恋がしたい・恋がしたい・恋がしたい 第8話(前半) 一郎が盗作を告白した事で、藍と涼介の間に隙間風が吹き始める。婚姻届けは、藍の気持ちが固まってからという涼介だが、涼介もまたレイコの記入した婚姻届を捨てずに持っていた… 

 

 テレビ局で、盗作を世間に公表した一郎は、その後マスコミに囲まれ大騒ぎになってしまいます。

 

 嘘から解放されて哀しく微笑む一郎とは対照的に、一郎の社会的地位が崩壊する瞬間を見せつけられた藍は絶叫します。

 

 

 藍はテレビ局内で電波が通じる所まで戻って、区役所で待ち続けていた涼介に電話をかけ、今日の入籍は見送って今度にしようと連絡します。

 

 

 待ちくたびれた上に自己中な提案をされ理由を聞く涼介に、”家に帰ってから話す。今、話す気力ないんだ”と疲れ切った声で話す藍と、当惑する涼介。

 

 

 

 涼介が帰宅してテレビをつけると、紫村一郎の盗作発覚のニュースがガンガン流れており、藍が来れなかった理由を即時に理解します。

 

 その時、ちょうど藍もマンションに帰って来て、気まずい空気になってしまいます。

 

 涼介は、テレビを消して藍の顔を見ると、

 

 

 「婚姻届け、出しといたから」

 

 

 と軽い調子で話すと、藍は驚愕します。

 

 

 「今日は止めとこう、って約束したでしょ? なんで、勝手にそんな事するのよ?!

 こんな取り返しのつかない事して、どうするつもり‼ 」

 

 

 と激高して涼介に詰め寄りますが、涼介がポケットからまだ未提出の婚姻届を取り出すと、それが嘘だったことが判明します。

 

 

 「ごめん…」

 

 

 と涼介は藍を試すような事をした事を謝りますが、藍の不安定な本音を見せつけられた涼介は、婚姻届けは自分が預かって置くから、気持ちが固まったら出しに行こうと話します。

 

 

 藍が、でも…と自分の本音を知られた事に罪悪感を感じていると、

 

 

 「俺なら大丈夫」と力なく微笑む涼介なのでした。

 

 

      ~~~~~~~~~~~~~~

 

 夏休みの部活指導中に、涼介は織江の娘・夕雨子が、以前から片想い中の渉の事を告白もせずに諦めると聞きます。 

 

 

 渉を予備校で見かけて橋渡しをした事があった涼介は思わず 

 

 

 「もし振られたらどうしよう、とか考えるなよ。

 

 相手がこっちのこと何とも思ってなくても、こっちの事好きにさせてやりゃいい」

 

 

 と励まし、夕雨子は、友だちの援護射撃もあって告白する事に。

 

 

 ところが、織江から真実を告げられ半ば失恋状態の渉は、自分を好きと言ってくれた夕雨子がどういう子なのかを考えるエネルギーもなく

 

 

 「いいよ…俺で良ければ……」 

 

 

 と、半ば惰性で返事し、付き合う事になってしまいます。

 (渉、失恋のショックでヤケになっている?)

 

      ~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 勤務後、涼介は文平の牛丼屋で夕飯を食べながら、出しそびれた婚姻届けを見つめていました。

 

 文平は、涼介の沈んだ様子が気になって観察していたら、涼介が婚姻届けを2枚持っている事に気付きます。

 

 不思議に思った文平が声をかけると、数か月前に破談になった黒木レイ子との婚姻届けを、涼介は捨てられずに持っていたのでした。

 

 

 涼介は自虐気味に、藍からも入籍を躊躇われている事を文平に打ち明け、

 

 「自分なんかがラブストーリの主人公になる事なんて、きっとないんだろうな…」

 

 

 と寂しそうに呟きます。

 

 

 蜜柑の気持ちを痛いほど知っている文平は、それを聞いて思わず

 

 「…そんなこと、ないですよ…先生に告白したくてもできない子もいるかもしれないし…」

 

 と言ってしまいます。

 

 

 その時、一郎がふらりと牛丼屋に入ってきて、涼介と文平は驚きます。

 

 

 自分に気が付かない一郎に涼介は

 

 

 「あの、…これからどうするんですか?」

 

 

 と、声を掛けます。エリート意識が無くなり、すっかり角が取れた一郎は

 

 

 「別に…これまで通り1人で生きていきますよ。」

 

 

 と言い、自分の過去を語り始めます。

 

 

 「うちの親、1人息子だった僕の教育に、命かけてましてね。

 

 中学に入った頃かな、自分が親の評判の為だけに生きてる、って事に気づいて。

 

 初めて学校サボって牛丼屋に入り、大好きな小説読みながら牛丼を食べたんですよ。

 

 それからは、完全な不登校です。

 

 母親は毎日泣き叫ぶし、父親は会社の倒産の憂さ晴らしに僕を殴るし。

 

 唯一、僕を支えていたのは、小説家になる事だった……」

 

 

 といって、小説家になって親に復讐する夢だけが、自分を支えてくれたと話します。

 

 

 一郎の過去を知り、盗作をしてでも小説家になりたかった気持ちが理解できた涼介は、思わず

 

 

 「今からでも遅くないんじゃないかな!?

