リーガル・ハイ③ 古美門は変人だが、綺麗ごとや常識に騙されない信念を持つ男

 

 ネタバレ満載なので、未視聴の方はご注意下さい。

 

 

 

 古美門には、いわゆる”他人に良い人と思われたい”という隠れた偽善の精神がないです。

 

 だからこそ、自分の本心を誤魔化したり、思考停止した妥協を許すこともありません

 

 特に第9話、旧 絹美村(現 南アルプス市)の仙波化学による公害訴訟の回で、老人たちが訴訟を断念しかけた時に発した古美門の5分に渡る演説は、日本ドラマ史に残るものだと思います。

 

 東日本震災で傷つき苦しんでいる人々への応援の意味でも、古沢氏はここまで書いたのだと思わずにはいられません。

 

 

 

 当初、裁判を何かのイベント感覚で捉えていた村人たちは、次第に息子や娘、親戚達の裁判沙汰になる事への反対や仙波化学からの圧力・説得や懐柔などで、人間関係を壊す事に葛藤し始め、次第に和解する方向へ進もうとしていきます。

 

 5000万円で和解という選択肢もあるという、皆で割れば1人100万位にはなる。

 私達にはそれ位が分相応だと、他の老人達にそれで納得しましょうと呼びかける村人の婦人が現れます。

 

 

 黛は、公害訴訟なんです、もっと請求できるし貰える話なんです、と訴訟を取り下げない様に説得しようとします

 

 するとその老夫人は、

 この世には金よりも大事なものがありますー 絆 キズナという大切な物が…と答え、他の老人達もそうだね、

と全てが丸く収まるかの様な空気が出来あがろうとするのです。

 

 

 

 その時、古美門は、
見たまえ彼らの満足そうなこの表情を。ズワイガニ食べ放題ツアーの帰りのバスの中そのものじゃないか。」と、

 

 闘う覚悟のない彼らを冷笑し、愚弄し

 皮肉を言って老人達を怒らせ、

 次第に古美門自身も怒りを露わにしていきます。

 

 そして次に続く、老人達の闘う覚悟の無さを嘆く言葉を吐き、叱咤激励するのです。

 

 

 

 

誰にも責任を取らせず、見たくないものを見ず、みんな仲良しで暮らしていければ楽でしょう。

 しかしもし、誇りある生き方を取り戻したいのなら、見たくない現実を見なければならない。

 深い傷を負う覚悟で前に進まなければならない。

 戦うということはそういうことだ!愚痴なら墓場で言えばいい!」

 

 さらに、キズナ、という当時世間で流行っていた綺麗な絵空事の表現に対しても、

 

 

 金が全てではない?金なんですよ。

 あなた方が相手に一矢報い、意気地を見せ付ける方法は。

 奪われたものと、踏みにじられた尊厳にふさわしい対価を勝ち取ることだけなんだ!それ以外にないんだ‼️

 

 と、綺麗事の偽善をバッサリ切り倒し、裁判の限界を突きつけます。

 そして、

 

 「〇〇さん、あなたは元郵便局長だ。

 幾度となく閉鎖されそうになった村の郵便局を最後まで守り抜いた。

 

 ❎❎さんは小学校の校長先生。

 村にいた子供たちは皆あなたの教え子だ。

 奥さんの▲さんは町のデパートの化粧品売り場で月間売り上げの記録の保持者。

 

 ◆◇さんは実に100ヘクタールもの田畑を開墾した。

 

 ★★さんとご主人は田んぼをやりながら日雇いの仕事をいくつもいくつも掛け持った。

 

 ✳️さんは商店街の会長。毎年祭りを盛り上げて、あのクリスタルキングを呼んだこともある。

 

 ▽さんは女だてらにクレーン車を動かし、六人の子供を育て上げた。

 

 

 敗戦のどん底から、この国の最繁栄期を築き上げたあなた方なら、その魂をきっとどこかに残してる‼️‼️

 

 

 と、戦後の経済復興を成し遂げた市井の先人達を称え、諦めずに闘おうと訴えたのです。

 

 

 

 

 

 

 大切なものを守るために、助けを専門家に乞うだけでは無く、自ら考えの軸を持ち強くあろうとしなければ駄目なんだ。

 

 

 私がメンタルを保ちながら離婚調停をしっかり闘い、欲しい権利を臆さず主張できるほど意識改革できたのはこのドラマがきっかけと断言できます。

 

 

 

 当時友人(と私は思っていた)の中には、親が裁判所でいがみ合ってるなんて知ったら子供が可哀想とか、かつて愛し合った2人が争うなんて子ども達がどう思うか…などと、調停で権利を主張する事に反対してくる人達がいました。

 

 その人達の綺麗事のアドバイスを退け、人生の責任を取るのは自分自身しかいない、母親が自分の意思で人生を決断せず、諦めながら思考停止で生きているのに、子供が幸せでいられる筈がない、と改めて気持ちを強く持つ事が出来たのです。

 

 

 そういう意味で、私はこのドラマに勇気を貰い、人生を変えられたと感謝しているのです。

 

 

 

 このドラマは、他にも描ききれないほど面白いストーリーが沢山あります。

 

 昭和の名作「犬神家の一族」のパロディかと確信する回や、小学生の子どもが母親を親権停止で訴える話もあります。

 

 ドラマ見放題のチャンネルで、何を観るか悩んでいる時は、ぜひ「リーガル・ハイ」を選ぶ事をお勧めします❗️

 

 

 

 次回から、「リーガル・ハイ」の続編である「リーガルハイ」第2シリーズを紹介していきます。

 

 

 人生を変えたドラマ⑥ に続く