恋がしたい恋がしたい恋がしたい 第10話前半 蜜柑、母から自分の父親との馴れ初めを聞き、涼介に告白したいと思う。涼介、藍と正式に別れたあと、教師としての自信を無くなってしまう。文平、蜜柑に呼び出され、愚痴られている最中に蜜柑に告白する

 

 涼介と別れ同棲中の部屋から退去し、一旦は一郎のいるホテルに向かった藍ですが、部屋のチャイムを鳴らそうとして思いとどまり、ロビーに降りて手紙を書く事にします。

 

 

 手紙には、一郎に出会えて本当に幸せだったこと、

一郎に”(僕に)恋する以外何ができるの?”と言われて凄く苦しかったこと、

でも今はそう言われて本当に良かったと思っていること、等を書きあげました。

 

 

 そして、「きっと今の私は、誰と付き合っても上手くいかないと思う。

自分に自信が持てて一人でも生きていける人間になるまでは、誰も幸せにすることはできないと思う」

 

と綴り、さようなら、お元気で、と手紙を書き終え、ホテルのフロントにその手紙を預けて立ち去るのでした。

 

 ホテルから外に出て、携帯電話を取り出して連絡先から一郎の電話番号を消去する藍。

 

 

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 その頃、蜜柑は母・春江が入院する病室で付き添っていました。

 涼介達とドライブに行った際に取った記念写真を見ながら、ストーカー紛いの行動をし、部屋に勝手に侵入していた事を告白した事を思い出し、きっと軽蔑されてしまったと、自己嫌悪に陥る蜜柑。

 

 気が付くと春江が目を覚ましていて、あっと思ったのも束の間、春江は蜜柑が持っていた写真を取り、ビリビリに破いてしまいます!

 

 「何すんの!」と蜜柑が怒って抗議したら、

 

 「だって、(写真見てたって)もう諦めたんでしょ…」といいつつ、

 

 「好きな男がいたら……私みたいに押し倒しちゃえばいいのよ」と、春江は初めて過去について大胆な告白をします。

 

 

 「お母さん、そんな事したの!…」と驚く蜜柑ですが、気を取り直して

 

 

 「もう…いいかげん、私のお父さんについて、話してくれてもいいんじゃない?…」

 

と、蜜柑は今まで知りたくても聞けなかった、自分が産まれた経緯について問いただすのでした。

 

 

 春江はおもむろに、蜜柑の父親が自分が勤務していた病院の医者だった事を告白します。

 

 医者としても腕が良く優秀で、人としても患者に優しく素敵な人で大好きだった。

 

 ただ既に既婚者で妻子もおり、親の病院を継がなきゃならなかったから、その人とは添い遂げる事はできなかった、と。

 

 

 春江は蜜柑に話を続けます。

 

 

 「だから私、彼にお願いしたのよね。あなたの子どもが欲しいって。子どもさえいれば、もう後は何もいらない、って…

 

 私は、あんたに父親のいない、寂しい想いをさせてしまったけれど、私はそのこと、全然後悔して無いよ…。

 

 だって…あなたは私の宝物だから!」

 

 そう言って、春江は泣いている蜜柑を抱きしめるのでした。

 

 そして、「でもね……正直言って、今のアンタはあんまり好きくない」と蜜柑に、臆病すぎて後で後悔しないよう、体当たりで相手に気持ちをぶつけて後悔なく生きていって欲しい、と話をするのでした。

 

 

 (正直言って、私は不倫は大嫌いです。相手の家族の心や関係性を破壊する行為だと思っています。

 ただ、春江の場合は、きっと相手の家族を壊そうとも考えていないし、秘密を墓場まで抱えて行くと思われるので、それは養育費等お金の見返りを求めない、覚悟ある純愛なのかもしれないと思ったのでした。

 ただ、こういったガチの日陰の恋愛ができる女性は、前回も書きましたが、そうはいない…と感じます。)

 

 

