恋がしたい恋がしたい恋がしたい 第9話・後半 一郎を救い出し、宿泊先のホテルへと連れ帰った涼介たち。偶然フロントで蜜柑と織江に出くわし、涼介が藍を呼んだ事で、第一話の牛丼屋メンバーが全員揃う。 一郎を励ますために、皆隠していた秘密を1つずつ告白していく。

 

 一郎を助けようとして雑踏の中に飛び込んだ涼介と文平は、一郎を庇った事で逆に群衆の男たちに殴られてしまいます。

 

 文平が殴られるのを見て、我慢できずに渉も乱闘の中に飛び込んでいきますが、制服をきているにも関わらず渉も殴られてしまいます(×0×;)

 

 

 「子どもに何するんだ!」と文平と涼介は叫び、今度は渉を守るために乱闘騒ぎは大きくなってしまうのでした……

 

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 蜜柑と織江がホテルに戻りフロントで部屋の鍵を受け取ろうとすると、聞き覚えのある涼介の声が聞こえてきて左方をみると、憔悴して顔に傷を負った一郎に付き添うように、涼介、文平、さらに制服姿で傷を負った渉もいて驚きます。

 

 (織江も思わぬところで渉と再会し、2人とも驚きながら顔を見合わせます)

 

 怪我が酷い文平と渉を介抱するため、一郎の滞在する部屋に集まった涼介たち6人。

 

 

 蜜柑は文平の傷に絆創膏を張り、織江は渉の傷口を消毒している間、一郎は、ベッドの上で座り込んで宙を見つめており、

 

 

 涼介は

 

 「大丈夫ですか。 何か飲まれます?」

 

 と声をかけますが、一郎は微動だにせず反応もしません。

 

 

 困った表情の涼介ですが、ドアベルが鳴り席を立とうとすると、慣れた手つきの蜜柑が 

 

”私、出ますよ”と素早く立ち上がりドアを開けます。

 

 

 すると、藍が決まり悪そうに立っていました。

 

 

 「どうして…?」と驚く蜜柑に、涼介は後方から

 

 「あ…、俺が呼んだの」と言って藍を ”入れよ”と部屋の奥へと手招きします。

 

 

 涼介、蜜柑、藍、一郎、文平、織江、そして渉と、第1話以来、初めて牛丼屋のメンバー全員が一堂に集まりました。

 

 

 「さっきから何も喋んないの…」と困ったように藍に言う涼介。藍は仕方なくベッド脇まで移動し、

 

 

 「これから……どうするつもり。こんなバカな事してどうなるの?」と話しかけますが、相変わらず言葉を発しない一郎にイラついた藍は、

 

 

 「何とか言ってよ!」と促します。

 

 

 「……何を言えばいいんだよ。どうすりゃいいんだよ……。

 

 教えてくれよ、これからどうやって生きていけばいいっていうんだよ」と涙声で辛うじて言葉を発する一郎。

 

 

 それに対し涼介は

 

 「俺たちみたいに、普通に生きていけばいいんじゃないのかな…。

 

 

 あなたが、自分の小説が盗作で、世間に嘘をついてた事を負い目に感じて、罪を償わなきゃって想い、良く分かりますけど、誰だって、人には言えない秘密の1つくらい持ってるんじゃないですか?

 みんな、そうやって隠して生きてるんじゃないかな……?

 

 

 そう云って、涼介は皆が1つずつ今まで誰にも言えなかった秘密を告白するっていうのはどうか、と提案します。

 (文平は、えっ!と声を上げますが、すぐ涼介が話し始めた事で何も言えなくなってしまいます)

 

 

 「じゃあ、いいだしっぺの俺からー」と涼介は、昨日藍に内緒で、元婚約者レイ子と会っていた事を告白します。

 

 藍を見つめながら「ごめんね。内緒にしてて…」と謝る涼介。

 (藍も一郎に会おうとしていたため、涼介の事を責められない…)

 

 

 そして涼介は、自分と結婚しなかったレイ子は、新しい仕事を見つけて、とても輝いてて、人間としても凄く強くタフになっていた、と話すのです。

 

 「そんな彼女を見て、僕は無茶苦茶嫉妬しました…。自分が恥ずかしく情けなく思えて…」

 

 と本音を暴露します。

 

 さらに、決して口にしない筈だった、教員採用試験でのカンニングまで告白してしまいます。

 

 

