久しぶりに舞台を見た。東宝版エリザベート。とてもすばらしかった!!

しかも、東宝ミューは、クリエ以外初。菊田一夫演劇賞大賞を受賞したというニュースを遅まきにしって、びっくりして、急いでチケットを取ったら、花ちゃんの回じゃなくて蘭乃はなの回になってしまって、で、花ちゃん回を買い足しました。ということで、両方見れた。トートも両方見れた。

7/1 蘭乃はな、城田優、田代万里生、古川雄大、香寿たつき、山崎育三郎
7/20 花總まり、井上芳雄、田代万里生、古川雄大、香寿たつき、成河

まず、音楽がすばらしすぎる。今までエリザベートを見たことも聞いたこともなかったので、音楽の美しさに感動。そして、クオリティーが高い。東宝ミューって初だったのでよくわからなけれども、東宝ミューはいつもこんなにクオリティーが高いのか? 観る前に、蘭乃はなの歌が下手とか音がはずれているという感想を見てから、舞台を観てみたが、別に、私がこれまでみてきたミュージカルだと、もっと下手な人は吐いて捨てるほどいる。普通に、上手じゃないですか?っていう感じ。
東宝ミューってレベルが高いんだろうね。山本耕史とかがやっているミューって、ほんとド下手ばかりでてきて、とてもお金取れないレベルのミューが多いと思う。しかもやっぱり帝劇とちがって、箱が小さいから、お金がかけられないみたいで、出演者も少ないし、オケもそんなに迫力ないし、舞台セットも地味だし、ということで、小さいミュージカルに10000円以上のチケット代払って観に行くより、帝劇か日生で東宝ミューを見た方が、舞台は豪華だし、キャストも多いのでみんなで歌う歌とかダンスの迫力が半端ないし、出演者も演技が下手な人はいても歌が下手な人はいないクオリティーだし、こっちの方が格段にコストパフォーマンスがいいと思う。

ACTとか世田谷パブリックシアターとか昔の青山劇場とかもそこそこの箱だけど、そういうところでやっているミューとのレベルの差が歴然で、愕然とした。ただ、シアターオーブでやったロックオペラ モーツァルトは、あれはお金がかかっている感じだった。

ということで、あまりの豪華さ、迫力、音楽のすてきさに、「これはいい!今度からは東宝ミューを観に来ることにしよう!」と心に決めた。ただ、東宝以外の舞台だと、舞台は地味だし、クオリティーが低すぎるものも多いけど、魂が揺さぶられる舞台に出会えることがあるので、それはやはり素敵だな、東宝は大作品が多いので魂を揺さぶる者はないのだろうな、と思った。が、どうしても、菊田一夫大賞を取ったほどの花ちゃんのエリザベートを観てみたく。

前に、「ピアフ」の大竹しのぶが劇評で絶賛されていたので、そこまで絶賛されるものならば素晴らしいんだろうと思って、再演をクリエにみにいったら、やはりすばらしかったので、菊田一夫演劇賞大賞をとるというほどの舞台をどうしてもみてみたかった。が、チケ取りに恐ろしく苦労。ものすごいお金を払ってみることに。

花ちゃんのエリザベートを観た結果、心が震えた。「私だけに」を聞いて、泣きそうになった。鏡の間の演技を見て、あそこも泣きそうになった。心に直接訴えかけてくる、あまりにすばらしい歌、表現力に、涙が出そうになった。ちょっと、レベルが違いすぎる。蘭乃エリザとレベルが違いすぎる。「ガラスの仮面」でいうと、姫川あゆみさんと、マヤを陥れた変な牛乳好きの子ぐらいのレベルの違いで、「吸血鬼かーみら」的な感じで、これはWキャストがかわいそうだ。魂が震える歌というのは、私は今までRENT以外で聞いたことがない。RENTのOneSongGlory, OutTonight, AnotherDay, Will I?, WhatYouOwn, GoodbyeLove、このあたり以外で、歌を聞いて泣いたことがない。ストレートでは泣きそうになることはあるが、この「私だけに」はすごかった。

最初、花ちゃん回を見たら、なんか7/20は舞台進行が間延びしている感じで、序盤はあんまりよくなかった。花ちゃんも別に歌うまくないし、と思っていたら、「最後のダンス」あたりだろうか、一幕後半の井上芳雄の歌がものすごい迫力で、そこから急に舞台のリズム、テンポ、迫力が良くなっていった。その後、香寿たつきの歌もうまくて。で、「私だけに」は、あれはもう究極のOneSongだろう。すごすぎる。
蘭乃はなの「私だけに」を聞いた時も、すごい迫力でうまいなあと思って、どうして客席はそんなにわかないのかな、私にはうまいと思ったけどなと思ったけど、花ちゃんの「私だけに」を聞いてしまうと、もう、別の歌になってしまっている。同じ歌詞で同じメロディーなのに、ここまでも違う歌になるのかと。まあそりゃそうだな。RENTのOneSongGloryもAdamPascalが歌うのと、アンダーが歌うのと、日本人や韓国人の東宝キャストが歌うのとでは、違う歌だ。花ちゃんの「私だけに」、あれはもう、歌がうまいとかそういうレベルではない。歌ははっきりいって別にうまくないと思う。声の美しさ、発声の豊かさでいえば、井上芳雄の方がうまい。歌の問題ではない。歌唱力ではない、表現力が抜きんでている。卓越している。もう聞いていて泣きそうで、泣いている人いないから恥ずかしいし、なんで泣きそうなのかもわからないぐらい泣きそうな歌。すばらしすぎた。頭で感じるのではなくて、感覚的に体験するというか。

