恋がしたい恋がしたい恋がしたい 第9話・前半 レイ子に再会した涼介は、どうして教師になったのかを聞かれ、返答に窮してしまう。 蜜柑は、母の容態が悪く、あと数か月の命だと知りショックを受ける
マンションの前でレイ子とばったり再会した涼介は、逃げ出したレイ子を必死で追いかけますがタクシーで逃げられてしまいます。
ショックで意気消沈しながら部屋に戻り、”遅かったね、何かあった?”と心配そうに問う藍に、クラスで色々あった事を説明しようとすると、さっき逃げたはずのレイ子から電話がかかってきます。
”おまえなぁ‼……”と急に逃げた理由を聞こうとして、涼介は藍が目の前にいる事にハッとし、ちょっと学校で色々あって…”と、別の部屋へ移動して、小声で話し始めます。
レイ子はすぐさま、声の調子に気付いて
「誰か側にいるの?」
と聞きますが、婚約者に逃げられた被害者で、別に新しい彼女がいても後ろめたくない筈の涼介は、何故か藍が部屋にいる事を隠すのです。
(実はまだ涼介の中では、レイ子との事が終わっておらず元カノになっていない?)
折角会いに来たのに、どうして逃げ出したのか涼介が聞くと、レイ子は会おうかどうか迷っていた所に突然涼介が現れたから、びっくりしてパニックになってしまったと言い訳します。にもかかわらず
「そういえば、今度涼介結婚するんだって?」
と、レイ子は涼介に拘りなく聞いてきて、涼介をドギマギされます。
焦った涼介ははぐらかし、とにかく一度会ってしっかり話そうと、翌日に会う事を約束するのです。
電話を切り、ベッドに座り込み、まだ捨てていないレイ子との婚姻届けを見つめる涼介。
涼介の考え込むような様子を、隣のリビングから藍は不安そうな表情で見つめるのでした……。
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蜜柑はその頃、救急車で担ぎ込まれた春江が通う病院にいました。
春江がガンを患っていること、本人には告知したこと、そして余命が長くてあと半年しかないことを主治医に告げられ、大きなショックを受ける蜜柑。
家族に最初に話をしたかったが、蜜柑にだけは話して欲しくない、と頑なに家族に告知する事を拒否していた事実を医者から聞かされたのでした。
春江の寝顔を見ながら、何も知らず、能天気な母親だと、自分の恋愛事で精一杯だったことを不甲斐なく思う蜜柑…。
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家を飛び出しホテルに滞在していた織江は、同じころ雪夫から電話を貰っていました。
「いったい何処にいるんだよ~」
と出ていかれて初めて、織江が怒っている事を自覚した雪夫に対し
「本気だから、私……。うちには帰らない。」
と告げるも、
「いったい何が不満なんだ‼」と逆切れされ、反省していない雪夫に怒りは収まらず、反射的に電話を切るのでした。
ホテルの窓から外を見つめる、心細そうな織江の姿が、大都会の景色の一部になっていきます…。
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青木家では、普段渉に気を遣っている義父も、さすがに渉がラブホの前で補導された事をたしなめていました。
(私は、この場合実母がしっかり息子に向き合うべきで、再婚相手に言わせる事か?と見ていて疑問に思いました)
文平が自分を全く責めなかったこと、ただ自分がやりたい事をやると宣言した事を思い出していた渉は、母親が
”聞いてるの?! お父さん今大事な話をしているのよ!”と、母親というより再婚相手の妻として振る舞う言葉に切れてしまい
「父親づら、しないでくれるかな。 俺、アンタのこと、一度も父親だと思ったことないから。」
と告げ、部屋を出ていくのでした。
(これは、母親がやってはいけないコミュニケーション例だと思います。 思春期の自分の息子と直に対峙するのを避け、継父という微妙な関係の他者に「お父さん」として説教させるのは、息子に対して無責任な行為だと私は思うのです。この母親のせいでギクシャクした関係ができ、家族の関係が悪くなっている可能性すら感じてしまいます…。)
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翌日レイ子と待ち合わせした涼介は、カフェで久しぶりに互いの近況報告をします。
まず、パリコレのモデルになる、という夢はやはり無理そうだということ。
”(やっぱり無理だった)だろー?!”と無謀な計画で渡仏したレイ子を諫めようとした涼介ですが、レイ子は熱意を買われてモデル事務所での仕事を見つけて採用され、憧れていたパリで通訳兼スタッフとして働く事になり、明日渡仏する、と報告され驚く涼介。
そしてレイ子は、涼介との婚約を破棄したのは、自分が山椒魚(井伏鱒二の有名な小説)になっていたと気づいてしまったからだと話します。
体が成長してしまい、出口から出られなくなり、後悔しながらただそこに留まるしかないしまった山椒魚のように、自由に行動できない人間になっていた、流されて婚約したことを後悔していた、と。
自分の本音に向き合い、このまま結婚したら後で絶対後悔すると思ったから、涼介に迷惑をかけるのを承知で一方的に婚約破棄したと、レイ子は心から謝るのでした。
そして、生き生きとした表情でレイ子は、勇気を出して仕事を辞めてパリに行って良かった、と話します。
最初は皆知らない人ばかりで不安だらけだったけど、やっぱり躊躇せずに動いて良かった。
涼ちゃんに色々迷惑かけたけど、本当に良かったと思っている、と外国生活への不安よりも希望にあふれたレイ子の顔をみて、涼介は悔しそうな表情になっていくのです。
そのため涼介は、「俺もお前との結婚がダメになって良かった」と本心とは言えない発言をしてしまいます。
レイ子が「運命の彼女に出会う事が出来たし?」というと、
”ああ、そう”と、順風満帆な状態である事を無理して強調する涼介。
別れ際、じゃ、元気で、と挨拶してレイ子と見送ると、途中で振り返ったレイ子が、ふと
「ねえ、涼ちゃんは、どうして教師になったの? 本当に教師になりたいと思っていた?