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 黄田家に戻った織江は、何も言わずに散らかったリビングや台所のゴミ拾いを始めますが、皆、織江がいなかった事の不便さに文句をいったり、何か食べたいからご飯を作って、と要求するばかりで、誰も自分の事を心配していなかった事実を突き付けられ、改めてショックを受けてしまいます。

 

 特に夫・雪夫は「いったい何処で何してたんだ。離婚する、とか馬鹿みたいな訳わからない事言って…」

 

 と、織江の気持ちを無視した発言で切れてしまい、

 

「文句ばっかり……!誰か、心配したくらい、言えないの?!」

 

 と叫んで、ごみの入った袋をその場に放り投げてしまいます。

 

 

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 渉は、朝帰りした後さらに大学進学をやめる、と宣言した事によって、母親と継父に説教を受けていました。

 (これは……さすがに渉が悪いですね。余りにも本能的で軽薄な結論の出し方で、親の方に同情してしまいます…)

 

 渉の継父は、

 「大学は行っとかないと、後で後悔するよ。うちの会社にも高卒の社員で、学歴コンプレックスのあるヤツがいて大変なんだ…」

 

 と善意でアドバイスするのですが、それに対しても

 

 「あなたの生きがいって何ですか? 出世? それって結局人からどう見られるかだけ気にしてるって事ですよね? 」

 

 と失礼な返しをしてしまい、カッとなった継父は思わず、渉の頬を叩いてしまいます。

 

 

 「ごめん…つい」と手が出てしまった継父は謝りますが、渉は初めて継父に怒られた事に驚き、部屋を出て行きます。

 

 (渉が反抗して、本気で怒ってくれる継父で良かった…と思いました。失礼な事を言って叩かれたとしても、(勿論暴力なので程度問題だとは思いますが)それは必要な家族のコミュニケーションで、怒りを表現できるというのは、ある意味誠実な関係なのだと思います)

 

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 藍は就活をしながら、結局ファミリーレストランでウェイトレスのバイトをする事になります。

 

 オーダー待ちで、店内でぼーっと立っていると、客の一人が声をかけてきて、

 

 「ねぇ、君だったら、こんな所よりもっと時給出すよ?」

 

 と言って、キャバクラの名刺を出してきます。

 

 

 藍は、その名刺を眺めながら

 

 「…こんなことしか、できないのかな?わたし…」と客の顔を覗き込みます。

 

 「ねえ、私に他にできることって、無いのかな?」と客に訴えるように言うと、

 

 客の男は”なんだよ、この女…”と、気味悪がって席を立ってしまいます。

 

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 その頃、文平は、辞めた牛丼屋の前で佇んでいました。

 

 すると、前を通りかかった一郎が文平に気付き、声をかけ店に入る事にします。

 

 

 お互いの近況報告で文平は一郎にパン屋の事を話し、資金面で折り合いがつかず、諦めるしかないと話します。

 

 

 「残念だな……。美味しいものを作って人を幸せにするって、素敵な仕事なのに」と、一郎は残念がります。

 

 

 何を始めるにも先ず先立つものがないとね……また牛丼屋に戻ろうかな……と諦観の表情で応える文平は、一郎の近況を訪ねます。

 

 一郎は、特にやる事も無いので、映画館で映画見たりサウナで夜を明かしたりしてますよ、と答え、店を後にします。

 

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 藍が去って気が抜けたようになった涼介は、新学期が始まり普段通りの生活に戻りましたが、授業中、生徒達のやる気のなさや態度の悪さにイラついてキレてしまいます。

 

 すると、夕雨子や他の生徒達が

 

 「歴史って何のために勉強するのか、わかんない!…大学入試のための勉強なら、私には必要ないし」

 

 といって、歴史に必要性も感じないし興味もない、だから授業に真剣に向き合えないと騒ぎ始めます。

 

 

 少しヤケクソになっていた涼介は、じゃあ、お前たちが興味ある事を言ってみろ、と言い、生徒達を課外授業に連れ出してしまいます。

 そして生徒をグループに分け、電車に乗ってそれぞれが興味ある所に行って、何を見て来たのか、それを見て何を感じたかレポートにまとめて書いてくるように言い、途中で完全自由行動にしてしまうのです!