 

 夢持ち続ければいいじゃないですか!

 

 あなたがテレビで言っていたこと、もっともだな、って感心する事いっぱいあったし。

 

 それにこの間あなた、自分は弱い人間だって言っていたけど、

 

 自分のこと弱いって言える人間は、本当は強い人間だと思うし……

 

 絶対ありますって。 あなたにしか書けないものが……」

 

 と、金八先生バリの言葉をかけるのでした。

 

 

 それを聞いた一郎は、穏やかな表情で

 

 「なんだか、久しぶりに説教されたって感じだな、お節介な先生に。

 

 でも藍も、あなたのそういうところを好きになったんじゃないかな。」

 

 と言いながら席を立ち歩き出します。

 

 そして、途中で思い出したように出口で振り返ると

 

 

 「そういえば、結婚おめでとうございます。

 

 幸せにしてやってください、彼女のこと」

 

 といって、店を出るのでした。

 

 

      ~~~~~~~~~~~~~~

 

 一方、黄田家では、織江が風邪気味で寝込んでいました。

 

 

 対照的に、渉と付き合う事になって舞い上がっている夕雨子は、甲斐甲斐しく父・雪夫の世話をしたりして張り切っています。

 

 

  雪夫は、織江が寝込んでいるのを心配する事もなく、

 

 どうせヒマな主婦が クーラーの当たりすぎで風邪でもひいたんだろうと、

 

 横になっている織江の側で文句をいいます。

 

 

 渉に嘘をつき傷つけた事で、落ち込んでいた織江は 雪夫に構って欲しくて

 

 

 「今度、一緒に食事にでも行かない?」

 

 と甘えてみるのですが、

 

 

 「くだらない事言うな。 俺はお前と違って仕事で忙しいんだ、そんなことしてるヒマなんてあるか」

 

 

 と、相手にしません。

 

 

 雪夫が階下に降りて行った後、ベッドに置きっぱなしになっていた携帯が鳴ったので思わず携帯をみてしまう織江ですが、

 

 浮気相手からの着信が沢山入っていること、ハートマーク付きのメールも発見してしまいます。

 

 

 織江はショックと怒りで、思わず携帯電話をベッドに投げつけるのでした。

 

 

 

 翌日、会社の就業時間の終わり頃を狙って、織江は雪夫を尾行する事にします。

 

 

 案の定、雪夫は残業する事なく、新宿のホテルに向かいます。

 (途中、雪夫がウキウキしながら薬指から結婚指輪を外すのを見てしまいます)

 

 

 ホテルのロビーで待ち合わせた二人は、何を食べるか盛り上がりますが、

 

 

 まず部屋で休憩しよう、と雪夫が女に話すのを聞き、部屋に向かう二人を見て愕然とする織江なのでした…

 

 

 

 第8話前半終わり

     

 ******************************************************

 

  ”盗作”という大きな秘密を告白した事で重荷を下ろした一郎の、安堵した表情が、本当に良かった、と感じた8話です。

 

 

 第1話と同じ牛丼屋・同じメンツで話しているのに、一郎の印象が全く違うのは驚きです。

 

 

 そして、素直に自分の「親からの教育虐待」の過去を話したシーンは、 

 

 

 かつて自分も子どもに似たようなことをしていた事があったので、耳の痛い話でした。

 

 

 それと共に、一郎もまた、藍と同様に、親からの愛情が欠落している事が垣間見えました。

 

 

 藍と一郎、この二人は、お互いに似たような傷を持つという事で、本能的に惹かれ合ったのだと確信しました

 

 

 しかし一郎は同時に、母親に対する憎悪の感情を他の女性へ投影して、次から次へと弄ぶことで、

 

 間接的に復讐をしていた所もあったのだと、私は感じたのでした。

 

 

 それゆえ一郎は、藍の言葉を信じられず、藍の愛情を試す事ばかりして、藍を傷つけてしまった。

 

 

 一郎が親への葛藤を乗り越える事が、誰かと幸せになるために必要で、

 

 それはこれから一郎が乗り越えていかないといけない試練なのかな、と思いました。

      

 

 あと、黄田家の爆弾、雪夫は、ドラマの世界にも関らず、本当に憎しみが湧いてきます。

 (リアル元サレ妻としては、心の底からひどい目にあって欲しい、と思ってしまう…)

 

 

 怒りと寂しさで苦しそうな織江が、見ていて辛いです…。

 

 人生を変えるドラマ53に続く