anone(2018年1月期NTV水22)最終話までの感想です。

 

総合評価:A+

 

とても良かった。このドラマに評価をつけるなんて、とても失礼なことに感じるぐらい、素晴らしいドラマでした。素敵な作品をありがとうございました。

人を思う気持ち、日常の幸せがとても伝わってきた。

 

刑務所に行くことになり、普通だったらここでバッドエンドだけど、服役後、みんなで暮らす。その日常の幸せがよかった。最後、ハリカ(広瀬すず)が一人暮らしするところは特にいらなかったのではないかと思うけど、持本(阿部サダヲ)のセミパジャマがここにつながってきたり、と、良かった。

 

刑務所であのね(田中裕子)は娘に「お母さん」と呼んでもらえ、鑑別所でハリカは彦星君に初めて会える。本当に涙涙でした。

持本さんも、ほんとね、治ればよかったんだけど、そこは超常現象で復活、と。

 

ハリカと中世古(瑛太)の対話シーンが、本当は肝だと思う。

中世古のような人を「サイコパス」の一言で片づけるのは簡単だ。でもそうしないドラマ。

私も、最近ようやく、中世古のような気持ちのダークサイドがわかるようになってきた。あんまり悔しい目にあっていると、こんなにひどく悔しい目にあっているというのに、周りの人は誰も助けてくれないのに、のんきに幸せにくらしやがって、みたいな気持ちが、他人を憎み、関係ない社会を憎む気持ちにつながっていくように思う。

 

人生、本当に恵まれない人間と普通の人間と恵まれている人間がいて、それはお金とか立場とか能力では判断できないけど、本当に幸せな環境の人って結構多い。それに引き換え、本当に不幸な環境って、恐ろしく不幸だ。でも誰も助けてくれやしない。自分の力でのしあがるしかない。自分の力でもってのしあがれても、地位を築けても、それでも空虚な気持ち、恨みつらみ、憎しみが消えなかったりもする。悔しいことばかりだ。

 

でも、それを他人や社会にぶつけても何の意味もないし、さらにハリカが言うように、息が吸いづらい人が同じ息が吸いづらい人を傷つけるなんて、まったくの無意味だ。

 

陽人くんに中世古が本当のことを言わなかったのが、せめてもの救いだった。それか、もしかしたら中世古が言ったことが本当だったのかもしれない。記憶はわからない。

 

みんなでみんなで幸せになれますように。流星群を見て、この人たちがもっともっと幸せになれますようにと思わず祈ってしまうような、そんなドラマだった。素敵なドラマでした。

 

あと、これは「それでも、生きてゆく」をまろやかにして、「カルテット」風味を足しこんだようなドラマだったけど、「カルテット」よりも良かったように思う。カルテットの小ネタ感がこのドラマでも満載だったけど、anoneの方がドラマの中にしっくりはまり、かつストーリーの主軸がはっきりしていたと思う。

 

偽札といえば「金の亡者」とTVのワイドショーで出ていたが、そうではない。金銭欲ではない、何かを成し遂げたい、自分の作った偽札が人をだまし機械をだました、成功したいという商人欲求のようなもの。この気持ちもまた寂しい。

 

本当はS評価でもよいすばらしい完成度の高いドラマだったけれども、「それでも、生きてゆく」「Mother」の方が私は好きだ。「anone」は田中裕子に代表されるように、穏やかなやさしさ・強さ・幸せを描いていて、「それ生き」「Mother」はもっと胸が張り裂けそうな緊迫感が、胸に迫ってくる力強さがあった。これは好みの問題だけど、そういう意味でA+かな、と。

 

最後に視聴率。視聴率は相変わらず悪い。悪い視聴率でも良いドラマが作られ続けるように、視聴者ができることがあれば教えてほしい。

*9.2__*7.2__*6.6__*6.4__*5.9__*5.5__*4.9__*5.4__*4.4__*5.6(終)._________*6.11