まさに命そのものの爆発、情熱的な歌だと思った。これこそが生きていることだというか、エリザベート的には、エリザベートの覚醒を表す歌で、それは蘭乃のそうがそう感じたけど、覚醒とかそんなことははるかに凌駕していて、つらいことうまくいかないこといやなこと誤解されることいろいろあるけど、これこそがまさに人生なんだ、私は私として生きるのだという、これこそが人生そのもの、命のきらめきそのものというのを、心にふるわせてくれる歌で、エネルギーというか熱量がすばらしい。

もう涙が出て、で、最後の方にようやく我に返って、客席の雰囲気を感じたら、やっぱりあれだね、客席ごとどっかに飛んで行っちゃうクラスの歌になっていた。RENTでいえば、CollinsのI'll Cover You Repriseで、客席がすべてCollinsの気持ちで満たされて、もうここは劇場ではなく、異空間みたいな感じだけど、エリザベートの私だけには、もう客席は帝劇にはいない、別の場所に飛んで行ってしまっている、ここはもうハプスブルク王朝のエリザベートの心の中、みたいな、なんというか、すさまじい熱量を持った歌だった。

これを聞き続けたい、また聞きたい、DVDにしてほしい、と。

大竹しのぶの「ピアフ」を見た時、劇評で、最後の一曲を聞くだけで劇場に来た価値があるというようなのがあって、大竹しのぶって歌がへたくそで、なんでこんな下手な歌を聞かなくちゃいけないんだと最初は見ていて思ったけど、歌が下手だけど、表現力がすさまじく、最後の歌を聞いたら、ピアフの死に際なのに、いくらでもここから歩きだせる、いつでも人生はキラキラと輝くという、本当にすばらしい歌を聞かせてくれて感動したが、花ちゃんの「私だけに」はそのレベルではないように思った。これは、ブロードウェイのスターの力量じゃないか。まあ、とりあえず私はこのレベルの歌はRENTのBWキャストでしか聞いたことがない、体験したことがない。

AdamPascalのOneSongGloryを一生聞き続けたいとおもうような、花ちゃんの「私だけに」だった。あれはもうなんというか、あの一曲だけで、エリザベートのすべてが現れている。

そして鏡の間。美しさでひれ伏させるとかそういう問題ではない。私はA席1階最後列でオペラグラスもなかったので、顔は全く見えなくて、顔の問題ではなく、姿。立っているだけで、気品と美しさと凛とした生きざまを表現している。これはもう本当にうまい役者だ。あそこを見ただけで、泣きそうになってしまった。

花ちゃんは歌唱力というよりも、表現力、演技力の役者だと思った。だから、ストレートにも出るとよいのではないかと思ったけど、ただ歌による表現力がすさまじいので、やっぱりミューがいいのかな。大竹しのぶなんて歌がへたくそでビジュアルもよくないのに表現力、演技力で絶賛されているが、花ちゃんなんて、歌声もプロレベルで、ビジュアルが奇跡的に美しくて、この表現力だからな。これはもう、日本ミュージカル界の至高ではないかと思った。

新聞記事で、花總まりが到達できるところが日本ミュージカルの最高点となるだろうみたいな記事を読んだけど、こんなすごい女優さんになったのだとは、びっくりした。

私、花ちゃんの宝塚の舞台って見たことあったか忘れてしまったが、こんなにうまかったのだろうか。宝塚のエリザベートって、轟悠がルキーニだったんだよね、笑ってしまう。あんなにカッコつけ系のイケメンがルキーニw

こんなに才能がある花ちゃんが、自分の才能を投げ捨てて、歌って踊れるマネージャーになっていたとは、信じがたい。でも、自分の才能に気づいていなかったのではないかとも思う。宝塚って男役文化だから、娘役はいくら女帝でも添え物的な。それがねえ、帝劇でレディべスの主演をしたと聞いて驚いたけど、エリザベートで菊田一夫演劇賞大賞を受賞とは。そんな才能があるのに、歌って踊れるマネージャーとは。花ちゃん的にはマネージャー業の方がよかったのだろうか。ワイルドホーンが登場せずに、マネージャーを続けていた方が、帝劇でこんな才能で歌っているよりも幸せな人生だったのだろうか。花ちゃんの人生の方が、なんかピアフとかエリザベートみたいに、舞台になるような波乱万丈な気がするが。
今、ワイルドホーンで検索したら、昨年末に来日していて、わおうようかの他に、なぜかAdamPascalもコンサートに出演していたの? だったら見たかったのに。まあいいや。

