anone(2018年1月期NTV水22)初回から5話までの感想です。

 

W坂元裕二だからということで、見た作品。ちょっと異色。Mother路線・それでも、生きてゆく風を感じさせつつも、カルテットの新境地的なものも加味し、かつ偽札・誘拐というアングラテーストが入っている。

ひょんなことで知り合った人たちの心の交流みたいなところが、若干カルテット風。あとはそれぞれの登場人物の生き方が交錯したり、別にストーリーが進んで行ったりというあたり。

でも全体的には、一生懸命真面目に誠実に生きているのに、だからこそ傷ついてしまう、社会でうまくいかない、利用されてしまうことが多い、そんな誠実な人たちの繊細な心の動き、心の交流を描いているように見える。そのあたりが、それでも、生きてゆく風だけど、あそこまでドカンとストレートに書かずに、もう少しさらりと描いている気がする。

 

特に5話のシーンが、このシーンだけで、もう1クールのドラマの価値があるのではないかなと思った。

ひこぼし君が病室にいないのに気付いたハリカが、ひこぼし君を探して病院の中に行ったところ、肺炎になって集中治療室にいること、お父さんが来ていたけどレストランの予約があるからといって帰ってしまったことを聞く。自分のあの人たちと同じで、ひこぼし君が熱を出していたのにご飯を食べていたし笑っていた。自分が病室が見えるところで見守っていたところで、結局何の意味もないし、病院の人じゃないから治療もできないし、お金持ちじゃないからいい病院にも連れて行ってあげられない、というハリカに対し、「ここにいなさい」といってあげるあのねさん。そしてあのねさんは少し離れたところで朝まで見守っているという。

 

この心の動きと交流がすばらしかった。

本当につらい。繊細に生きているとそれだけで傷つくというか、他人の言動に傷つくことがあって、でもそれって自分も同じではと思ってさらに傷つくし自分が嫌になるけど、でも傷つく必要はないし、相手を思う気持ちは素敵なことなんだと思う。

一生懸命生きていてもうまくいかないことばかり。自分の生き方で自分を生きて多くの間違いを繰り返してきた。頑張っても頑張ってもうまくいかない。でも気づかないところで誰かは見てないかもしれないけど、でも、繊細に生きていくことは素敵なことなんだ。そのせいで利用されたり傷つけられたり他人や自分に傷ついたりしてうまく上手に生きられないかもしれないけれども、いいんだ。それでもその生き方で生きていこう、と思うお話し。そしてそれをそっと見守るあのねさんもまたしかり。

 

持本さん(阿部サダヲ)にしてもあのねさん(田中裕子)にしても、ハリカちゃんにしてもひこぼしくんにしても、みんな同じように感じる。青羽さん(小林聡美)だけは、どうにもエピソードがぴんと来なかった。ふつうに母親であれば、子供からあんなに無関心にされるってありうるのかな。夫との関係はどうしたんだ?子供って駄目な母親でも愛してくれるのでは?普通の母親なら愛してくれるのでは?腑に落ちないが。

 

坂本裕二のこういった作品、大好きです。「それでも、生きてゆく」「Mother」またみたい。「太陽と海の教室」も私は好きだった。数字は悪かったようですが、こういう作品をテレビドラマでも見たい。舞台でもいいと思うけど。