本当にやりたい事ができたら、今からでもやってみなよ!
…きっと人生って、いつからでもやり直しがきくんだと思う」
余りにも眩しい、自由なレイ子に、涼介の笑顔は引きつってしまうのでした。
家に帰り、レイ子の名前が書かれた婚姻届を、やっと破る事ができた涼介。
失恋したショックというより、自分とは違い、相手は新しい未来に向かって夢と希望でいっぱいである事を、全然喜べていない涼介なのでした…。
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ちょうど同じ頃、藍は(涼介に内緒で)一郎のマンションを訪ねます。
そこは既に引き払っていて、管理人から一郎は逃げるように先日引っ越していった事を知らされます。
本屋を回っても、”もう先生とは契約を解除しましたので…”と冷たい言葉が帰って来るだけで、一郎の消息は全くうかがい知ることは出来ません。
本屋に並んでいた、一郎の作品がどんどん回収され破棄されていく様子を、藍は茫然と見つめるしかありませんでした。
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所変わって、春江の入院する病院では、蜜柑が春江の側に付き添っていました。
春江の意識が戻り、慌てて主治医を呼ぶ蜜柑。
そして同時に、春江にこんな大事な事を隠していた事を怒るのです。
”泣くなよぉ”と謝りながらも、蜜柑に「アンタ、人生楽しんでる?」と問う春江。
答えあぐねている蜜柑に、若いんだから色んな事にチャレンジして、色んな人と会って、いっぱい笑って、泣いて、食べて、沢山失敗しなさい、とアドバイスする春江。
「そしたら、私がいなくなっても、あなたは1人でなくなる」と祈るように蜜柑を見つめるのでした。
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その翌日、涼介は新学期が始まり、担任クラスの生徒達と進路面談をしていました。
進学する気も目標もなく、飄々とダラダラと当てもない話をする女子生徒に”そんなにのんびり構えてていいのか?”と進言する涼介に対して、”別に誰にも迷惑かけてないからいいっしょ?”と飄々と答え、余計なお節介はいらないとばかりにさっさと進路室を出てゆく生徒に、言葉が見つからない涼介。
自分の無力さにガッカリしながら、ふと窓の外を見ると、夕雨子が渉と校門脇で話しているのが見えてしまいます。
渉は、先日の補導の件を謝罪したあと、”ごめん…やはり俺たち終わりにした方がいいと思う”、と交際を断っていました。
ショックを受けた夕雨子は、”誰か、他に好きな人がいるの?”と聞きますが
「そんなんじゃなくて……今は、誰とも付き合う気がないっていうか…」と正直に打ち明け、夕雨子に謝るのでした。
(渉が自分の内面を正直に見つめていて、他の大人達より誠実な行動をしているので、私の中では好感度No1です。
思春期の頃って、友達とだべったり、男女交際などで勉強や面倒な事などから逃げる事はできるのに、渉は自分の将来や進路や夢について、愚直な程に真剣に悩んでいるからです。夕雨子は失恋してしまったけれど、男見る目はあるのかも。)
夕雨子がショックで走り去り、一人残された渉は、校舎の窓から眺めている涼介と目が合ってしまいます。
その後、渉と涼介は文平を誘って食事に行くため牛丼屋を尋ねますが、本当に文平が牛丼屋を辞職した事を知ります。
「お父さん本気だったんだ…」と文平の決意が本物だった事を確信する渉。
その後文平を待ちながら、渉と涼介は公園の脇で子どもたちが楽しくサッカーをしているのを見ながら話します。
「俺たち、なんで勉強しないといけないんですか?