ちょっとあまりうまく感想が書けないが、そんな感じ。
以下、舞台の感想的な感想に移行します。

蘭乃はなのエリザベートを観た時は、エリザベートは人格障害だろうなと思った。まず、気が強い、わがまま。ゾフィーや皇帝の方が言っていることが正しい、みたいな。で、ゾフィーに勝って喜んでいても、結局、ゾフィーに勝ちたいだけで、子供を取り返したいわけではないから、子供を放置する。で、宮廷にもいずに、好き勝手にヨーロッパ中をお金があることをいいことにふらふらして、「自由になりたい」って、お前自由じゃないかと。で、こいつなら子供も見捨てるだろうな、と。そして死ぬ、と。人格障害で他人より上に立ちたい、他人に勝ちたい、他人を振り回したい、だけが目的で、子どもとか家庭とかが目的じゃないからこうなるんだろうなと思った。ただ、見ていると人格障害なんだけど、蘭乃はながいかにも娘役的演技で、なんかいい子ちゃん的に演じているので、人格障害の役なのに娘役的にいい子演技だから浮いている気はした。あと、全くトートと恋愛しているように見えない。トートと愛と死の物語というけれども、トートとエリザベートは独立した存在で、無関係。あくまでルキーニレベルの狂言回し的トートで、トートもエリザベートを愛していないし、エリザベートに至っては他人なんてどうでもいい、トートなんて眼中にない、不幸の象徴がトートくらいの勢いに思った。

が、花ちゃんのエリザベートを観たら、人格障害ではなかった。一生懸命生きていったけれども、宮廷に適応できず、ストイックに努力して一生懸命生きるけれどもうまくいかない。精神病院のシーンも、蘭乃回と違って納得できた。ただ、花ちゃんのエリザだと、なぜ子供を裏切るのかがわからない。あのエリザベートがなぜ子供を見捨てるのか。子供を見捨てるなんて、今すぐ、自分も自殺して詫びなければ。信じられない。蘭乃エリザだと人格障害だから、子供を裏切るのは至極当然の結論だったけど、花ちゃんのエリザだと、そこがちょっと違和感。トートとの寄り添いも自然だった。トートと皇帝との関係も自然だった。
ただ、逆に蘭乃回は、人格障害すぎて、「この世ではくつろげない」とかのセリフがぴったりきすぎて、死ぬのも自業自得というか、寿命ですか、的な感じだったけど、花ちゃんの回だと、あんなにもがき苦しんだのに、最後はなぜ死んだのだろうか、もちろん最後に歌が来るので、死が苦しみではなく解放ではあるのはわかるんだけど、二幕の暗さと、死に至るまでの過程がちょっと消化不良で、一幕の最後までが良かったようにも思った。

皇太子なんてほんとかわいそうで、踏んだり蹴ったりだけど、さらに自殺して、世に負けたてきな感じに見えつつも、トート閣下のおかげで、死が負けではない、死によって新たな平安を得る、みたいな感じだったけど、その死とエリザベートの関係が、2回見ただけではちょっと消化不良だった。

ルキーニは、二人見たが、二人ともセリフ回しが下手すぎる。あんなものなの?最初のセリフ辺りがルキーニで、あまりのいたさにつらかったが、歌うとうまいので、歌がうまいから仕方ないのかなとも思った。山崎育三郎の方が歌がうまいように感じた。成河の方が軽い。

皇帝は、一人しか見られなかったが、7/1の方が歌がうまかったと思う。ただ、安定感がある。

ゾフィーは、たーたんしか見られなかったが、たーたんは歌が安定してうまい。元々歌がうまかったから、ミュージカルでも良いんだろうなと思った。

トートは、井上芳雄の方が歌がうまいと思う。城田もものすごく歌がうまいしパワフルなんだけど、歌のうまさは井上の方が上だと思う。ただ、城田の良さは、存在感が軽い。手足が長くて、ふわふわとしていて、人間じゃなく、精霊?悪霊?というか、人間じゃない感が半端ない。ただ、愛が伝わってこなくて残念だった。パワフルな歌声と存在感がよかった。井上芳雄は安定。歌がものすごくうまいし、声もいいし、音量も出るし、演技も良いし、愛も伝わってきたし。ただ城田に比べると人間っぽい動きだった。

蘭乃はなは、演技力を学んだ方がいいと思った。

あと、席。7/1がS席補助で、1階S席最後列の後ろだった。7/20はA席で1階最後列だった。けど、はっきりいって、たいして見場は変わらなかった。S席前方だと違うとは思う。

どっかの劇場でミューを聞くと、よくハウリングしていたりもするが、帝劇はそんなこともなくて、音響もよかった。ということで、今度、ミスサイゴンも見ることにした。レミゼも見たいと思う。あと花ちゃんのレディべスも見てみたいと思った。