 「だから俺は、本当は教師になんか、なる資格がない男なんですよ」

 

 一郎の気持ちがなんとなく分かると言うより、一郎を非難する資格なんかない人間なんですよ…と言うのでした……。

 

 (涼介の余りにも突然の、しかもガチな懺悔に一同驚き、一瞬静まり返ります)

 

 

 続いて織江は、24歳のスチュワーデス(フライト・アテンデント)と偽り、2ショットダイヤルで知り合った男の人と電話で話をしてました、と告白します。

 

 24歳と詐称した理由は、自分が編集者としてバリバリ活躍していたのにできちゃった結婚した年齢だったからという事と、本当に結婚して良かったのかずっと悩んでいたから、と告白します。

 

 さらに、娘(夕雨子)を産んだ時も、

 この子のせいで自分の人生滅茶苦茶にされた、ってずっと思っていた、と。

 

 

 自分ばかり損していた様な気になっていた、でも自分の選択が間違っていなかったって思いたかったから、自分なりに愛情を注いでいたつもりだったけど…、と自分の子育てが失敗だったのでは、という不安を抱えつつ、誰にも相談できなかった…と告白しながら、2ショットダイヤルの相手だった渉と目が合うのでした。

 (涼介のカンニングより、”自分の子どもを産んだ事を後悔していた”、というのは重い告白だと、私自身は思ってしまいました…)

 

 

 

 続けて渉も、30歳のデザイナーとして嘘をついて、2ショットダイヤルに登録していた事を告白します。

 

 デザインに昔から興味はあるけど、特別な才能はないし、成績も良くないから美大とかにはいけないし……と進路の事に悩みつつも、気が付いたらつい嫌らしい事を考えてしまうという、思春期特有の異性への性的関心からも自由になれないという葛藤を話すのでした。

 

 藍は「ごめんね、あの時は嘘ついて…」と、渉に織江の身代わりでブラインドデートした事を謝るのでした。

 

 

 

 渉の告白が終わったあと、文平は、「私、偽善者なんですよ」といきなりの自虐発言をします。

 

 

 周りが”?”となっている間に、自分の酒癖の悪かった事が離婚の原因だった、と話す文平。

 

 

 「そんな事で…」と涼介がフォローしようとしますが、脱サラして元妻の言う通りに牛丼屋を始めたけれど、経営が上手く軌道に乗らなくてイライラしている時期、酔って子ども(渉)が聞き分けのない事を言ったりした時に暴力をふるっていた、(一度ではなく何度も)と情けない過去を告白するのです。

 

 

 「辛い事があると、すぐお酒に逃げて…」と、過去の自分を懺悔する文平。

 

 

 「……だから、優しくて真面目な人間なんかじゃないんですよ。

 そうじゃないって自分が良くわかっているから、優しいふりをしているだけ」と言って渉を見つめる文平。

 

 自分の両親の離婚理由を聞かされて、驚いて固まる渉。

 

 

 藍は、「そんな事言ったら、私の方が酷いと思う」と言葉を続けます。

 

 「一郎が(盗作をしていた)ニセモノだったって知った時、実はホッとしたの。

 

 ああ、別れて正解だったって。その時に気付いたの。私は自分さえ良ければいい人間だって…。

 

 自分に自信がないから、一緒にいて見栄えの良い男の人を選んで、

 自分が本当はダメでどうしようもない女だってこと隠そうとしていただけなの。

 

 

 最低よ……私は。」と涼介を見つめながら告げる藍。

 (涼介、そんな事ないと、首を横に振ろうとする…)

 

 

 蜜柑はそれを聞いて、

 

 「それを言ったら、私は犯罪者です」と爆弾発言をします。

 

 

 驚いている皆の中で、涼介の方を見ながら「私…わたし、実は泥棒みたいなことしてて…」

 

 と、合鍵事件の事を告白するしかないと蜜柑は覚悟します。 ところが、

 

 

 「もう、やめてくれないかな‼」と、一郎が蜜柑の罪の告白を止めます。そして、

 

 

 「あなた達…、いったい何やってんですか! 

 

 さっきから…こんな……こんなどうしようもない男、励まそうとして、

 

 何でこんな大事な話しちゃうんですか?!