皆と同じこと覚えて、偏差値の高い大学に入って、将来いい会社に入る以外、幸せになる事ってできないんですか?」
それに対し、教師としての自信が揺らいでいた涼介は、正直に
「ごめん…、良くわからないや」と答えます。
「悩むのは当然で、悩まない人間なんていないと思う…。
でも、きっと悩む事から逃げなければ、自分の生き方って見えてくると思う」
そして涼介自身も、30を過ぎても未だに、どうやったら幸せになれるか、見当もつかない……と、打ち明けるのです。
しかしその後、渉の戸惑う表情を見た涼介は、思い出したように
「そういえば、君のお父さんの一番幸せだった瞬間は、君が生まれて初めて、”パパ”って呼んでくれた瞬間だった、と言っていたよ」
と渉を励ますのでした。
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ホテルにプチ家出中の織江は、ストレスを発散するように、レストランで気に入ったメニューを注文しまくり、胃を壊してホテルのフロントに胃薬を頼みます。
たまたま担当だった蜜柑は、偶然織江と再会し、話し込むことに。
思い切って以前からチャレンジしたかった服を買ってしまったけれど、派手すぎて自分には似合わないんじゃないか……
と雰囲気の違う服を蜜柑に見せる織江に対し、
最初は織江と似たような印象を持っていたにも拘らず、母・春江の”色々な事にチャレンジして欲しい”の言葉を思い出し、
「いいと思います…そういう気持ちを大切にしたいのなら、全然ありだと思います」と答え、織江を励ますのでした。
嬉しくなった織江は、1人の寂しさを紛らわすため、蜜柑を誘って食事に行く事に。
蜜柑の悩みならいくらでも聞くわよ、と意気込む織江ですが、母・春江の事は、余りにも深刻過ぎ、かつ混乱していて言語化できない蜜柑。
代わりに、以前、専業主婦だと1人で生きていく勇気が無くなると言ったけど、本当に離婚するんですか?と織江に聞いてしまいます。 織江は、
「それが分からないから悩んでんじゃない…。でも、分かっているのは、今のままだと寂しくて死んじゃいそう」
と混乱した本音を、蜜柑に打ち明けるのでした。
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文平の帰りを待っていた涼介と渉は、やっと文平が帰って来て、涼介の車に乗り3人で食事に行く事にします。
涼介が車を走らせていると、道路わきの広場で、人だかりが出来ているのが目に入ります。
見ると、そこには一郎がお金(1万円札)をバラまきながら、騒いでいたのです。
急いで車を脇に止め、様子を伺う涼介たち3人。
一郎は酔って、お金をバラまきながら、色々な人に絡んでいました。
「ねえ、お金欲しいでしょ? 遠慮しないで!この金は、盗作で稼いだお金だから皆さんにプレゼントしますよ」
「…やりたくもない仕事して疲れてんでしょ?差し上げますよ、どうぞ」
などと、人々を揶揄するような暴言を吐いている一郎。
そのうちに、その無礼な暴言に怒った男たちが、一郎を殴り始めます。
一郎が、自分自身をわざといたぶらせる様な言動を見て、涼介たちは顔を見合わせるのでした…。
意を決して、一郎を助けに入る涼介と文平。
少し遅れて、渉も後を追い、人数が増えて集団暴動のようになっていきます…。
第9話後半に続く
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今回は、レイ子の山椒魚のエピソードと、涼介が渉に本音を打ち明けるシーンが印象的でした。
学校の先生だって、本当は自分の人生に絶対的な自信なんかありゃしないんだと。
生徒達より、教科の知識とちょっと人生経験があるだけで、どう生きていいのか悩んでいたりする。
涼介は、レイ子という婚約者を失った事よりも、自分のやりたい事、住みたい街をみつけて飛び出して行ったレイ子の勇気と行動力にショックを受けたのだと感じました。
ただ…苦しくても悩む事から逃げない方が良い、という強いメッセージは、迷っている人に力強い勇気を与えてくれると思います。
また、家族の世話をするだけの感謝されない”シャドーワーカー”織江の心の叫びも、共感しすぎて心にグサグサきました。
寂しくて死んじゃいそう…。私も似たような気持になった事があるからです。
私の経験上、専業主婦って孤独で、寂しい事も多いんですよね…。(個人差ありますが)
特に結婚前、仕事をバリバリやっていた人ほど、その傾向が強い気がしています。
最後に、白川由美さん演じる春江についですが、最初にこのドラマをみた時と一番印象が変わっていたのは彼女でした。
20年位前、30代で観た時の春江は、父親の顔も知ることのできない娘の気持ちも考えず、シングルマザーで子どもを産んだワガママな女性、といった印象でした。
再度、このブログの為に観直して感じた春江は、
覚悟を持って大好きな男性の子どもを産んだ、愛に生きた芯の強い女性、という印象に変わっていました。
年を取り、経験を重ね、私の物の見方が変化した事が良く分かる、ベンチマークのような登場人物です。
ただ、なかなか、こんな男前のカッコイイ女性はいないだろうな~、というのが今の私の正直な気持ちです。
人生を変えるドラマ55に続く