 

 

 学校に戻って、保護者から課外授業について知った教頭から叱られた涼介に、その後一郎から電話がかかって来ます。

 

 一郎からの電話で、藍が一郎の元に戻らず、一人で頑張って自分なりの生き方を模索しようとしている事を確認した涼介は、ふと蜜柑のストーカー告白を思い出し、電話をかけます。

 (涼介、実害が無かった事もあり、蜜柑に純粋に興味を示し始めた?)

 

 

 嫌われてしまったと思っていた涼介から着信があった事に驚いた蜜柑は、どこか食事にでも行かない?と誘われた事で舞い上がります。

 

 

 涼介が車で迎えに来てドライブに出かけますが、緊張している蜜柑は、どこか行きたい所はないかと聞かれても遠慮してしまい何処でもいいです、と答えます。

 

 

 仕方なく涼介は、先日藍と行った海辺のお洒落なレストランに行く事にするのでした。

 

 

 到着したレストランで、周りの様子から蜜柑はそこがカップルに人気のレストランである事を察します。

 

 涼介も「以前来た時は、雨の酷い天気で、こんなに綺麗な景色じゃなかったんだ」と言います。そして、藍と別れた事を告白します。そして、

 

 

 「あの…このあいだ、俺の家に忍び込んでストーカーみたいな事してたって言ってたけど、それってつまり俺の事を…」

 

 

 と、蜜柑が自分に好意を持っているのかを、確かめようとします。

 

 

 ところが、折角、涼介がきっかけを作ってくれたにも関らず、蜜柑は靴を貰ったお礼を渡したいと思っていたら、偶然涼介のお土産袋が入れ替わって鍵を手に入れてしまった為に、軽い気持ちで家に入ってしまった、

と涼介の質問に対し完全否定してしまうのです(T0T)

 

 

 涼介は、自分の期待が勘違いだったと納得しますが、蜜柑の表情が暗い事に気が付いて訳を聞くと、蜜柑は母・春江がガンで先が長くない事を打ち明けます。

 

 

 病気で同じように母を早くに亡くしている涼介は、蜜柑を励まそうと、景気よく遊びに行こうと提案するのでした。

 

 

 横浜・みなとみらいのミニ遊園地に連れていかれた涼介は、蜜柑の好きなジェット・コースターや、メリーゴーランド等に乗り込んで、二人で本当に楽しい時間を過ごします。

 実は絶叫系の乗り物に弱い涼介は、ヒーヒー言いながらも、心から楽しんでいる蜜柑のために付き合い、二人で楽しくゲームセンターで楽しく過ごします。

 

 

 飲み物を手に休憩しながら、蜜柑は久しぶりに男の人と遊園地に来た事、この数年間一年間恋人ができなかった罰として、クリスマスに一人でここに来ていた事を告白し、二人とも今までで一番打ち解けて自然に話をする事ができたのでした。

(かなり自虐的な蜜柑の習慣に、驚かない涼介も実は蜜柑に似ている性格?)

 

 

 帰りの車から蜜柑が降りる際、涼介は

 

 「蜜柑ちゃんはまだ俺より幸せだよ…。 俺なんか、おふくろが死んだ時まだ高校生だったから、死んだ母親が何考えていたのか全然分からなかったし、話す時間もなかった。それに比べたら、蜜柑ちゃんはまだお母さんと話す時間があるよね。お母さんがして欲しい事をしてあげられる時間もあるよ…」

 

 と蜜柑に声をかけます。

 

 お礼を言って車を降りた蜜柑でしたが、急に春江の言ったことを思い出して、必死に涼介の車を追いかけます。

 