 

 僕、人前で泣くなんて、したことないんですから………

 

 勘弁して下さいよ……」

 

 

 と皆の思いやりに泣きながら、これ以上の皆の秘密の暴露を止めたのでした。

 

 

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 その後夜が明け、涼介たちは解散し、それぞれ自分の居場所に戻っていきます。

 

 最後に2人残った涼介と藍ですが、涼介は藍に残って一郎に付き添うように言います。

 

 「彼は、今1番君にいて欲しいと思うから……。

 

 帰れるようになったら、帰ってくりゃいい」

 

 

 そういって涼介は部屋を出て、一階にいる蜜柑に追いつき、”送ってくよ”を声をかけます。

 

 一郎と藍を二人残したことに驚き心配して、”いいんですか?…”と声掛けする蜜柑。

 

 

 涼介と二人きりになり、蜜柑は心を決め、先ほどできなった罪の告白をします。

 

 「あの……以前、皆で買い物に出かけた時、偶然涼介さんと私の荷物の袋が入れ替わってしまって…。

 

 その中に涼介さんの家の合鍵が入っていて…。

 

 悪いとは思いながらも、何回か、その合鍵を使ってマンションの部屋に入ってしまいました。

 

 ストーカーみたいなこと、してました。ごめんなさい…」

 

 

 思いもよらない告白に、驚いて何も言えない涼介。

 

 蜜柑は自分が軽蔑された…と思い、

 

 「本当にごめんなさい…」

 

 と消え入りそうな声で呟いて、その場から走り去るのでした。

 

 

 今まで、部屋がきれいに片づけられたり、車が洗われたりしていた不思議な事件の真相が分かり、暫し茫然とする涼介…。

 

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 ホテルを出た織江と渉は、近くのバス停でバスを待っていました。

 

 

 「さっきの話、ご両親に話してみたら…?」

 

 そういって、織江は渉を励まそうとします。 そして、渉の肩を抱き抱えると

 

 

 「怖いのはあなただけじゃないのよ…私だって、この先の事考えたら、怖いの」

 

 と自分自身を励ますように声をかけるのでした…

 

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 1人マンションに帰った涼介は、暫くして藍が早く帰って来た事に驚きます。

 

 

 「だって…私がいても、してあげられる事なんてないし…」

 

 と、誰よりも自分を一番助けたかった…という自分の弱い気持ちを自覚した事で、冷静に一郎を見つめる事ができるようになった藍は答えます。

 

 

 

 その藍の表情を見た涼介は、

 

「俺たち……別れよう」と藍に告げます。

 

 

 藍も、黙って頷きます。

 

 

 「俺たちはきっと、自分が1人ぼっちの様な気がして、誰も慰めてくれないから、

 

 肌寄せあって傷を舐め合っていただけだ…。」

 

 

 藍も、「そうすれば、寂しさ忘れられたしね…」と答え、涼介はさらに力を込めて

 

 

 「でも、もうそんな事してちゃいけない。 一緒にいればいるほど駄目になる!」

 

 と藍に伝えるのでした…。

 

 

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 藍は荷物をまとめて、涼介の部屋から出ていきました。

 

 

 心細そうな表情で、街を歩いて行く藍。

 

 

 藍との婚姻届けを燃やす涼介。

 

 

 二つの恋を終わらせた涼介の姿が、そこにありました。(第9話 終)

 

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 下記の第9話のナレーションは、涼介の声で伝えられました。

 

 

 

 人間は寂しさと一緒に生きていかないといけない運命なんだ…

 

 だから、何かに頼らざるをえない。

 

 何かによっかかっていないと、生きていけない

 

 もしかしたら、俺たちは、人を愛していると言いながら

 

 好きな人に寄っかかって生きているだけかもしれない…

 

 

 一緒にいる事で、傷を舐め合い痛みから逃げていたら、自分自身の生き方を見つけられず、

 駄目になってしまう、という事に気づいた涼介と藍。

 

 

 一郎を励ますために、自分の狡さと弱さを告白した彼らの、真っすぐな生き方が美しいと感じました。

 

 

 そして、人は結局、他人ではなく、自分自身に嘘をつき続けるのが難しいのだと確信しました。

 

 

 織江の告白については、潜在意識で夕雨子と気持ちが伝わっている可能性があり、心理学的に心配な部分を感じてしまいますが、母親として見たくない本音を認めた事で、きっといい方向に動くだろうと予想できます。

 

 

 この9話を観る度に、心が浄化されるような気持になります。

 

 人と会うのが嫌になった時は、この回を観て、心を柔らかくする様にしています。

 

 

 人生を変えるドラマ56に続く