エピローグ

 
 子どもの戸籍の移動手続きをしている合間に、N弁護士の所で報酬の支払いと、最後の挨拶に伺いました。
 
 初対面からおよそ11年が経ち、N弁護士も事務員さんも、私も、着実に歳を取っていました(笑)
 
 
 あの頃を振り返ると、N弁護士の事務所は私が初めて相談に行った数ヶ月前に開業していました。
 
 N弁護士も離婚後親族を頼って、新しい土地で事務所を開業したばかりだったのです。
 
 
 「N先生、長い間本当にお世話になりました。」
 
 「お疲れ様でした。本当に良く頑張りましたね。 最後を除いて、ほぼ完璧な形での終わり方が出来たと思います。これが〇〇さんの受け取り額です。」
 
 
 と、言って不貞男から一旦N弁護士に支払われた、財産分与や慰謝料の一覧を見せてくれました。
 
 「この中から、法テラスが決定した私への報酬を引いた額を〇〇さんの指定口座に振り込みますね。法テラスからはもう通知は来ましたか?」
 
 「はい、2日前に届きました。先生と今回契約した直後から法テラスに分割払いをしていたので、一度に払わずに済んだので助かりました。」
 
 と言うと、これまでの長い時間を思い返していました。N弁護士もそれは同じだった様でした。
 
 
 不貞行為を証明できた事で第一次離婚調停を不成立にでき、10年以上婚姻費用を受け取る事で、その額は優に千万単位になっていました。
 
 また年金分割期間もその分伸ばすことができ、将来受け取る年金額も2倍近くに増やすことができました。
 
 慰謝料も、N弁護士の機転のお陰で200万アップの300万受け取ることができました。
 
 
 お金がすべてではないですが、それらのお金で安心感と心の余裕を保つことができたのです。
 R探偵事務所のSさん、NクリニックのT先生、そしてN弁護士の誰が欠けても、この結果を元気な状態で迎えられませんでした…。
 
 
 「N先生、通算するとかなり長い間お世話になってますけど、もしかして私が一番長くお世話になっているんじゃないですか?」
 
 と、好奇心に抗えず尋ねてみました。
 N弁護士は、書類の日付を見ながら
 
 「そうですね…。うちの開所からまもなくからですから、最長になりますね。」
 
 と答え
 
 「いつ頃が、1番キツかったですか?」
と聴いてきました。
 
 
 「1番最初の頃ですね…まだメンタルが不安定でしたし。安定剤無しでは眠れなかったです。 あと先生からの電話の度に無茶苦茶緊張しました。」
 
と正直に言うと
 
 「ホントに弁護士って因果な商売で、電話すると依頼人に嫌がられるんですよ」
と、N弁護士は笑ってくれました。
 
 「暫くは落ち込むかもしれませんが、半年くらい経ったらゆっくり回復してきます……頑張って下さい。」
 
 
と、経験からくるアドバイスをしてくれました。
 
 
 書類を受け取り席を立ち、私は思わず
 
 「本当にお世話になりました。できれば…違う形でお会いしたかったです」
 
と、最後だから言える本音を口にしました。
 
 依頼人と弁護士という関係でなく、もっと違う形で出会えてたら、良い友人になれたかもしれない…10年以上のやり取りの中で、私はそう感じていました。
 
 N弁護士も、頷いて
「本当に…。そうですね。」
と答えてくれました。
 
 
 事務所玄関で最後に、N弁護士と事務員さんに深々と礼をして、
 
「長い間有難うございました。どうか皆さんお元気で…。では、失礼します。」
 
 と、元気に挨拶して事務所のドアを閉めました。
 
 
 夏の太陽が輝き、鬱陶しいくらいの湿気が漂う中、私は職場に出勤すべく駐車場まで歩き出したのでした。
 
 
 
サレ妻復活日記  完
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新しいブログ「私の大好きなドラマたち〜人生を変えたドラマ」を始める予定です。
 
ジャンルは、国内海外ドラマです。
 
 
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