 そして、もう一度だけ会って欲しい、と頼み、驚きながらも涼介は”いいよ”、と返事をするのでした。

 

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 ところが翌日涼介は、教頭から、生徒に自由行動をさせてしまった処分が決まるまで謹慎を言い渡されてしまい、その間自宅待機を命じられ、ショックを受けてしまいます。

 

 同じ頃、蜜柑はハッピーモードでお弁当を二人分作っていましたが、涼介から急に今日行けなくなったと電話を貰いドタキャンされた事で、天国から地獄へと叩き落されたような気分になってしまいます。

 

 涼介から、職場で色々あって一緒にいてもきっと不愉快にさせてしまいそうだから会えないと説明されたにも関らず、やっぱり、ストーカー行為なんかをする自分とは会いたくないんだ…、と落ち込んでしまった蜜柑ですが、やけくそで文平に電話して会う事にします。

 

 

 文平は蜜柑から電話を貰い嬉しくなりますが、缶ビール片手にずっとグダグダと自分に愚痴を言い続ける蜜柑にカチンときてしまい、

 

 「いつまでも、ウダウダ愚痴ってんじゃあないよ。だからダメなんだよ!」

 

と勇気が無くて告白できずにイジイジ悩み続けている失態を批判します。

 

 

 まさかの文平から、厳しい一言を言われた蜜柑は、思わず

 

 「なんで、なんで、あなたにそんな事まで、言われなきゃならないんですか⁉」

 

 

 と逆切れしますが、意を決した文平は

 

 

 「それは…、それは私が…、あなたのこと好きだからですよ!」

 

 

 と蜜柑に告白し、びっくりして固まっている彼女をよそに、蜜柑が涼介の為に作った弁当を食べきり、その弁当箱を彼女に返してその場を去ってしまいます。

 

 少し酔っぱらっている蜜柑は、自分が誰かに想われていたと初めて知って、茫然と公園で立ち尽くすのでした。

 

 第10話 前半終わり

 

 

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 今回は、怒りにまかせたとはいえ、やっと蜜柑に告白できた文平に溜飲が下がる想いでした。

 (良かったね~文平さん、と素直に思えました)

 

 

 この年になっても思うのは、誰かを好きになった、って告白できるには勇気と資格が必要だということです。

 

 勇気が必要なのは相手に拒否される可能性があるから、資格というのは他にパートナーがいないという事ですね。

 

 

 最近の若者(特に男性)が男女交際に消極的なのは、恋愛強者じゃない普通の人達が、その拒否られる恐怖感(というか呪い)に耐えられないからじゃないかと思うのです。

 

 でも現実では、同性同士の告白など特別なケースを別にして、振られた事で名誉を棄損されたり、命を取られるわけでもないし、何より相手が想いに答えてくれなくても自分の気持ちを伝えられた事は、自分の自信に繋がると思うのです。

 

 

 蜜柑の母・春江は、告白しても恋は成就しなかったけれど、娘という愛を育てる事を達成できた女性だと思います。

 

 

 そういう意味で藍が、自信を持てるようになって1人でも生きていけるようになるまでは、誰と付き合っても上手くいかない、と気付けたのは、凄い事だと思いました。

 

 私がその事に向き合う事ができるようになったのは、恥ずかしながら40歳を過ぎて、元夫と別居してからだったからです。

 

 

 ただ、藍は家族の絆が薄く、自分のパートナーに家族というか親の役割を求めている傾向(愛着障害)が強いので、なかなか依存的な感覚からは解放されにくいのではないか、と思ったのでした。

 

 一郎もまた、復讐してやると思いながら親に執着して生きて来たキャラクターなので、パートナーに親の役割を求めている所があり、本当に二人は良く似ているな、と感じます。

 

 

 ただ彼も、1人でもしっかり生きていける術を模索し始めた、という意味で、全てを失ったように見えて、実は幸せに向かって歩き出したのだと感じたのでした。

 

 

 人生を変えるドラマ57に続く