと勘違いした?)

 

 怒った織江は、やめてよ!と拒否しますが、織江の怒りの理由を勘違いしている雪夫は手を緩めようとしません。

 

 

 仕方なく織江は、起き上がって

 

 「知ってんのよ! あなたが浮気してるってことくらい!!」

 

 と叫び、唖然としている雪夫を残して寝室を飛び出してしまいます。

 

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 文平との電話を切った渉は、今朝の継父との喧嘩のせいで、家に帰るのを渋っていました。

 

 すると、今度は公衆電話から電話がかかってきます。

 

 不思議に思いながら電話に出ると、織江からの電話でした。

 

 

 頑張ってるけど家族となかなか上手くいかなくて…などとお互い上手くいっていないと伝えた後、一瞬の間が空いて、二人とも

 

 「会いたい…」と言葉にしてしまいます。

 

 

 立場も年齢も超えて、魂が惹かれあった高校生男子の渉と、40代主婦の織江は、待ち合わせた場所で雨が降って来た事から、青春ドラマのように手を繋いで二人で走り始めます。

 (嫌らしい感じが全くしないのは、織江も渉もお互いに悩みや感性を理解したい、と思っているから?でしょうか)

 

 

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 文平に告白された蜜柑は、完全に酔いが回った状態で、結局涼介のマンションに辿り着きます。

 

 

 階段に座り込んでいたら退職願を書き終えた涼介がマンションから出てきて鉢合わせます。

 

 ちょうどその時、藍も涼介への手紙を投函しようとしてマンション脇まで来ていました。

 

 

 蜜柑の気持ちを知っている藍は、とっさに二人に見られないよう物陰に隠れます。

 

 

 完全に酔っぱらっている蜜柑は、いつもの悪い癖で怖い物なしの大胆女子になっていました。

 

 

 凄んだ目でドタキャンした涼介を睨みながら、自分の気持ちを滔々と語り始めます。

 

 

 「私はなあ……楽しかったんだよ。アンタの車を洗ったり、ポストを拭いたり、部屋を片づけたりするのが…」

 

 蜜柑が何を言っているか理解できず、当惑する涼介。

 

 

 「あ~~、変な女だと思ってるんだろ~?! …アタシはね、アンタからあの靴を貰った日、誕生日だったんだよ。 

 

 前からずうっと欲しかった靴だから、凄く嬉しくて。

 

 しかも家に帰って箱の中開けたら、バースデーカードが入ってて…一生ずっと暮らしていこう、って書いてあってさ。

 

 自分に言われたみたいに嬉しくなっちゃって…。勝手なこと言ってるって思うかもしれないけど、なんか、運命っていうか…感じちゃって…」

 

 

 そして、蜜柑は涼介に告白します。

 

 「だから…好きなんだよ。 アンタの事が、大好きなんだよ。好きで好きで好きで、たまんないんだよ」

 

 そして、言いたい事を言って安心したのか、酔いが回って気持ち悪くなり、地面にしゃがみ込んでしまいます。

 

 

 藍はその間、二人を離れた所から見つめていました。

 

 

 そして、酔った蜜柑を涼介が介抱し、部屋に連れて行く様子を見て、もう自分は涼介に甘えることはできない……と思ったのか、雨の中歩きながら、携帯電話に登録された涼介の番号を消去してしまいます。

 

 

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 文平、雨が降っている中アパートに帰って来ると、玄関のドアポストに何かが挟まっているのが見えます。

 

 

 不思議に思って、その封筒を開けてみると、中には300万と記帳された紫村一郎の通帳と、印鑑が入っていました。

 

 メモのメッセージには、一郎の直筆で

 

 

 「素敵なパン屋を作って下さい」と書いてありました。

 

 

 先日の一郎との会話を思い出し、文平は一郎が自分に無償で金を工面してくれたことを知ったのでした。

 

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 雨が激しくなり、なんとか蜜柑を部屋に運び入れ、ソファに寝かせ一息ついた涼介ですが、酔った蜜柑は涼介に抱きついてきます。

 

 

 第10話 終わり

      

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 今回一番心に残ったのは、文平に対する一郎からの300万のお金とメッセージのエピソードです。

 

 

 前回、一郎がパン屋のことを、”美味しいものを作って、皆を幸せにすることができる素敵な仕事”と評していた事からも分かるように、本来の紫村一郎という人物は、「有名になってチヤホヤされることが大事」な人ではないという事が分かります。

 

 

 この物語はフィクションですから、一郎は実在しない架空のキャラクターです。

 

 でも実際に、現実でも希望者にお金を配って人に喜んで貰おうとする某社長さんがいるように、

 

 人間が幸せに生きるのに必要なのは、地位や名声やお金を沢山手に入れる事ではなく、

 

 限りあるお金や自分の時間をどう使って自分自身や周りの人々を喜ばせ大切にし、結果として信頼関係を築き感謝されるか

 

 にかかっているのだと思うのです。

 

 

 そういう意味で、一郎や藍に足りなかったのは、一番身近な人(家族・親)からの真の関心や愛情だったのでしょう。

 

 

 でも、そういう場合でも、自分で自身を少しづつ満たしてあげる事はできる、と思うのです。

 

 

 誰かに好きになって貰うと、手軽に承認欲求を満たすことができますが、結局相手に依存する事になってしまいます。

 

 

 雨に打たれながら藍が街を彷徨う姿は、捨て猫が親を探しているように見えて、一番切ないシーンでしたが、

 

 

 本気で自分と対峙し幸せの方向を見つける為にも、1人で頑張る事が必要な時って、ある、と痛感したのでした。

 

 

 人生を変えるドラマ58に続く